痛効散と痛散湯
お客様からのお問い合わせ商品で、
「痛散湯」を取り寄せてほしいとのオーダーがありました。
痛散湯は、ドモホルンリンクルで有名な再春館製薬から発売されている生薬製剤です。
再春館製薬からの発売なので、もちろん一般の店舗はお取り寄せは不可です。
痛散湯をグーグルで検索すると、
痛効散、
疎経活血湯、
ロイルック錠
心龍
などが上がってきます。
痛散湯は、神経痛や関節痛にお困りのお客様の生薬製剤になります。
痛散湯
処方構成は、
●麻黄
●杏仁
●甘草
●薏苡仁
●防風
になります。
痛効散
処方構成は、
●麻黄
●杏仁
●甘草
●薏苡仁
になります。
ちなみにこちらの方剤名は「麻杏薏甘湯」です。
薏苡仁が石膏にかわると「麻杏甘石湯」です。
麻杏薏甘湯が神経痛や関節痛などの方剤に対して、
麻杏甘石湯は痰のからむゼロゼロした咳の方剤になります。
麻杏薏甘湯と麻杏甘石湯
入っている生薬量の違いによって、作用する場所が異なってくるのは漢方薬の面白いところで、配合生薬だけみると、なんで?と思えるけれど、
ここに配合量の違いをみると、少しずつ方剤が見えてきます。
$$
\begin{array}{|l|l|l|} \hline
\text{} & \text{麻杏薏甘湯} & \text{麻杏甘石湯} \\ \hline
\text{麻黄} & \text{4.0g} & \text{2.0g} \\ \hline
\text{杏仁} & \text{3.0g} & \text{2.0g} \\ \hline
\text{薏苡仁} & \text{10.0g} & \text{} \\ \hline
\text{石膏} & \text{} & \text{5.0g} \\ \hline
\text{甘草} & \text{2.0g} & \text{1.0g} \\ \hline
\end{array}
$$
ここで考えるべきは生薬個々の働きではなく、生薬2つの組み合わせによる薬効「薬対」の考え方になる。
麻杏甘石湯
麻杏甘石湯は、麻黄と杏仁が1:1で、
麻黄と杏仁→鎮咳平喘作用
麻杏薏甘湯
麻杏薏甘湯は、
麻黄と杏仁が3.0g:3.0g / 1.0g:1.0g
麻黄と薏苡仁が1.0g:1.0g / 3.0g:3.0g
組み合わせが可能。
麻黄と薏苡仁→鎮痛作用と利尿作用
麻黄は、体表から水分を出すか尿として水分を出すか、ペアの生薬によって方向を変えることができる。
麻黄(1.0g)と杏仁(1.0g)→鎮咳平喘作用は弱いが肺気を促進して水分代謝を活発にし、利尿のお手伝いをできるようになる。
麻杏薏甘湯は、身体に溜まった余分な水分を排泄することで、
神経痛や関節痛を改善する。
つまり、痛みの種類が「水分の滞りによる不通則痛」であることに起因するものに対応するということです。
チリチリピリピリするような痛みではなく、重くどーんとして締め付けられるような痛みです。薏苡仁は、清熱しながら水腫をとる働きもあるので、炎症がおきている痛みにも使える使えますが、あくまで「水・湿気」が絡んでいるものによっておこる炎症、動きが悪いがゆえに出てきた炎症に対すると捉えておくとよいかと思います。
防風が入るか入らないか
痛散湯と痛効散(麻杏薏甘湯)の違い
「防風」が入っているか、いないかの違いです。
では、この防風がはいることによって、何が強化されるのか?
●鎮痛効果
です。
薏苡仁と防風はやってくることが似ていますので、
この2つが一緒に使われることで、湿を除くと鎮痛効果が強化されれます。
薏苡仁は利水薬に対して、防風は辛温解表薬なので、湿を除く場所が表からになります。
内部は薏苡仁、表面は防風、内部は薏苡仁といったように
内側と表面から湿を取り除くようになっています。
どう選ぶか?
手に入りやすい「痛効散」で試してみて、それで効いてくればそのまま「痛効散」でよいし、効きがイマイチであれば、価格も5倍とやや手に入りづらい「痛散湯」を試してみるでよいかと。
痛効散も痛散湯も解表が入ってる、つまり、外に出すことによって痛みを取るものになります。
身体が虚弱めの場合だと、出しすぎてしまう可能性もあります。
その場合は、しっかり補いつつ余分なものを外に出すをしてくれる
関節痛や神経痛に適応のある漢方薬を検討した方がよいのではないでしょうか?