カープダイアリー第8384話「菅野粉砕に成功した堂林と末包、新井監督の思いを胸に広島の秋空に向かって打て!」(2023年9月23日)
午後2時プレーボールの東京ドーム。三塁側、レフトスタンドはカープファンで膨れ上がっていた。公式入場者数は4万1451人。残り8戦全勝の勢いでクライマックス・シリーズ逆転出場を目指す、ジャイアンツファンの声援はさらに大きいものになった。
腕組みした原監督は菅野の第1投目を見つめていた。新井監督は立ち上がって両手を後ろに組み、発熱のアクシデントを乗り越えて中4日で一番に戻ってきた秋山の打席を見守った。
二番には8月中旬の離脱から二軍戦3試合を経て一軍復帰の上本、八番には5日のDeNA戦で左手親指を痛め11日に出場選手登録を抹消されていた菊池…
スタメン
センター秋山
レフト上本
ショート小園
ファースト堂林
キャッチャー坂倉
ライト末包
サードマット
セカンド菊池
ピッチャー森下
「役者が帰ってきつつある」(新井監督)打線の初回の攻撃は3者凡退。9月2戦防御率0・82と安定した投球を続ける菅野の前に11球で片付けられた。
二回、試合を最初に動かしたのは9試合続けて四番に入る堂林のバットだった。巨人バッテリーが2球続けた外角のカットボールを捉えて右中間スタンドへ。打球の行方を確認した菅野が小さくうなづいて見せた。
投げ合う森下は菅野以上に不安定な立ち上がりになった。
初回の二死一塁では岡本和真のセンターに抜けそうな打球を菊池が二ゴロにすり替えてくれた。二回の無死一、二塁でも菊池・小園のムダな動きのない4・6・3ゲッツーに助けられた。
しかし三回には36球も投じることとなり、2安打2四球1犠飛で1対2と試合をひっくり返された。
この展開は危険な兆候を示していた。9月7日からのチーム6連敗を含む直近の12試合で先発が試合を作って勝てたのは17日の中日戦(バンテリンドームナゴヤ)ただ一度だけ。
負けパターンにはまりかけた森下をすぐに救ったのは、またしても堂林だった。
四回、先頭の上本が左前打で出塁。小園一ゴロのあと堂林が初球の外スラを右中間に弾き返してまず同点。二死から末包も難しい外スラをセンター前に落として3対2と再逆転に成功した。
ところが五回、森下が先頭打者への四球のあと坂本に2本目となる適時打を許して試合はまた振り出しに戻ったのである。
森下は6回を投げて107球7安打3失点。菅野は同74球6安打3失点。
「それ行けカープ」でカープファンが盛り上がり、迎えた七回の攻撃は末包から。いきなりの快音とともに舞い上がった打球はそのまま赤いレフトスタンドに飛び込んだ。まさかの2発目被弾となった菅野は、今度は首を傾げるしかなかった。
三塁側ベンチでは藤井ヘッドと新井監督が末包を拍手で出迎え、一塁側ベンチからは原監督が出てきた。
巨人は船迫にスイッチ。対するカープ打線はツーアウトから森下の代打中村貴浩がライト線二塁打で上位につなぐと、秋山がおよそ4カ月ぶりとなるライトスタンドへの一撃で6対3。八回には末包がビーディから2打席連発となる10号ソロを放って試合を決めた。
ベンチでその様子を見届けた菅野は自分がしでかした不始末を改めて悔いたのではないか。堂林に許した一発目が火元となりそのあとの3発が点火されたのは明らかで、必ずチームに勝利を…との意気込みは空回りしたことになる。
そんな右腕を七回途中降板に追い込んだ末包はインタビューで「先頭だったのでストライクゾーンに来たら全部行こうと思っていました」と振り返った。また2本目については「その前の変化球でちょっと自分の中で違うなというのがあったので、自分の中で修正したのがうまくはまったと思います」と話した。
新井監督は試合後「ドウも末包さんもアキもいいホームランだったと思います」との総評のあと「彼はかなり前に“つかんだ”と言っていました」と毎度の末包ギャグを追加。もちろん「テクニック的なところもなんですけど、配球を読んだりそういうところも成長していると思います」と評価することも忘れなかった。
菅野とカープ打線は8月30日の京セラドームで一度対戦済み。この時、堂林には対戦機会なし。一方の末包は3打席に立ち五回の第2打席でライトポール際へ7号ソロ。アウトハイの152キロを弾き返していた。
それ故巨人バッテリーがどう内角球を使ってくるか、それをどう打つか?がこの日の末包の個人的なテーマだった。二回、無死一塁の第1打席では食い込んでくる初球のツーシームに手を出した結果は三ゴロ併殺打。
適時打を放った第2打席は6球のうち1球だけ内角にツーシームが来た。
3打席目の初球、インローのツーシームをうまく軸回転で捉えることができたのはその軌道を意識していたから。一方2本目のホームランはビーディの外角カットボールに対して体の開きが早くてファウルになったため、センター方向に意識を変えて外角スプリットをうまく乗せて運ぶ形になった。
新井監督との付き合いが長い堂林同様、2年目の末包もまた、その”親身な助言対応”によりポテンシャルを引き出されつつある。
ふたりに共通するのは日本人選手では12球団トップクラスの飛距離。ただしボールにバットが当たらなければ三振の山を築くだけ。2012年に堂林が残した144試合14本塁打150三振の“怪記録”は未だ記憶に新しい。
堂林は「自分が代わるきっかけを作っていただいた」と新井監督に感謝するとともに「何か恩返ししたい」という思いでここまでやってきた。だから四番を任されても打撃内容が変わらない。末包は堂林のそんな姿から多くのことを学びつつある。
両外国人と「八番菊池」以外は左者が並んでいた開幕スタメンオーダー。そこにはなかった名前が、クライマックス・シリーズ2位確保への正念場で打線の先頭に立つ。
あすからの残り5試合はいずれもマツダスタジアム開催になる。広島の秋空に向かって打て!新井監督が自身の球歴と重ね合わせれば、「ポスト誠也」育成という急務に向けて導き出される答えは、このふたりしかなかったということになる。
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