カープダイアリー第8244話「パ・リーグ154勝右腕にセ初星を贈り20試合で貯金ゼロ」(2023年4月26日)
中日3回戦の試合開始は午後6時予定。しかし午前10時を過ぎるとJR広島駅からマツダスタジアムに向かう通称“カープロード”の人通りが増えた。そしてスタジアム正面では午前11時の入場開始を前に長い列ができた。
グッズショップ2階の奥に展示されているWBCの優勝トロフィーなどを一目見ようと集まってきたファンたちだった。ユニホームを着用せず、カープグッズも持っていない人も大勢いる。カープには興味がない?が、WBCトロフィーは見たい、ということか?
展示はあす27日まで。ナイトゲームチケットなしで見学できる。
午後3時の開門後と同じように屋外コンコースに展示すればもっと楽に見学者は移動できる。だが球団側としてはグッズショップに足を運んでもらうことが一番の狙い。マスク着用者が大多数とはいえ狭い屋内はすし詰め状態で、感染防止の観点からは非常によろしくない。「ファンファースト」ではない球団の姿勢がここでもまた見て取れる。
そんなことだから?試合の方は予想外の結果になった。中11日の大瀬良と涌井、両右腕の投げ合いは四回まで。大瀬良は三回に2点、四回に1点を失い、涌井は三回に2点を失った。
四回の大瀬良の失点は坂倉のパスボールによるもの。ホームベースカバーに滑り込んだ大瀬良はこの動きで左太もも裏側を痛めた。
だが、そうでなくても、もう長いイニングは投げられなかっただろう。立ち上がりから思うようなボールを投げることができず、毎回走者でアップアップ。十分に調整してこの内容だからことは深刻だ。
一方の涌井はこの日に懸ける思いがプレーの随所から伝わってきた。
パ・リーグ3球団で計154勝を挙げやってきたセ世。しかし開幕から3試合18イニングを投げ、わずか1失点にもかかわらず3連敗…
だから打席でも何とかしようとどんどんスイングした。マウンドでも中盤3イニングでは打者9人をピシャリと抑えた。
その涌井から七回、ライトポール際にライナー性の一撃を叩き込んだ龍馬は明らかに上り調子。これで3対4、あと1点…。ところが八回の戸根が四球と自らのバント処理ミスから2点を失って勝負あり、となった。
試合後のインタビューで涌井はこうコメントした。
「まずはひと安心ですね」「先制してもらって中押し、ダメ押ししてもらったので非常に楽しく投げれました」
さらに好投が続く要因を尋ねられると「今は楽しく投げられているんでそれが一番だと思います」と答えた。
その表情はさほど楽しそうに見えなかったが、内情は逆なのだろう。昨季は楽天でわずか56イニングしか投げることができなかった。それがもう25イニングになった。仙台ではよほど辛い思いをしていたのか…
広島に乗り込む前、涌井はプライベートな食事会の様子をSNSにアップした。同席していたのは横浜高校時代の後輩、柳。昨秋、トレードが発表された際にもやはり柳の名前を挙げていた。新たな環境に気心の知れた後輩がいてくれる。ふたりでチームを盛り上げよう、という訳だ。
それなのにふたり合わせてもこの日まで6試合で5敗、チームは全敗だった。この1勝は格別だ。
新井カープにいろいろなドラマがあるように、立浪ドラゴンズにも様々な人間模様がある。
あすはその柳と九里の投げ合いになる。先輩に先を越された柳も負けられないだろうし、2連敗で貯金ゼロとなったチームを救うべく九里も絶対に負けられない。
※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。