カープダイアリー第8418話「常廣羽也斗の魅力は考える力、山内泰幸、澤崎俊和、野村祐輔、大瀬良大地、森下暢仁に続く大卒ドラ1新人王の可能性」(2023年10月27日)
常廣羽也斗。その名がカープファンの記憶に深く刻み込まれることになる可能性大、だろう。
1964年(昭和40年)に始まったドラフトでカープ球団は長らく大学生投手を指名してこなかった。初めて指名したのは1994年の山内泰幸(日体大)で見事、新人王に輝いた。
さらに1996年の澤崎俊和(青学大)も新人王。続いて2002年の永川勝浩(亜大)は最後まで巨人・木佐貫洋と新人王を争った。ふたりは大学の寮生活では同部屋だった。
2010年以降は大学生投手指名が当たり前のようになっていく。
2010年、福井優也(早大)
2011年、野村祐輔(明大)
2013年、大瀬良大地(九州共立大)
2015年、岡田明丈(大商大)
2016年、加藤拓也(慶大)
2019年、森下暢仁(明大)
2021年、黒原拓未(関西学院大)
ほぼほぼ“短命”に終わった、あるいはまだ実績を残すことができていないのは岡田明丈、そして黒原拓未のふたりだけ。新人王組は野村祐輔、大瀬良大地、森下暢仁の3人だ。
大瀬良大地は右肘に爆弾を抱えており、今後が不安視されているが10年間のプロ生活で数多くの実績を挙げてきた。6月で34歳になった12年目の野村祐輔もそうだ。
ふたりに共通するのは自らを知り、工夫を重ね、常に変化し続けている、ということ。速い球を投げるに越したことはないが、それだけがピッチングではない。投球のメカニズムを知り、制球力を磨き、相手との駆け引きでも上を行く。そうでなければ長くはこの世界では生き残れない。
澤崎俊和と同期でドラフト2位入団の黒田博樹(専大)はまさにその代表格であり、だからこそ新井監督を支える球団アドバイザーとして今季も投手陣を影で支えてきた。
加藤から改名した矢崎は投球スタイルにおいても見事に変化を遂げた。暴発する真っすぐに別れを告げて2020年ドラフト1位指名の栗林良吏とともにダブルストッパーと呼ばれるまでになった。そこには並々ならぬ努力や工夫の積み重ねがあったはずだ。
大学4年間で何を学ぶか?
大学野球。そこには寮生活もあり、当然授業もあり、早朝練習もあり、そうした土台の上にリーグ戦などの公式戦がある。
それぞれの時間と空間でどう自分と向き合うのか…
ドラフト会議から一夜明け、となったこの日、さっそく広島の放送局が常廣羽也斗を直撃していた。
東神奈川、新横浜方面と八王子を結ぶJR横浜線で町田より2つ八王子寄りの淵野辺駅近くにある青山学院大学相模原キャンパス。中国放送は朝からキャンパス内グラウンドにENG取材班を送り込み、朝練習と朝食を取る常廣羽也斗にカメラを向けた。
-起床は何時?
「仕事があるので、もう4時40分ぐらいには1年生のときには起きていました。1年生のときはマジできつかったです。ここ、強調で…」
日本一を目指す4年間、イコール相模原キャンパス内にある野球部寮生活。先輩後輩の仲は“昭和の軍隊方式”と決別して久しいが、それでもテレビカメラの前では口にできない苦労は山ほどある。それもこれも含めての大学野球。その努力が報われた。
常廣羽也斗の最大の魅力は何か?おそらく“考える力”だろう。
ブルペンでの中国放送カメラに向けて、常廣羽也斗はこうもコメントした。
「まっすぐの安定性を高めるために、シュートしたりカットしたりするボールが多かったので、まっすぐの握りがちょっと問題あるかなと思って。変化球はゾーン内には入ったので、下半身の使い方的には悪くないんですけど、シンプルに指先にちょっとずれがあったりする、そういう時があって、そのときはストレートは逃げたりするボールになるので…」
まさに今、自分が投げているボールがどんな要因によってそういう球質になっているのかを言語化する能力。大学での4年間の価値は、自分を見つめその傾向と対策を積みかさねてこそ…
常廣羽也斗は広島ローカルの夕方ワイド番組にも登場した。広島ホームテレビ「ピタニュー」は青学大グラウンドとスタジオを結び入中(いりちゅう=放送内容の一部に外部からの中継が入る)を行った。
その中で常廣羽也斗は新井監督から手渡されたサイン入りの抽選用紙を披露。そこには新井監督がサインに沿える「感謝」の2文字もあった。
「感謝する気持ちを持って野球をしたいと思います」
「この4年間、ドラフト1位を目標にやってきたので、とても嬉しいです」
中継の中では法学部専攻の常廣羽也斗が「授業」を受け「単位」取得を目指す横顔も紹介された。“青学の法学部”については様々な“評価”がなされているが、大分県内2位、偏差値68の大分舞鶴高時代から文武両道でやってきた右腕にとって知識の習得も大切な学びの場だ。
入中を終えた「ピタニュー」のスタジオでは番組出演者が常廣羽也斗のトーク力に二重丸を出していた。言葉力を自在に操る新井監督との次回楽しみな2ショットは12月に予定される入団会見だろう。そして「ドラフト1位指名」の目標を達成した常廣羽也斗の、赤いユニホームでの次なる目標は新人王、ということになる。