カープダイアリー第8329話「高津監督の秘策は先発左腕3連投!いでよ広島の空に向かって打て!令和編の継承者」(2023年7月26日)
空に向かって打て!
新井監督現役1年目のオフ、カープの四番を打っていた江藤智が巨人にFA移籍した。翌2000年2月のキャンプで“ポスト江藤”を狙う大卒2年目の若ゴイは、その心意気をそう表現した。
その心意気を新井監督の現役時代ラスト2シーズンで鈴木誠也に伝授した。その4年後SEIYA SUZUKI と化したスラッガーは今、北米の青い空に向かって打つ!
誠也が広島をあとにしたことで佐々岡監督ラストイヤーの昨季、チームは四番不在の戦いを強いられた。松山、ライアン、坂倉、龍馬…
新井監督も同じ課題を抱えたまま開幕を迎えるという皮肉な結果になった。期待度の大きかったライアンは不振に陥り6月早々に二軍降格。「四番龍馬」がはまっていたのに、故障離脱で菊池や上本が“つなぎの四番”役を演じてくれている。
試行錯誤の打線には先発左腕の時、勝率がダウンするという“弱点”がある。高津監督はそこを突いてきた。球宴明けのローテを再編して第1戦ピーターズ、この日が高橋、第3戦が石川。今季、高津監督が左腕3人を並べたことは一度もなかった。
新井監督は手を打った。第1戦は中村奨成、堂林が一、二番に入り、八番に末包。この日は小園・野間の一、二番に戻しつつ堂林を七番に下げ八番末包は固定した。
誠也が去ったあとの打撃力は右打者に限ればやはり堂林と末包。ふたりの飛距離は傑出している。特に2年目の末包には周囲も期待し、本人もその気でいた。
2月の天福球場で 「先を見ずに、山まで放りこんでいきましょう!」「南郷まで飛んでいけー!」とでっかい声を上げみんなのロングティを引っ張ったのは末包だった。
しかし開幕から二軍暮らしが続き、ライアンとの入れ替わりでやっと声がかかったのは6月13日のことだった。
ラインなどを通じて SEIYA SUZUKI から助言が届く。新しい一、二軍の首脳陣からも「こうしてみたらどう?」というアドバイスはたくさんもらった。
新井監督からはすでに春先の段階で「小さくなるな、自分の長所は何だ?遠くに飛ばせ」と伝えられた。
「遠くに飛ばす」コツは「力を抜くこと」そう気づくのにかなりの時間を要した。加えて打球の方向はセンター中心。同じ課題に取り組むマットの打ち方も参考にしながら代打やスタメンで声がかかるチャンスを待ち続けた。屋外での打撃時間が短い分は屋内打撃で補った。
マツダスタジアムでヤクルト相手に2日連続のスタメン。ピーターズとの対戦では左前打と空振り三振。新井監督らの期待に応えたかったし、何より結果を出し続けることで自分の打撃に対する手ごたえを感じたかった。
同期の森が先発したことでこの日はさらに1打席の重みが増した。
二回の第1打席は二死からマット中前打、堂林四球というおいしい場面になった。サインは出ない。打つだけ。インハイに食い込んでくるカットボールをライト方向に押し返した。詰まった打球が落ちて先制タイムリーになった。
1対3で迎えた四回も堂林が粘って四球を選び一死一、二塁というおいしい場面Ⅱになった。足元に速い球が続いて2ボール。ここで何度もバットを握り返して、ヘッドの重みを感じながら体のムダな力を抜いた。3球目はアウトハイへのチェンジアップ。うまくボールの下を叩いて広島の夜空に舞い上がった打球は、そのままライトスタンド最前列へ…
末包ひとりに4打点を稼がれた高橋には後遺症が残ったようだ。五回、二死から坂倉にもソロを打たれて5回5失点。高津監督の策は2日連続で裏目に出た。
森とともにお立ち台に上がった末包は2月の頃の“元気”を取り戻したようだった。そしてファンに向けてこう約束した。あとで新井監督らに何と言われたか…???
お立ち台の末包
きょうもチャンスをいただいたので積極的につかんでやろうという気持ちで1打席目からいきました。(3ランは)バッティングカウントだったので、しっかり振り抜いて、狙ってたので…で、打った瞬間はもう良かったのですけど審判さんも含めて誰もホームランと言ってくれなくて全力でダイヤモンドを走ってきました。
みなさんお気づきかと思いますが、野手のヒーローインタビューは30代のすごいおっちゃんたちばかりで、若い選手がぜんぜん上がれてません。そのすごいおっちゃんたちに負けないようにしっかり死に物狂いでがんばりたいと思います。