カープダイアリー第8239話「マイアミの風、広島へ…今永vsコルニエル」(2023年4月21日)

米国フロリダ州マイアミの風、広島へ-
 
第5回ワールド・ベースボール・クラシック決勝で日本が前回王者を倒して3大会ぶり3度目の優勝を果たしたのは3月21日(現地時間)のことだった。
 
先発したのは今永昇太。2回1失点の“好投”がなければ米国打線に火が点いていた可能性がある。その激闘のエンディングは大谷翔平vsマイク・トラウト。日米双方の歴史の1ページになった。
 
それからちょうど1カ月。マツダスタジアムのマウンドにあのファイナルゲームの風が吹く。
 
 V(勝利)を目指すW(WはVふたつ)の投げ合い、BAYSTARS今永とCARPコルニエル…
 
今永は二軍戦3試合に投げ、時間をかけてWBC球用の投球フォームに修正を加えてきた。だが、時間をもらった分、逆にプレッシャーにもなった。
 
そしていざ蓋を開けてみたら序盤3回わずか31球。五回を終えても55球。けっきょく8回101球を投げて5安打6三振無四球…
 
「相手のコルニエル投手も本当に素晴らしい投球で、なかなかこれは終盤タフな試合になると思ったので粘り強くコルニエル投手に引っ張られながら投げられました。戸柱さんから声かけがあって、楽に腕を振ってかなり質のいい真っすぐが投げられました」(インタビューでの今永)
 
地元で7連勝中だったカープの打線はこの日、初めて本拠地で完封リレーされた。五回、二死から上本が二塁打を放ったが次打者はコルニエル。八回には先頭の坂倉が中前打で出て、前夜の甲子園に続く送りバント(今季チーム3個め)を上本が決めて2度目の得点圏としたが代打松山のバットは外スラボール球に空を切った。
 
さらに昨季、左腕を6の4、2本塁打と打ち込んだ菊池も三ゴロに倒れた。ここで勝負に来た今永を褒めるべきなのだろう。
 
打線の援護がなくても、コルニエルはよく投げた。2月のキャンプとオープン戦、さらには開幕二軍スタート期間を使いブルペン陣から先発へ転向するための準備をじっくり重ねてきた。

日南では黒田アドバイザーの助言にも耳を傾けて、ピッチングに対する考え方自体を大きく変えた。

 
自慢は最速165キロ。力いっぱい投げるスタイルから100球前後を投げ抜く先発仕様へ。自分の中でのMAXを、腕の満振りから、ちょうど指にボールがかかる速さ・強さに調整して同時にツーシームを低目に集めてスプリットも高く浮かないように工夫した。
 
ウエスタン・リーグでは玉村、野村祐輔、益田武尚に続き開幕4戦目に初先発。計3試合で18回を投げ11安打5四球1死球1暴投1ボーク、19個の三振を奪い、自責1で防御率0・50と結果を残し、開幕から3登板で登録抹消となった大瀬良の代役として来日初先発のマウンドへ。
 
今永のスライダーに優るとも劣らない必殺球はスプリット。序盤3回は40球。三回、四と死球で招いた一死満塁のピンチを切り抜けたあとは坂倉の出すサインに頷いては落ちる球でバットに空を切らせた。
 
七回、七番からの3人を簡単に抑えて球数85。迎えた八回、佐野、京田の左打者ふたり、この一、二番を歩かせたあと、秋山より打率の高い宮崎に左前打され無死満塁。バースデーの牧を空振り三振に仕留めたものの、代打楠本の一ゴロで失点して、この日一軍昇格の矢崎と交代した。
 
「(相手が今永で)ロースコアに持ち込みたい中でナイスピッチングだったね。ファームからずっといいと聞いていたので、次に投げる時には野手がしっかり援護したい」(新井監督)
 
アンダーソンが阪神打線に捕まったその翌日に7回3分の2、1失点でマツダスタジアムに詰めかけたファンと首脳陣を喜ばせたコルニエル。一緒に二軍調整を続けてきた森下の一軍昇格も先送りされる中、ローテ定着ならば、2週間後、コイの季節のマツダスタジアムで満員のスタンドを見上げながらお立ち台に立つチャンス…




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