カープダイアリー第8273話「振り返るにはまだ若い?新井カープ、高津ヤクルト3タテで交流戦へGO!」(2023年5月28日)
火・水・木の中日戦は1勝2敗、入場者数はいずれも2万5000人に届かなかった。金・土・日のヤクルト戦は3連勝で締めることができた。天候にも恵まれてスタンドは連日3万人を超えるファンで盛り上がった。
G7広島サミット遠征を7勝5敗で乗り切り勝率5割復帰、そしてマツダスタジアム6連戦で4勝2敗、貯金2の3位で交流戦へ…
戦前の多くの評論家の順位予想を覆す堂々の闘いが続く。阪神が今季最長の8連勝をマークしたため首位までのゲーム差は7・5だが「日本一」を目指すならAクラス死守はマスト。ペナントレースは早いものですでに全体の3分の1を消化しており、この位置につけていれば、あらゆる可能性が残される。
この日も3対1の接戦だった。これで対ヤクルト戦は本拠地6戦全勝。開幕戦神宮3連敗の借りは一応返したことになるが、5試合までが2点差以内の勝利。ディフェンス面での健闘が光る。
先発のアンダーソンは六回までゼロを並べて、失点はラストイニング七回の村上のソロだけ。八回のターリーは荒れたものの打者5人に30球で無失点。九回はセーブシチュエーション初体験の島内が二死から2安打されながらも21球で踏ん張った。
試合後、島内は矢崎から「楽しめと言ってもらえた」ことを明かした。同じ大卒、2年上の先輩からの助言は心強かっただろう。
コーチ経験なしで着任した新井監督の舵取りは、やはり優秀だったということになるだろう。コーチ陣にそれぞれの持ち場を任せ、最後は自分が決める。初めての監督業でもやっていることにブレがない。
固定観念を排除して「勝つため」の策を柔軟に選択する。前日13球のターリーには3連投GOサイン、同じく23球の矢崎は、本人が「行けます」と言っても無理させなかった。
こうした“変更”は至るところで見られる。
ヤクルト先発の小川から初回、先頭打者アーチを放った菊池もそう。開幕前には下位に組み込むことが決定事項になっていた。しかし開幕戦で七番に入ったものの第2戦以降、一番に固定され、田中広輔と野間がそれぞれ1度、一番に入っただけだ。
「いいこともあれば、悪いこともありました。また交流戦で仕切り直し、イチから戦っていきたいと思います」
お立ち台の菊池はそう話した。個人的な思いはその胸の内に秘めている。
同じくお立ち台の上本は五回、貴重な2点打を放った。試合後、メディアからその「ユーティリティ」ぶりを振られた新井監督はこう答えた。
「いや、ユーティリティとは思っていない。チームにとって欠かせないプレーヤーだと思っています。つなぐこともできて、還すこともできる、粘り強い打撃は本当に頼もしい限りです」
きっと本人が聞いたらニンマリするに違いない。その上本はお立ち台で交流戦に向けてコメントを求められるとこう切り出した。
「はい、まず野間ぁ、待ってるよー、何してるのー?元気ですかー!」
ここでも2学年上の先輩が後輩に優しく語りかけた?それが新井一家、だ。
お立ち台の菊池も1学年下の上本について「僕の後ろを打つ崇司さんが、気合いを入れれば必ず打つという結果を出してくれていますんで…」と持ち上げた。
ふたりに挟まれて笑顔のアンダーソンもそうだ。「サカクラ捕手に受けてもらうとエブリティング気持ちよく投げることができます」と4つ年下の後輩に感謝した。
きっと坂倉も嬉しく思ったはずだ。新井監督が就任早々、最初に打ち上げたのが「坂倉は捕手一本」だったのだから。
ただ、その「捕手1本」もまたやんわりと変更された。前日の試合では八回、代打で2点タイムリーを放ったあとはファーストに入った。ぜんぜん「一本」になっていない。
こうした“作戦変更”は新井監督を取り巻く同世代のコーチ陣によって次々と“助言”があり、実行されている。首脳陣がそんな感じなのでそれを見ている選手たちも必然的にうまくまとまる。ただし、仲良しという意味では決してない。厳しい競争に敗れれば、あとはふるい落とされるだけ。野間も恐らく生きた心地がしていないはず。中村貴浩の存在は脅威だ。
さらに上本から呼び掛けてすらもらえなかった?小園に至っては二軍でも攻守両面で精彩を欠いたままだ。昨季、あれだけ期待された末包と中村健人も一軍に呼ばれる気配すらない。
とはいえ、まだ長いペナントレース、全行程の3分の1…
新井監督はどんなことでも受け止めるし、どんなことでも乗り越えるつもりでいる。周囲が弱い、弱いと繰り返す交流戦ならなおさらだ。
そして結果は最後の最後まで分からない、というのが基本姿勢。
「松山千春さんの曲にもあるだろ?振り返るにはまだ早い、との思いで交流戦に臨みたい…」
現役時代、レギュラーを目指して語った言葉は「空に向かって打て!」
大空と大地、監督になってもその思いはいっしょ…