カープダイアリー第8240話「空に向かって打て!新井監督の意思を引き継ぐ龍馬会心の2号2ラン」(2023年4月22日)

雲ひとつない青空、三塁側パフォーマンスの一角以外、赤と白で埋め尽くされた風景。四回、好投を続ける床田を援護する1点が入りなおランナー二塁で快音とともに放たれた龍馬の打球は、大きな放物線を描きライトスタンドの中段付近まで飛んで行った。実質、この一振りで勝負あり…

DeNA先発は昨季11勝、今季初マウンドの大貫。左右に球を散らせながら低目に集めるピッチングで、序盤3回は坂倉の右前打1本に抑え込まれた。

四回の攻撃は先頭の野間が中前打。一ゴロの秋山が入れ替わりで出て、ライアンの中前打をセンター桑原が後逸。秋山は一度フラつきかけたが両腕を振って一気にホームに還ってきた。

なおもライアンを二塁に背負う大貫は、龍馬への初球が高く浮き、2球目は決まってボールカウント1-1。そこから一転インローを攻めのはずだったスライダーがやや甘めに入ってきた。

「思ったより完璧で自分でもびっくりしました」(龍馬)

しかしその“びっくり”打球は持てるポテンシャルからすれば驚くような話ではない。新井監督の誕生によってFA移籍を封印して、気分一新で臨んだ2月のキャンプでは、誰よりも遠くに飛ばす術をロングティで存分に披露した。

率を残しながら同時に「20発以上」(朝山打撃コーチ)で打線を引っ張る。新井監督の下で新たな自分探しを始めたのである。

「風の向きとか強さとかが頭に入っていたと思うんですね。彼らしさの詰まったホームランだったと思います」(新井監督)

そう話す指揮官は言わずと知れた右の大砲だった。実働20年で2203安打319本塁打。ところが自身が初めて受け持つ愛すべきチームには、輸入砲以外にそうした人材がいない。

1990年代からの「カープの四番」は江藤-金本-新井-栗原-エルドレッド-新井-鈴木誠也。

チーム生え抜きの四番・江藤が巨人にFA移籍したのが新井監督の1年目1999年のオフだった。翌2000年2月のキャンプで、新井監督(当時23歳)はテレビカメラに向かって言った。

「江藤さんが抜けたので四番を打てるように…。テーマも空に向かって打つって決めているんです」

そう、広島の空に向かって打て!

それが「赤い心見せ 広島を燃やせ 空を打ち抜く 大アーチ」につながった。
 
バットの代わりにタクトを振る背番号25とともに戦う野手陣には、不屈の赤い心で打席に入ることを求められる。開幕から18試合を消化してそれができているのは、ほかには秋山とこの日一番に入った田中広輔ぐらいか。
 
3対0快勝のこの日も含めてこれでマツダスタジアムでは8勝2敗。坂倉、マット3発、堂林、田中広輔2発、秋山2発そして龍馬2発。チーム本塁打12本のうち実に11本が広島の空に向かって舞い上がっている。

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