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[創作童話] フラメロ - ホッカイドウ・ファンタジー 8 シレトコの対決 後編

のぶ君は、おじいちゃんとおばあちゃんが、ホッカイドウという大きな島に住んでいるので、毎年夏にホッカイドウへ行きます。今年は一昨日チミケップ湖でフラメロとドウザンの湖上の対決を見て、昨日はカミノコ池で困っているお姉さん神城早苗さんを助けて、その後シレトコの宿で合流して、晩御飯の時にフラメロとシレトコ岬での守護妖精達とドウザンの対決を助けに行くことになったのでした。そして、今日は朝からシレトコ遊覧船に乗った後シレトコ五湖でフラメロに会い、フラメロの案内でシレトコ岬に向けて飛び立ったのでした。

シレトコ岬の説得

フラメロとのぶ君、あっ君、早苗さんはシレトコ岬に降り立ちました。
そこは、ドウザンと妖精達がまさに対峙している真っ最中でした。
ドウザンを7体の守護妖精が取り囲みなんとか結界の中に閉じ込めているようです。
そこには、のぶ君とあっ君も前に会ったことがあるフキノンとホタテンさまとノボリロもいました。

その結界の中で、ドウザンが叫んでいます。

「俺は、ホッカイドウを守れという声を聞いて生まれて来た。
だから、ホッカイドウを汚す奴らに天罰を下すことにしたのだ。
それのどこが悪いと言うのか。
それをしようとすると、邪魔をするやつらがいる。
フラメロよ、おまえのように生ぬるいことをやっていては、いつまでたってもホッカイドウの調和を守れない。
ニンゲンを排除しないとだめだ」

それを聞いていたのぶ君が答えました。

「ニンゲンが今まで自然を壊してきたのは確かかもしれない。
でも、ニンゲンだってホッカイドウの自然を壊したいわけじゃないよ。
少なくとも、僕とあっ君は、今まで色んなことを経験して、フラメロと一緒に、ホッカイドウの自然を守りたいと強く思っている」

すると、早苗さんが果敢にも言い放ちました。

「そうよ。そうよ。ニンゲンだって、最近は、世界中で、ちゃんと、自然を大切にしなければならないと行動を始めたんだから。
私も自然を守る活動を続けるわ。
ニンゲンのことを信じてよ」

ドウザンが、「ニンゲンはいつもそう言っては自然を壊してきた。簡単に信じるわけにはいかない」と答えます。

すると、フラメロがこう言いました。

「ドウザン、周りを見てくれ。
君を仲間に迎えようとしている妖精がこんなにもいるんだぞ」

とフラメロが言うと、周りの妖精たちが皆真剣な顔でうなずいています。

「君は僕の片割れでもある。
僕を雛形にして生まれたのだから。
だから、本当は、僕たちの話が心に響いてるはずだ。
ホッカイドウには、のぶ君やあっ君のように僕らと同じ考えのニンゲンもいる」

のぶ君が、

「そうさ、いったい、一人で何ができるというの?
一人でニンゲン全部を敵にするの?
一人でフラメロ達妖精も敵にするの?
一人であせっても空回りするだけだよ。
ともだちが、必要なんだよ。
同じ考えのともだちを増やして、
ニンゲンの世界でホッカイドウの自然を守ることの大切さを伝えることが重要だよ。
戦うだけでは、未来はないよ。」

フラメロが続けます。

「僕らは守護妖精。
生き物に危害を加えるわけにはいかない。
それは、ホッカイドウの守り神の厳しいお達しだ。
君は、生まれる時のアクシデントで、ホッカイドウの守り神の御神託を全部聞いていない」

「何?俺の生まれる時のアクシデントだと!?」

「そうさ。君が生まれる時、不幸なことに、ちょうど雷が鳴り落ちて来た。
その衝撃で、異次元空間が開き、負のエネルギーが君を通り抜けたようだ。
その時、邪悪な意識体が君と同調してしまったらしい」

「嘘を言うな。俺は、ホッカイドウの守り神の元で生まれたんだ」

「嘘ではありませんよ」と突然崇高な声が聞こえて来ました。

「私はホッカイドウの守り神。ドウザン、良く聞きなさい。
お前を生み出す時、フラメロの言う通りのことが起きたのです。
私は、そなたと交信を続けようとしましたが、闇の力に乗っ取られてしまったようです。
その後、そなたを探して、意識の立て替えをしようとしてきましたが、やっと今日その機会が訪れたようじゃ。
ドウザンよ、長い間、私から切り離されたままで、すまなかったの。
そなたの中の闇のエネルギーを、私がこれから取り除くから、そのままじっとしているのですよ。
妖精たちよ、結界をより強く張りなさい」

