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時代によって変化する小林少年のイメージ/江戸川乱歩『怪人二十面相』表紙を見る
江戸川乱歩によるジュブナイル小説である少年探偵団シリーズは、幅広い世代に親しまれています。
少年探偵団がはじめて登場したのは1936年。
小林少年は中学生の少年で、作中で描かれるのは少年たちの冒険譚であり、奇術のトリックをふんだんに用いて悪事をはたらく怪人二十面相と、名探偵明智小五郎の対決です。
色褪せない魅力を持っている少年探偵団シリーズですが、表紙のイラストを並べてみると、児童書挿絵の絵柄の変化や、マーケティング方法の転換がよく分かります。
ポプラ社版
作品が当初発表されたのはポプラ社版なので、1番オリジナルのイメージに近いでしょう。
作中で仏像に変装する小林少年の姿を描いた表紙ですが、力強い劇画タッチ。
岩波文庫もこれに近いイメージです。
岩波文庫版
頼もしい小林少年の姿ですが、現代の感覚では“古い”絵柄であるため、子供は手に取りにくいだろうと言わざるを得ません。
これと対照的なのが、講談社青い鳥文庫(新装版)です。
青い鳥文庫(新装版)
作品の本来のターゲットと想定されているのは小学生でしょう。
現代の小学生にとって魅力的なアニメ風のイラストで、明智探偵も線の細い美青年に描かれています。
ファッションはイギリス風(ホームズ風)のデザインです。
昭和のジュブナイル小説は、現代で言えばコミックやライトノベルに相当するライトな読み物であったとも考えられるので、今風にアレンジするならこういう形になるのでしょう。
新潮文庫nex版
新潮文庫nex版はティーン層も、作品を再読する大人も手に取りやすくなるような表紙デザインです。レトロな東京で暗躍する怪人を描いた一枚絵ですが、スチームパンクのような装飾や幻想的な背景も加えて、作品の世界観がうまく表現されているように思います。
幅広い年代層にアプローチするには、時代によってイメージや描き方が大きく異なる人物画をメインにせずに、イメージを端的に切り取ったようなイラストが有効なのかもしれません。
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