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点滴とビール、家族のオデッセイ

 再入院が始まり、点滴がスタートする。息子はまるで宇宙飛行士になったかのように、全身麻酔に身を任せる。しかし、宇宙飛行士には年齢制限があるだろうけど、息子はまだオムツを履いている年齢だ。まだ月齢か。しかし彼は自分の小さな月面に着陸する大任を果たす。

 "失敗する可能性もあります"と書かれた同意書にサインをしたとき、心臓が一瞬、ストップしたような気がした。大きな大きな投資をさせられているような気分だった。でも妻から「無事に処置が終わった」との報告を受けた瞬間、それはまるで「月面着陸成功!」という報道を耳にしたときのような高揚感だ。

 さらに、血液検査の結果が良好で、息子はついに薄めのミルクも併用して飲めるようになった。これで妻も「夜泣きバトル」から一息つける。やれやれ、僕たちは少しずつ月面から地球に帰ってくる途中なのかもしれない。

 そして僕は、この状況で何をすればいいのかと考える。妻と息子は病院で、僕は家で、まるで月と地球が隔てられているような感じだ。でも、それぞれの場所で何が必要かを考え、粛々とその任務を果たす。僕がこの地球でできる最善のサポートは、仕事を続け、夜に帰宅してビールを一杯飲むことだ壁の向こうから来る報告に、僕は微笑む。それはまるで、遠くから見守る地球の灯台のようなもの。息子が元気で、妻が支えている。これ以上何を望むというのだろう?

 というわけで、僕たちはまだまだ未熟な宇宙飛行士とその地上のサポートクルーだが、この"月面ミッション"も何とか成功させるつもりだ。それぞれの位置から、僕たちは無事を祈り、成功を祈る。

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