カープダイアリー第8301話「DeNAの勢い止めた”おじさんふたり”が2000本へと共に歩む道」(2023年6月27日)
阪神に3連勝して広島に乗り込んできた首位DeNAの進撃を、蒸せるような暑さのマツダスタジアムで止めた。初回に1点を先制されてもすぐに追いつき、六回にこの日最初の四球から床田が失点してもその裏またすぐ同点にして、八回に勝ち越した。
安打の数はDeNAの10本に対して7本。三浦監督は交流戦も交流戦明けも、投手力を前面に押し出す形での勝利に自信を深めてきた。そんな相手に競り勝った。試合後、新井監督は言った。
「床田が(被安打9と)打たれながらも試合を作ってくれた。ナイスピッチングでした。勢いに乗っているチームに先制されても逆転してこういうゲームを勝ち切ることができたのはチームの力がついてきている証拠。勢いに乗っていけそうだね」
お立ち台にはその床田に代ってこの日、出場登録即勝ち投手となったターリーと、2安打2得点の菊池と決勝犠飛など2打点の秋山が上がった。
3人がファンの前に姿を見せるまでに少し時間がかかった。おそらく面子をどうするか、河内広報が調整したのだろう。
結果、菊池と秋山、一番と三番、センターラインが揃ってスタンドに向けその思いを語るチャンスが訪れた。
菊池はここまで2試合欠場のみの66試合で打率・280は悪くない。自慢の“異次元シールド”も惜しみなく披露し続けている。だが、交流戦打率は・213に終わり規程到達60人で49位に低迷、6月の打率もこの試合前で・212。
新聞にいろいろ書かれる事態となった秋山はさらに悲惨で交流戦打率・206は53位、6月は・164。本人もそうだが新井監督にも“問い合わせ”が相次いだ。
だが“鳥の目”を持つ指揮官は、開幕からチームの勝利に貢献してきた「アキを今度はチームで助ける番だ」と話し、打順に変更なし、を明言した。「三番秋山」をいじると、打線のバランスを維持できなくなる恐れもある。
注目度の極めて高い秋山には解説陣も次々に状態を確認しにやってくる。中には助言してくれるOBもいる。「今は何をやってもうまくいかないので…」と聞けば、そりゃみんな心配するだろう。
でも、頼ることができるのは自分の力だけ。菊池もそう。プロで10年を超えたふたりが悩みを相談し合いながら迎えたこの日は初回、先頭の菊池が右中間二塁打で出塁したことで流れが来た。続く野間の送りバントはベンチの秋山に対する配慮で、一死三塁ならヒットじゃなくても同点にできる。
DeNAの先発マウンドは大貫。3連勝中の右腕もまたチームの首位浮上に貢献してきた。
初球スプリットをファウルにした秋山は3球目のカーブもファウルにしてボールカウント2-2。5球目のスライダーを引っ張ったら打球はすぐ手前で大きく弾み、ファーストの頭の上を越えてセカンド牧のグラブの中へ。菊池は余裕でホームに滑り込んだ。
やっと一息ついたはずの秋山は1点を追いかける六回、菊池二ゴロ、野間中前打の一死一塁でボールカウント2-2からの5球目、スプリットを右前に弾き返した。長らく引っ張るとゴロばかりだったのが、やっと打球に角度がついた。それはやっと余分な力みが取れたことを意味する。
続く龍馬は空振り三振。しかし坂倉が右前適時打して大貫をマウンドから引きずり降ろした。秋山の15打席ぶりのヒットが実を結んだ。
仕上げは八回。先頭の菊池のひっかけたような打球もワンバウンドしてサードの頭上を越えていった。無死二塁で野間はこの日2度目のバント。一度ファウルにしたあと成功、初回と同じ形になった。
DeNAベンチはここでイニング跨ぎの上茶谷からエスコバーにスイッチした。
秋山にとっては対戦打率2割そこそこの左対左。初球154キロ空振り。スイングが大き過ぎた。2球目、低目のスライダー。重心を落として前でさばいた打球はセンターへ。菊池生還で決勝点をもぎ取った。
侍ジャパンつながりの菊池らの誘いによって“広島移住”を決めた秋山にとっては思い出深い一日となり、また二人揃ってのお立ち台はふたりの絆をさらに太いものにした。