フラメロ達8体の守護妖精は、ドウザンを取り囲み、結界を強く張るため深い瞑想状態に入って行きました。

フラメロが、「みんな、呼吸を合わせて、意識を同期させるんだ」というと、妖精達は皆で呼吸を合わせて、結界を強化して行きました。

「早苗、そなたは、妖精達の結界の周りに二重の結界を張るように。邪魔が入らぬようにな」

そう言われると、早苗さんが突然天に向かって両手を広げると両手から眩い光が滲み出し、妖精達を取り囲みました。のぶ君とあっ君が、びっくりして早苗さんを見つめていると、早苗さんは二人にウインクをして、より力をこめて二重の結界を強化しました。

すると、天からまばゆい暖かな光の束が降りて来て、地からも光の絨毯が出て来て、ドウザンを取り囲みました。

ドウザンは、最初もがいていましたが、何やら黒っぽい光がドウザンの体から抜けて行き、その光が消えると、ドウザンの顔が穏やかになり、ぐったりと地べたに座り込みました。

「俺は、俺は、なにか、暖かい、明るい気持ちで満たされている。俺は、変わったのか?」とドウザンが言うと、

「これで、私の肩の荷も降りたようです。ドウザンよ、そなたには、羊蹄山の守護を任命します。
妖精達よ、ドウザンも仲間に加えて、ホッカイドウの調和を守るのですよ
のぶ君とあっ君よ、フラメロや妖精達を助けてくれて、ありがとう。
ニンゲンでありながら、妖精達と一緒にこのホッカイドウの自然を守ってくれたことに感謝しますよ。
これからも、よろしく頼みますよ」

とホッカイドウの守り神のお言葉が聞こえて来ました。さらに、

「早苗、はるばるよく来てくれたね。タカチホの神によくお礼をいっておいてくださいね」
「はい、ホッカイドウの神さま。これは約2000年前のお礼だとタカチホの神がおっしゃっております」
「嬉しいことだね。帰ったら、ともに助け合い、この星の安寧を保ちましょうぞとお伝えあれ」
「はい、かしこまりました」と早苗さんが深く礼をしました。

こうして、妖精達の大会合は終わり、ドウザンも仲間となり、ホッカイドウの妖精界にも調和が戻ったのです。

フラメロが妖精達を代表して話はじめました。

「のぶ君、あっ君、本当にありがとう。
君たちと出会わなかったら、ドウザンを守護妖精に戻すこともできなかっただろう。
本当に感謝してるよ。
これからも、ホッカイドウに来たら、僕や他の妖精達に声をかけてくれよな。
いつでも、君たちのために駆けつけるよ」

「ありがとう。フラメロ、そして、ホッカイドウの守護妖精のみんな!君たちのことは絶対に忘れないよ!」

とのぶ君が言うと、あっ君が、

「僕も絶対に忘れない。また、絶対ホッカイドウに来て、君たちと冒険をしたい!」

と言いました。ついで、フラメロが、

「それから、早苗さん、やはりただならぬ人と思っていたけど、タカチホの神の使いだったのですね。
我々を助けてくれて、ありがとう。また、ホッカイドウに来ることがあれば、いつでも歓迎します」
「ありがとう!ホッカイドウに仲間ができて嬉しいわ。絶対、また来るからね。よろしくね」

といつもの調子で早苗さんが答えると、あっ君が、

「早苗さんって、神様なの?」と聞きました。
「違うわよ。ミヤザキのタカチホといわれる神様に頼み事をされて、わざわざバイクでホッカイドウに来ただけよ。私はニンゲンよ」
「え、そうなの。てっきり、妖精なのかと思った。」とのぶ君が言うと、
「なに言ってるの。のぶ君とあっ君と同じニンゲンなんだから。これからもよろしくね!」

と三人はしっかりとハグをしたのでした。

フラメロが「じゃ、そろそろ、お父さんとお母さんのところに戻らなきゃね」と言うと、
「いやだー、もっと、一緒にいたいよー」とあっ君が駄々をこねています。
のぶ君が「そうだけど、帰らないと」と言うと、
フラメロが「じゃ、また、背中にあれを付けるよ」と言って、羽のようなものを付けました。

