カープダイアリー第8570話「わずか3球で危険球退場、はなぜ起こってしまったのか?」(2024年3月30日)
「わたらい・ゆ・う・きー!」
青空と、春の陽射しの横浜スタジアムに響く場内アナウンス。連日の動員新記録となるスタンドが前夜のヒーロー、その第1打席に注目した。
だが、わずか30秒後には今度は歓声が悲鳴に変わった。黒原の投じた3球目が必死にかわそうとする頭部付近を直撃、度会はそのままホームベース付近に倒れ込むと両手で顔を覆った。ヘルメットは一塁方向に4、5メートル転がった。
このワンシーンには様々な要素が絡んでいた。
わずか17時間前に「サイコーでーす!」とお立ち台で叫んだ度会は、その勢いのまま、バッターボックス一番ホームベース寄りに立っていた。左対左でも内角攻めを恐れない。
対する黒原もプロ初勝利を目指して、2月以降準備を重ねてきた。昨季は一軍で3度先発の機会をもらいながら不発に終わり、これが4度目の正直。長いイニングを投げるためには昨季、対戦打率が4割を超えた左打者対策が急務となっていた。
2日続けてスタメンマスクをかぶる坂倉との間でも様々な検討がなされ、抑えようという意識がいつしか過剰になっていたかも…
幸い、度会は治療なしで一塁走者として戻って来たが、この時点で大事な2戦目の流れはもう相手ベンチに傾いていた。
新井監督が黒原の先発登板に慎重な姿勢を崩さなかったのは、こうした厳しい展開も想定されたから、ではないか?2月半ばのロッテとの練習試合から3月3日の倉敷での楽天とのオープン戦まで、3試合10イニング無失点。メディアは「開幕ローテに向け前進」と綴ったが、「もう少しみんなで争ってもらいたい」と言うにとどめていた。
このあと二軍調整となった黒原は3月17日のウエスタン・リーグ・阪神戦(鳴尾浜)で、5回2安打無失点ピッチング。森下のコンディション不良を受け、第2戦先発が発表されたのはその10日後のことだった。
倉敷で投げた時には、上げた右足を、ゆっくり大きく後方に振ってから持ち上げるフォームだった。振り子投法。この日はなぜか、右足を地面から離す直前に一瞬タメを作ってから上げる形になっていた。いずれにしても“ゆったり”投げることを意識したものだったのだろうが、ムダな力を抜くことはできなかった。
2年前、ルーキーイヤーで中継ぎデビューを果たした黒原は、5月4日のマツダスタジアムで巨人・吉川尚の肩のあたりに死球を与えた。2安打1四球で追い詰められ、やはりプレッシャーがかかる場面で”暴発”した。。
その翌日に出場登録を抹消された黒原はその後、二軍登板もないままシーズンを終えた。今回はどうか?
一方の度会は初回、一死から二盗を成功させると、四番・牧の中前打で先制のホームを踏んだ。
急きょマウンドに上がった河野の投球は、内角を攻めづらいから窮屈なものとなり、二回にも度会の左前打も含めて4安打されて3点を失った
ぶつけられてもベース寄りに立ち、踏み込んで打つ度会は、もう手が付けれなくなっていた。
四回、三番手で出番となった大道は低目の真っ直ぐをライトスタンドに運ばれた(2号2ラン)。
六回の塹江はスライダー3連投。2球目空振りのあとすぐに合わされて一塁線を抜かれた(二塁打)。八回の中崎も真っ直ぐを中前打された。
2試合連続フル出場でこの日も3の0、開幕から7タコに終わった田村はライトの守備位置からその様をどんな気持ちで見ていたか?
平良-山本のDeNAバッテリーは、この日、真っすぐを1球たりとも投げてこなかった。
結果は第1打席が1ボールからシンカーを打ってセカンドライナー、第2打席が1 ストライクからカットボールを打って一ゴロ、第3打席はスライダー、スライダー、シンカー、シンカー、スライダー、シンカーと攻められて空振り三振…
第3戦の予告先発はアドゥワと大貫。注目はアドゥワvs度会、大貫vs田村俊介…
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