菊池はこれでプロ通算1550安打、4月27日に1500安打クリア。
秋山はこれで同じく1527安打、5月16日に同じくクリア。
ともに歩むふたりにとって、チームの勝利に貢献する打席の積み重ねが2000の大台への唯一の道…
お立ち台のやりとり
ターリー ここにいるふたりが決めてきれましたので自分に勝ちが転がりこんできたと思います。チームウインです。八回、自分が短い時間で抑えて攻撃のリズムが生まれたと思っていますし、僕よりも床田が7回を投げて試合を作ったのが大きいと思います。
-では秋山翔吾選手にお伺いします。まさに手に汗握る展開、今はどんなお気持ちですか。
秋山 そうですね…あのう、まあ犠牲フライ上げた時も最初の打点の時も、チャンスを作ってくれた彼のおかげで凡打が凡打でなくなってるんで…僕より安堵しているファンのみなさんがいるかなと…感じました、すいませんでした。
-菊池選手にもこのあと伺います。まず秋山選手、1本目について聞かせてください。先制された直後の打席でした。
秋山 ただの内野ゴロです。(スタンド笑)
-…そのあと六回、秋山選手らしい当たり、ご自身15打席ぶりのヒット。カープファンも待ち望んでいた1本。
秋山 それはすごくひしひしと感じたんで、ただ塁上ではこれが続けばもうちょっと喜べるなと思って表情をあまり崩したつもりはないんで、まあその次の打席につながったかなと思いました。
-秋山選手がおっしゃったその次の打席、犠牲フライですけども、まさに菊池選手が塁に出て野間選手が送ってまわってきた打席でした。
-あそこで外野フライが上がったのはすごくほっとしましたし、まあその前でバントを決めた野間の方がよっぽど緊張してたと思うので(スタンド笑)、それに応えないとどんなに状態が悪くてもやらないといけないなという思いで入りました。
-15打席ぶりのヒット、そして犠牲フライを打って守備に戻られる時のファンの声援届いていましたか?
秋山 それは聞こえます。
-このあとも声援送り続けてくれるファンへメッセージを。
秋山 ほんとにほかの出ている選手たちがカバーしてくれて、いい状態が来てるんでそれに参加して、もっと自分自身も喜べるようなプレーができるように、これからもがんばっていきます。(スタンドから大きな拍手)
-それでは菊池選手に聞きます。2本のツーベースヒットが得点に絡みました。まずは初回から。
菊池 このヒーローインタビュー、おこぼれで立っているんで、何じゃべろうかずっと考えていたんですけど、まあ秋山選手に1本出て良かったと思います。
-カープファンも同じ心境だと思いますけど、菊池選手も大きな1本につながったわけですね。
菊池 ふたりして一番三番、状態が悪い時期も長かったですし、ぼくらベテラン、まあおじさんふたりが引っ張っていかないといけないと毎日思ってるんですけど、なかなかうまくいかないこともあるんで、きょうの秋山さんの1本そして決勝犠飛、これでやってくれると思うんでぼくもなんとか波に乗りたいと思います。
-八回も先頭で非常にいいバッティングでした。
菊池 あれもいい当たりではなかったので、ラッキーだなと思いながら走って、さっき秋山さんも言いましたど、野間もねなかなかバント上手じゃないので(スタンド笑)、一番緊張してたと思うんですけど、しっかり決めてくれてアキがそれに応えたというチーム力を感じました。
-菊池選手にとって秋山選手はどんな存在なんですか?
菊池 ほんとにふざけたことも言い合ったりしますけども、ベンチの中ではきょうのピッチャーはああだね、こうだねと野球の話ばかりしてますし、ロッカーに帰っても気づけばひたりで野球の話とかしてますし、そんないいパートナーだと思っています(秋山隣りで深くふなづく)
-最後にファンにメッセージを。
菊池 先ほども言いましたけど、おじさんふたり、うなぎイヌとがんばりたいと思います。応援よろしくお願いします。