「それじゃ、守護妖精のみんな、バイバイ!」とのぶ君とあっ君が言うと、守護妖精達も名残惜しそうに手を振ってくれました。

シレトコ五湖

のぶ君達は、宙に舞い上がり、しばらくして、シレトコ五湖に戻ってきました。
お父さんとお母さんがヒグマを見て恐怖で固まっているところです。

フラメロが、「ぼくがアダマールと言ったら、三人で、クマが出たーと叫んでお父さんとお母さんのところへ戻るんだよ。あのクマは僕の友達で僕が頼んで出てきてもらったやつだから悪さはしないから安心して」

「うん、分かったよ。それじゃ、これで、本当にお別れだね。寂しくなるなぁ」とのぶ君とあっ君は涙目になりました。

フラメロも涙ぐんでいるように見えます。

「それじゃ、また会おう」とフラメロが言うと、「アダマール!」という叫び声とともに、

お父さんとお母さんが、ヒグマの前にいる三人を見てブルブル震え出しました。
のぶ君、あっ君、早苗さんは、フラメロに言われた通り、「クマが出たー!」と叫んで、お父さん、お母さんのところに駆け寄りました。
するとヒグマが「ぐおー」と一声吠えると、後ろを向いて林の中に戻って行ってあっという間に見えなくなってしまいました。

お母さんは、「あ、あれ、クマがいたわよね。あれ、戻って行った?あー、よかったわ」と泣いています。

のぶ君、あっ君、早苗さんは、顔を見合わせて、ウインクしました。

高架木道

その後、ツアーのガイドさんにそこでヒグマのような黒いものを見たと伝えたところ、ガイドさんが

「では、周囲を注意しながら、急いで高架木道まで行きましょう」

ということになり、高架木道への登り口へ急ぎました。
そして、なんとか無事にツアーの一行は高架木道にたどり着いたのでした。
でも、のぶ君たちは、フラメロの友達のヒグマだと知っていたので、全然怖くなくルンルンと地上コースを歩いていたのは秘密です。

お母さんがホッとしながら、「やっぱり、ホッカイドウね。熊が出るのね。ああ怖かったぁ」とお父さんにしがみついてます。お父さんもなにかぼうっとした表情で空を見つめているのでした。

「さて、今日の観光はこれで終わりよね。ホテルに戻って、美味しい晩御飯を食べましょう」とお母さんの元気も戻ってきたようです。

別れ

高架木道を歩いて、駐車場まで戻ると、早苗さんが、

「私はこれからミヤザキに戻ります。ちょっと報告することもあるので」
「あら、そうなの、寂しくなるわね。私たちトウキョウに住んでるから、早苗さんもトウキョウの大学だったわよね。トウキョウに戻ったら、また、連絡してちょうだいね。この子達もすっかり早苗さんに甘えちゃってるし、何か美味しいものでも食べにいきましょう」
「うぁー、ありがとうございます!東京に戻ったら絶対連絡しますね。美味しいもの食べたぁーい!」

と二人はすっかり意気投合しています。

「じゃ、のぶ君、あっ君、すごい冒険だったね。ワクワクドキドキが止まらないなぁ。また、トウキョウで会おうね!」
「早苗お姉さん、また、一緒に冒険しよう!」「絶対だよ!」とのぶ君とあっ君と早苗さんは最後にハグをして別れました。

お母さんは、「え、冒険?何したの?ああ、熊がでたことか」と自問自答して納得してます。

早苗さんは、バイクの音をさっそうと立てて駐車場を出て行きました。
のぶ君はその姿を追いながら、考え事をしていました。
ホッカイドウの守り神の声がどこかで聞いたことがあるような気がしたからです。
しばらく考えて、あっと、思って、

「あっ君、そういえば、ホッカイドウの神様の声だけど、誰かに似てると思わなかった?」
「え、そういえば、... あ、あれ、おばあちゃんの声に似てたね」
「やっぱり、そうだよね」

と二人は、そうだったのかと顔を見合わせて、フラノのホテルでおばあちゃんがフラメロに会ったことがあると言っていたのを思い出しました。
そして、二人のお腹は、ぐぅーと大きな音を立てたのでした。

おしまい/Pakno


最後まで読んでいただきありがとうございます!

これで、フラメロとのぶ君とあっ君のホッカイドウでの冒険も一区切りとなりました。のぶ君とあっ君は、ホッカイドウでの冒険で人間としてもだいぶ成長できたことでしょう。後半に登場した早苗さんの今後も気掛かりです。もしかすると、続きのお話があるかもしれません。

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