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【本の紹介】『無頼のススメ(伊集院静著)』‐伊集院さんってタイトルがうますぎる…

伊集院 静 氏が逝去されてもう半年になります。

実は私、伊集院氏の著作を読んだことがありませんでした。

1980年代、マスコミで報道される伊集院氏のあれこれがひどく生々しく、人生経験浅いお嬢だった私は報道に疑問を抱くこともなく、
「こんな節操のない男の書いたものなど読むに値しない」と思ってしまっていたのでした。

その頃伊集院氏には婚姻関係にあるパートナーがいらっしゃいましたが、夏目雅子さんと恋に落ち、数年後、パートナーと離婚して雅子さんと結婚します。
けれどもその翌年、雅子さんは白血病で逝去されます(享年28歳)。
雅子さんは美しかった。
一番印象に残っているのは『西遊記』の三蔵法師役。
主題歌『ガンダーラ』は、今も歌えます(サビだけ)。

しかし私ももう還暦。
さすがに人生のいろいろを「そんなこともあるよね」と思えるぐらいにはなれました。マスコミ報道に踊らされるバカらしさもわかりましたしね。

思い出したように読んだ伊集院静氏のエッセイ集『無頼のススメ』。
いや、たいへん面白く、そして勉強になりました。

「無頼」とは読んで字のごとく「頼るものなし」
ここには伊集院氏の無頼なものの見方から紡ぎだされたエッセイが詰まっています。

これは凄いと思ったのは、内容ばかりではありません。
それぞれの章のタイトル

読者に「読んでみたい」と思わせます。

たとえば、「愛する人の死が教えてくれた」という章が本の中盤にあります。
私は「雅子さんとのことが書いてあるの?読みたい~」と思い、始めをすっ飛ばして読みました。

夏目雅子さんのエピソードがいくつか書いてあります。
私も読んでびっくりしたエピソードを一つご紹介しますと…。

ある日、ふたりで蕎麦屋でお酒を飲んで酔っ払ってしまった時、店の女将が「あんた、車運転するんじゃないでしょうね。絶対にダメだからね。」と言った。
すると雅子が「今日は私が運転します」と言った。
店を出て「免許、あるのか?」と聞くと、「ない」と言う。
それなのに、一度も運転したことのない私の車を運転して走り始めた。

伊集院氏は「この人は頼れるな」と思ったそうです。

私はこの章で「伊集院さんの文章、面白いわ~!」と一気にフアンになってしまい、他の章に目を移しました。

「正義など通らないのが世の中だ」
「理不尽こそが人を育てる」
「人間は何をするかわからない生き物だ」

「どれから読もうか」と迷うほどどれもこれも面白そう。

短い言葉で人を惹きつけるのが本当にお上手です。
そりゃあ作詞家としても大活躍されましたもんね。
近藤真彦、中森明菜、西城秀樹、薬師丸ひろ子にピンクレディに…数え上げればキリがありません。

亡くなった年(2023年)の暮れのレコード大賞では特別功労賞を受けられました。昭和歌謡の立役者ですからね。

あー、もっと早く出会っていればよかった。


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