手に入れたいと願う気持ち
Eテレを見る習慣が一切つかず、Amazonプライムのコンテンツを気の向くままに見続けてきた次女。
最近ハマっているのが「サンリオ世界名作映画館/世界名作劇場」だ。サンリオのキャラクターが童話の主人公となり、お話が繰り広げられる。わかりやすくいうと「日本昔ばなし」のサンリオ&世界バージョン。親としても安心して見せられるコンテンツである。
製作時期はおそらく90年代。オープニング映像には、キティちゃんやマイメロディなど今も人気のキャラクターを筆頭に、けろけろけろっぴ、みんなのたあ坊、ぽこぽん日記、バッドばつ丸、アヒルのペックル、マロンクリームなど、親世代にとっての「あの頃」のオールスターキャラがずらりと並ぶ。
ハライチの岩井がラジオでよく話す「けろけろけろっぴの三銃士」も、おそらくこれの1作品と思われる。しかし、当時毎月いちご新聞を読むほどにサンリオガチ勢だった私だが、見た記憶はない。たぶんこれ、セルビデオとして売られていたのだろう。1本数千円から、下手したら1万円超え。買ってもらえるはずはない。
そんな、喉から手が出るほど見たかったのに見れなかったコンテンツが、30年の時を経て、今の子どもは再生ボタンひとつで見られるのだ。当時の私が聞いたら、泣くね。「自分の娘」に対して、「大人になった私」だから、なんとか理性を抑えることに成功しているだけ(笑)。
思えば、私たちが子どもの頃は、好きなものを享受するのにたくさんの知恵や時間を使っていた。それどころか、いくら方策をめぐらせても手に入らず、我慢することも多かった。「買ってくれ」「連れて行ってくれ」という親への懇願は、聞き入れられないのがデフォルトだった。
青春時代になってもそう。好きなアーティストが「影響を受けた」と公言する作品を探して、街じゅうの中古CD屋をハシゴしたり。どうしても読みたい小説を読むために、隣のクラスのよく知らない子に貸してくれるよう頼んだり。ライブのチケットを取るために、朝から電車に乗ってプレイガイド(という言葉ももう通じない?)に並んだり。
コンテンツを楽しむ時間よりも、それを手に入れようと考える時間、待つ時間のほうが長かったんじゃないだろうか。それらをギュッと縮めたら、コンテンツを享受していた正味の時間はだいぶ少なくなりそうな気がする。
時間をかけなくても、なんでもボタンひとつ、一画面内ですべてが手に入る今の世の中は、とても豊かだと思う。だけど、「手に入れるためには、どうしたらいいだろう?」と考えたり、「手に入れたいけど、手に入らない」という焦燥感のようなものを経験しないのは、果たしていいことなのだろうか。「いや、あまりよくない」と結論づけたいのは、手に入れられなかった古い世代の嫉妬なのかもしれないけど。