カープダイアリー第8271話「突如として発生したマツダスタジアムの雲海の先に」(2023年5月26日)
チームが2週間の遠征から戻ってきて最初の相手は最下位中日だった。前夜の試合を落として負け越しとなり借金1。この3連戦の入場者数はいずれも2万4000人台以下と振るわなかった。ビフォアコロナではありえなかった現象だ。
第1戦ではライト側コンコースに「雲海」が発生した。人工的に霧を発生させて暑い季節に涼しみながら観戦してもらおうと球団が仕掛けた。
準備は松田一宏オーナー代行以下、職員「総出」で進められた。「総出」は松田元オーナー肝入りの特別業務だ。霧発生機メーカー「いけうち」(大阪市)ともに、現地でのテストを重ねて実施にこぎつけた。
似たようなことは、背番号などが「まったく見えない」(実況関係者やファン)と不評だったビジターユニホームの改良の際もあった。開幕直前になってナイター照明の下、職員らが「総出」で様々な加工を施したユニホームのテストをな重ねた。その結果、神宮球場での開幕戦からは、番号などの縁取りを明確にしたユニホームにこっそり差し替えられた。
発表しても何ら問題はないだろうに、情報を決してオープンにしない。それがカープの球団体質だ。
マツダスタジアム供用開始以来、広島では「松田オーナーに気に入られないとスタジアムでは商売できない」が関係者の一致した見方になっている。
商品の優劣や市民・ファンへのサービスの良し悪しではなく「松田オーナーに気に入られるかどうか」(市内飲食業者)が唯一マツダスタジアムで商売するための条件になる。税金や個人・企業の寄付などで完成した「新球場」(完成前後のマツダスタジアムの呼称)が完全に私物化されてしまった。
「雲海」についてどのメディアも報じていないが、おそらく「三次の霧の海」をスタジアムで再現したものだろう。
大物政治家の口利きなどがあり、長らくカープは三次市の隣に位置する庄原市をあからさまなほど特別優遇してきた。庄原市には「赤松&天谷 スーパープレー人形」で注目されるようになったIKIコーポレーションもある。当然、三次市は面白くない?
2019年、44歳の若さで初当選した福岡誠志市長がトップに立ったことで三次市は松田元オーナーに向けの巻き返しを始めたかっこうだ。
G7広島サミット閉幕後、様々なサミット関係者が広島市にやってくる。ウクライナからも要人が複数やってきて松井一実市長の下を訪ねている。
だがマツダスタジアムに、広島の一大イベントであったサミットのことを表現するものは何もない。国際平和都市をホームタウンとする球団の価値を自ら棄損している。
「はだしのゲン」とともに広島で育った新井監督は今、どんなことを考えているだろうか…
この類の話とは無関係にこの日からのヤクルト3連戦はチケットがよく売れ、当日券はファンから反対の声が非常に多い自由席だけ。スタンドは3万312人で埋まった。
試合は初回に2点、二回に1点、三回には田中広輔3ランで6対0となった時点でほぼ勝負あり。ヤクルト先発の高梨の出来が悪過ぎた。
大量援護を受けた黒原は序盤3回無失点。しかし四回に四球ひとつを挟む4連打で交代を告げられた。
また勝率5割に戻した新井監督は試合後「しっかりとみんな1打席目から集中力を持っていい攻撃ができたと思います」と褒め黒原につては「緊張はもちろんしたと思うんですけども、四回に点を取られましたけどもマウンド上での躍動感は感じました」と期待を口にした。
開幕4連敗のあとすぐに5連勝して借金を返した新井監督は今回で早くも5回、勝率5割ラインに戻したことになる。
一度、5割を切ると二度と浮上できなかった佐々岡監督の3シーズンとは明らかに違うタフさ今のチームには存在する。
一方でますます加速する阪神は今季2度目の6連勝で貯金が今季最多の15になった。1カ月、2カ月そこらで7・5差を盛り返すのは難しい。
最低でも5年、長ければ古葉竹識監督のような長期スパンでのチーム強化を求められる新井カープの未来はそれこそ「周りがぜんぜん見えなくなる」(現地で体験したファン)雲海の中にある。
田中広輔のようなベタランの力を借りながら、黒原やこの日で7試合連続スタメンに名を連ねた林らをいつまでにどう育て上げるか。5年はあっという間に経つ。その時、1年目にこうしてグラウンドに立った面々はどんな立場になっているだろうか…
※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。
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