カープダイアリー第8609話「挑戦者は、若い力で、相手投手に襲い掛かる」(2024年5月9日)
開幕から30試合で首位阪神に1・5差の勝率5割…“撃つ弾”が枯渇する中で大したものだ。さすがは新井監督、ということになる。
たかが30試合でも、この時期に大きく遅れを取っていては交流戦で“Cエンド”の可能性が高くなる。下位チームに対してはパ・リーグ勢が必死に潰しにかかってくるからだ。マツダスタジアムに引っ越してきてすでに15年が経過した。過去にはそういうケースを何度も見せられた。
消化した試合数に差はあるものの30試合で74失点、1試合平均2・5点というディフェンスの固さが今のチームの代名詞になっている。阪神は33試合で89失点(同2・7点)、2位巨人は35試合で88失点(同2・5点)。
しかし32試合で122失点のDeNA(同3・8点)も借金1だし、借金2のヤクルトと中日もそれぞれ32試合で116失点(3・6点)と34試合で115失点(同3・4点)。どこまで失点の多い少ないが順位に影響するか、わかりにくい状況である。
よって、直近の課題はオフェンス力向上。少ない“弾”の中から選択した末包が、いきなり火を噴いてくれたのは大きなプラス材料だ。
オフには「四番!」「四番!」とメディアから散々持ち上げられた末包だったが、2月1日のキャンプイン直前に自爆(古傷の左ひざ痛)して三軍リハビリ調整が長く続いた。
実戦復帰は3月26日のウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦までずれ込んだ。そして4月半ばには打率2割を切るほど打撃不振に陥った。
「一軍に上がりたい」→「だから力が入る」→「力が入るから打球に角度がつかない」→「角度がつかないから外野にすら飛ばない」…
昨季、新井監督から「アリス」と呼ばれ確かに「つかみかけた」ものがあった。そのころのキーワードは“リラックス打法”だったはずだ。飛ばす力はあるのだから、満振りは不要…
一足先に柵越え3発で結果を“叩き出した”宇草もそう、甲子園で大竹のチェンジアップを先制ソロにした中村健人もそう。大事なのはいかにミート率を高めるか、またそのために理にかなったスイング軌道を安定させるか…
オープン戦では他球団の関係者や解説陣からあれだけ注目されていた田村俊介が末包と入れ替えで静かに一軍から姿を消したが、こちらは正に負の連鎖によって二軍行きとなったケースと言えるだろう。
三振を怖がる余り当てにいくようなケースが増えて打撃フォームを崩し、打てないことで無駄な力が入り打球が外野に飛ばなくなった。4打席もらっても修正できなければ、下でじっくりもう一度組み立て直すしかない。
2月、3月とはまるで違う打法で短時間のうちにある程度の結果を出せるようになった中村健人、執拗に粘って四球を選ぶなど打“線”としての役割を果たしつつある二俣、そして末包。3人の右打者が夏場に向けてどこまで踏ん張ることができるか?どれほどスタメンに名を連ねることができるのか?
新井監督は「つかみかけた」挑戦者たちに、きっと心の中でエールを送り続けているはずだ。プロで活躍できる期間は限られている。数少ないチャンスを掴み損ねたら、もうその先はないのだから…
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