実は、消防が火災原因を断定することはほとんどない?
私は、現役の消防士です。
そして、火災調査を担当する部署の経験があります。
今回は、消防が火災原因を特定する流れを説明します。
まず、火災があった場合、完全に鎮火してから調査が始まります。
大きい火災であれば、大体、火災のあった翌日の午前中に行います。
火災の関係者、警察、そして消防の合同で行います。
警察も消防も、基本的には同じ流れで火災調査を行います。
まず、燃えの焼け状況から、どこから出火したかを特定します。
燃えが強い箇所や、発見者の供述などから、比較的簡単に特定できます。
もちろん、例外もありますが。
そして、ここからが火災原因の特定です。
消防としては、消去法で火災原因を特定します。
たばこ、放火、電気、直接的な火(こんろや焚き火等)等を全て考察します。
例えば、出火箇所にたばこが無ければ、たばこの可能性は消します。
建物内が出火箇所だとして、施錠があれば、外部の者による放火の可能性は消します。
借金、多額な保険金等、自らが放火する明らかな理由がなければ、内部の放火の可能性は消します。
コンセント、電気製品・ケーブル、短絡痕等が無ければ、電気の可能性は消します。
他も同様の考え方です。
そして、残ったものが火災原因となるわけです。
これだけ述べると、合理的に感じますよね?
でも実際はどうなのかなと、私個人には思っています。
なぜなら、全国において、出火原因で多いのは、たばこ、放火と考えられているからです。
・・ん?
と思いませんか?
先程の説明とは逆に考えると、出火箇所とされる場所にたばこがあるだけで、たばこの可能性は残ります。
建物内だとして、施錠されてなければ外部の者による放火の可能性は残りますし、屋外であれば、なかなか放火の可能性は消せません。
一方で、電気や直接的な火(こんろや焚き火等)等は、悩むことはほとんどないです。
※短絡痕は除く。
つまり、消去法で考えるからこそ、たばこと放火は、必然的に残されがちなので、出火原因とされる可能性が高いわけです。
こんな風に書くと、消防は火災原因の究明は曖昧と思われそうですが。
でも、ここにはっきり書きます。
消防において、火災原因を断定する火災はほぼありません。
断定とは、火災原因調査規程に「・・全く疑う余地なくその原因が具体的かつ科学的に確定され、何等の推理を必要としない場合をいう。」と示されています。
調査結果は、断定〉判定〉推定〉不明、の順に報告することになっています。
実情、ほとんどは判定か推定が使われていると思います。
つまり、出火原因として可能性が考えられるのは、おそらく○○だろう、と。
言い訳にはなりますが、それだけ火災の出火原因を断定することは難しいということでした。