1968年にタイムスリップ - 『2001年宇宙の旅』70mm版特別上映を観た感想
2018年10月6日 。僕は7:00 AMに京橋駅へつきました。
目的の場所は「国立映画アーカイブ」、旧 東京国立近代美術館フィルムセンターです。
行列はすでに80人は超えており、ドキドキしながら列に並びました・・・
数分で完売した前売り券
映画『2001年 宇宙の旅』。
巨匠、スタンリーキューブリックが1968年に世に放った映画史に残る名作中の名作。
その映画が製作50周年記念に合わせて、公開時の映像と音の再現を追求して作成された70mmニュープリントとして上映が世界各地で行われます。日本では限定6日間の特別上映となっております。
前売り券が販売されるやいなや、ものの数分で完売し、早くも追加上映を望む声が上がっている本企画ですが、追加上映は不可能とのこと。
上映実現までの道のりなど、詳しくは下記の記事に記載されております。
日本で70mm上映を行える場所は「国立映画アーカイブ」のみ。そして70mmで制作されている作品はほぼありません。
つまり、「70mmフィルムの映画を日本で観る貴重な機会」となります。
観たい衝動を抑え切れず
この上映を知ったのは上映日の数日前。
たしかインスタの広告で発見しました。
発見した時はすでに遅し。前売り券は完売し、途方にくれていました。
『2001年 宇宙の旅』をちゃんと鑑賞したことはなかったため、最高級の品質で観る機会を知れて本当に嬉しかったんです。
”70mmで『2001年 宇宙の旅』を映画館で観ることなんてこの先、絶対にない。一生に一度の体験をなんとしてでも実現したい”
そんな衝動を抑え切れず、わずか100枚という当日券を求めて上映日の朝、列に並びました。
濃い映画好きなおじさまたちの後ろに並びながら、ネットフリックスで「不思議の海のナディア」を観ながら3時間。ようやく整理券配布が開始。
奇跡的に第1回目上映のチケットを手に入れることができました・・・!!!
列はかなり伸びており、10:00 AM時点で300人以上はいたとおもいます。
一生に一度の体験
今回の企画は歴史的にみても大変貴重な試みとなっております。
それはなぜか?
1968年公開当時は70mmシネラマ企画(後述)でしたが、その鑑賞方法はもう存在せず。キューブリックが表現したかった色彩や構図などを体験することはもう不可能なのです・・・
・・・それを可能にしてしまったのが今回の企画です。
今回は『2001年宇宙の旅』が1968年に公開されて以降、初めて「カメラネガ」から作成した新しいプリント素材を基に、フォトケミカル工程のみで作ったニュープリントとなっております。
つまりデジタルが一切使われていない、純粋な「フィルム」です。
企画の監修者であるクリストファー・ノーラン監督によると、”フィルム上映を前提に作られた映画はデジタル化によって膨大な量の感性情報が失われる”と発言しています(この意見に対して僕は100%同意)。
ノーラン監督のフィルムに対する情熱は凄まじく、2017年に『ダンケルク』の70mmフィルム上映も行っています。
1968年は「シネラマ劇場」という高さ10m x 横 23mの床から天井までの強大なスクリーンでの公開でした。日本での鑑賞場所はテアトル東京or大阪OS劇場のみ。湾曲スクリーンが特徴で、人間の視界にほぼ近い146度+5mの深さという脅威的なものでした。
『2001年 宇宙の旅』はこの湾曲スクリーンへの投影効果を前提作られた構図が多々あります。日本のシネラマ劇場はもう存在しないので、「公開当時と同様の鑑賞」は不可能なのが残念ですが、今回の企画は非常に近い体験をさせてくれました。
オープニングのカーテンオープン、音響効果、字幕の投影方法、インターバル・・・まるで1968年に戻ったかのような体験を提供してくれました。
スクリーン全面から発せられる色彩、粒状感で高められた立体感、空気感、質感、情感、それにプラスして6chサラウンドの大音響。フィルムならではのありとあらゆる情報量は自分の心に突き刺さります。
本当に、本当にキレイなんです。
もちろん、映画のストーリーそのものは圧倒的すぎて涙があふれました。
モノリスの音とかHALとか恐ろしかった・・・
最後に
今回の企画を成功に導いた:
・クリストファー・ノーラン監督
・フォトケム
・国立映画アーカイブ
・ワーナーブラザーズ
・映写技師の方々
そして映画を作ったスタンリー・キューブリック監督とスタッフ陣。
素晴らしい体験を本当にありがとうございました。
ちなみにですが、僕の上映回では「新世紀エヴァンゲリオン」「シン・ゴジラ」で知られる庵野秀明さんと「平成ガメラシリーズ」で知られる樋口真嗣さんも鑑賞されていました。
(ナディア観てた直後なのでマジでビックリでした)
エヴァンゲリオンも『2001年宇宙の旅』から着想を得ているんでしょうか?
(クライマックスのラミエルっぽいやつや視覚効果など)
業界人からも大変注目されている今回の企画、そして映画を後世に伝えていきたいです。