カープダイアリー第8554話「県民大会議カープファン支持率ナンバーワンも田村俊介」(2024年3月15日)

九州から関東地方にかけて暖かな一日になった。西宮市の鳴尾浜球場では阪神との一戦でウエスタン・リーグが開幕した。

先発した野村祐輔が2回4失点と乱れ、二番手新家も2回7失点で1対11大敗スタートになった。

スタメン
ショート羽月
センター大盛
ライト中村貴浩
レフト中村奨成
ファースト韮澤
DHロベルト
セカンド佐藤
キャッチャー石原貴規
サード内田湘大

スタンドには広陵ナインと中井監督の姿があった。球場すぐ向かいにある鳴尾浜臨海公園野球場は春・夏甲子園開催時に練習会場となっている。センバツは3日後に開幕、広陵は大会4日目第2試合で高知と対戦する。

けっきょく中村奨成は開幕一軍競争に最後まで加わることができなかった。その代わりに同じ外野手で田村俊介が若手の中では頭ふたつ、みっつ抜けた存在になった。

試合のなかったこの日の夜も、田村俊介はクルーズアップされた。

NHK広島放送局は、カープというキラーコンテンツを最大限に活用して放送、放送関連業務に注力しているように見える。当然だろう。

放送と通信・ネットの融合が進み、テレビ・ラジオの相対的地位が低下する時代にあって、幅広い層に受け入れられるカープ情報のボリュームアップは避けて通れない。広島県民はスマホでカープナインの活躍を見守っている。自宅にテレビがないスマホユーザーもNHK受信料が求められるようになる。受信料契約件数の増減と、地域独自のコンテンツや地域パワーには密接な関係があると考えていい。

NHK総合(広島県単)とネットで視聴できるNHKプラスでは、この日午後7時30分から同8時42分までと、同10時から同11時15分までの2部構成で「みんなのカープ県民大会議」を生放送した。ドラフト会議前と合わせて、この特別番組はレギュラーものとなっている。

エリア内放送番組では異例の長さで、しかも高視聴率を叩き出す。そんなコンテツは広島にあっては唯一無二…

番組はゲストを複数招き、スタジオ進行される。1年前のカープOBゲストは大野豊さん、達川光男さん、安部友裕さん、中田廉さんだった。今回は達川光男さんに代わって緒方孝市さんの“登板”となった。

番組前半は打撃、後半は投手を掘り下げ、データなどから、カープ優勝の条件を、視聴者(県民、ネットの場合は県民以外)とともにスタジオで探った。

途中、「ファンが選ぶことしの得点力アップのキーマン」をオープン戦観戦にやってきたマツダスタジアムのファンに尋ねる、というアンケート結果の紹介があった。

結果は…

①    田村俊介13票
②    ②シャイナーと秋山5票
③    ③坂倉、小園、レイノルズ、堂林4票

…だった。

そのあと緒方孝市さんがバットを手に、カメラの前でその打撃の特徴を解説しながら実演するコーナーが用意された。ポイントは「間の取り方のうまさ」と「自分のポイントで打つためのテイクバックとトップの作り方の良さ」だった。

スタジオ入り後は“手探り”だったはずのアベレンコンビは、番組が進むにつれて、驚きを隠せなくなったようだ。リーグ3連覇と日本シリーズでの死闘。グラウンドとグラウンド外で、長らく行動を共にした指揮官のイメージとは別人のようなその多弁ぶり、穏やかなその表情を目の当りにしたのだから…

実際、当時の緒方監督は、常に厳しい目でナインを見守っていたし、報道陣との会話ですら必要最小限だった。そんな中で出た「神ってる」発言は、だから余計にインパクトがあった。

例えばキャンプが始まってすぐの囲み取材で「四番は競争、誰にでもその可能性がある」という緒方監督の話に記者が即「じゃあ〇〇選手にもありますね?」と返したら「そんな訳ないだろう!」と一喝されたことがあった。そんなことが多いと取材する側も距離を置かざるをえない。簡単に言えば緒方カープには“遊び”がなかった。選手も“のびのびとプレー”という訳にはいかなかったのである。

その行きついた先が「野間掌底打事件」。起こるべくして起こったことになる。

番組後半の途中、中田廉さんが進行とは関係ないところで「緒方さんが笑うところ、初めて見ました」とポロリと言った。さらに番組最終番では、これまた進行とは関係ないところで安部友裕さんの方から緒方孝市さんへ直接質問するというシーンまで飛び出した。もちろん、選手時代に監督に質問することはあり得ない。番組MCの谷原章介さんが「新井監督がすごく明るく…」と話しながら長尺番組を締めようとしていた時、緒方孝市さんも大きく頷いていた。

立場が変われば人も変わる。普通はそうだ。だが、そうではない人もいる。

侍ジャパンを率いてアメリカを倒した栗山英樹さんや、サッカー日本代表の森保一監督は後者だ。苦労人として知られる大野豊さんもそうだし、現役時代に“おもしろ”と言われた新井監督もそうだ。

県民大会議での“激論”の末、行きついたのは、番組ご意見番のような立場になりつつある大野豊さんの「打ち勝つ野球、点を取られない負けない野球」だった。緒方孝市さんはそこに「若い、新しい力を新井監督がどんどん投入する」ことを補足した。

新井監督やアベレンコンビらを使いながら、偉業を成し遂げた緒方孝市さん、そしてカープ黄金時代のヒーロー大野豊さん。視聴者はもっと、もっとお二人の話を聞きたいと思いながらエンディングまでを堪能したことだろう。

そして開幕後は、会議で論じた選手たちひとり、ひとりの活躍ぶりに一喜一憂することになる。大野&緒方コンビによる「マツダスタジアム特別解説動画」がYouTubeに開設されれば、瞬く間に大人気コンテンツになることに、NHK担当者は気付いているだろうか…

※この記事内での選手名表記は独自のものになっています。

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