絵心ある?
私は自信の持てる特技や才能はない。だが、他人と比べて少しではあるが、絵心はあるという自負がある。
それはなぜかというと、私は小学生の頃、自分の描いた絵が県の展覧会に展示されたからだ。
当時描いたその絵のおかげで、私はいままで生きてきたなかで、唯一!? 表彰状をもらった。
私は比較的絵を描くことが好きなこどもだった。
展示された作品は運動会の騎馬戦の様子を描いた作品だ。
同級生が騎馬を作り、紅白帽を必死に取り合おうとしてる瞬間を捉えた写真を参考にして絵を描いていたのを、覚えている。
私は当時の担任の先生にアドバイスをもらいながら絵を描き続けた。そして、こどもながらに力作と感じられる絵が完成した。
完成した絵を見た担任の先生が、県の展覧会に出品することを提案した。当時の私はせっかくなので、自分の描いた絵を出品することにした。
出品してからしばらく経過したある日、私は担任の先生に呼ばれた。
出品した作品が県の美術館に展示されるという知らせだった。
私はその日、学校から帰ると、自分の絵が県の美術館で展示されることを家族に伝えた。
そして、美術館で展示される期間の週末には、家族全員で県の美術館まで私の作品を観に行った。
美術館の特設の展示スペースには、県内から集まった小中学生の作品がずらりと並んでいた。
展示してある多くの作品のなかから、家族全員が私の作品を探した。そして見つけた瞬間、家族全員が「あった!」と声を上げた。
美術館で展示された絵を見たあと、家族全員で回転寿司で夕食を食べたのも覚えている。こどもの頃の家族とのいい思い出だ。
ただ、いまになって少し引っ掛かることがある。
当時、私の絵が展示された展覧会だが、県内から作品が集まっているとはいえ、やけに展示数が多かったように感じる。
もしかしたら、当時、私の絵が展示された展覧会は出品したら誰でも展示されるものだったのではないだろうか?
だとしたら、私がずっと持ち続けてきた人よりも少し絵心があるという自負は、とんでもない見当違いになってしまう…。
私は当時、絵が展示された展覧会を調べてみた。
調べてみると、その展覧会は現在も毎年開催されている。
そして、私は現在行われているその展覧会の内容(選考、展示について)を確認してみた。
まず選考についてだが、応募された作品のなかから審査員が、選考を行い、賞を決め、努力賞も含め、全員に表彰状が貰えるというものだった。
私が当時貰った表彰状、貰ったのは覚えているがなんと書いてあったのか、記憶が確かではない…。
もしかしたら、当時の私が貰った表彰状は努力賞だったのか…。
だとしたら、相当恥ずかしい…。
私は、さらに選考内容について調べた。
そこには美術館で展示される作品について書かれていた。
その内容によれば、県の美術館に展示されるのは入選以上の作品のみだとのことだ。
この展示作品の基準はあくまでも、現在のものであって、私の絵が展示された当時のものではない。
しかし、展示作品の基準が当時と一緒であれば、当時の私の絵は入選以上の作品だということになる。もしこれが入選であれば、入選とはいえ、選考を通して人から評価され、展示された作品ということになる。
つまり、それは私の人よりも少し絵心があるという自負に矛盾はないものになる。
ここまで、長くダラダラと書いてしまったが、当時貰った表彰状を見ればこの問題はすぐに解決する。
だが、当時貰った表彰状、まだ実家にあるだろうか…。
もしまだ捨てずに残っていたとして、確認できるとしたら、そこには努力賞という文字ではなく、入選という文字であることを願う。
そして、これからも人よりも少し絵心があるというくだらない自負を持ち続けばいいなと思っている。