カープダイアリー第8397話「空に向かって打て!2023年CS編」(2023年10月6日)
秋晴れの広島。上空の雲はゆっくりと三塁側から一塁側へ流れていた。
午後1時、全体練習終了。そのあとすぐにマット、末包、上本の右打者3人に矢野を加えた4人での回し打ちが始まった。
一度、ベンチ裏に下がっていた新井監督もゲージの後ろでその様子を見守った。
指揮官はクライマックス・シリーズというシステムが「あっという間に終わる」ことを現役時代の経験から熟知している。WBCや北京五輪のような国際大会にも“参戦”して「流れ」を掴むことの難しさ、大事さも身に染みている。
いかにして先取点を奪い、リードを守り切るか?相手も次々にいい投手をぶつけてくるから逆転勝ちするのは至難の業だ。
ではCSではどんな打線を組むのか?
中日・涌井、中日・仲地、阪神・馬場、阪神・門別。右、右、右、左の先発投手と対戦したラスト140~143試合では一番に小園を固定した。
この日も小園はいい打球を飛ばした。特にセンターから左方向へはスピンのかかったライナー性が多かった。
二番は上本、上本、菊池、菊池だった。
上本には143試合目で守りのミス2つを犯した痛恨の記憶が今も心の中を支配している。緒方監督の下ですでに3度のCSを経験しているものの、新井監督の下ではその立場は比較にならないほど重いものになっている。
何とかCSで名誉挽回を…しかし力強く振ってはみるもののなかなか思うような打球が飛んでくれない。だがまだ本番まで時間はある。11シーズンで培った経験を今こそ生かす時、ということになる。
マットは朝山打撃コーチの助言を受けながら懸命にスイングしているがこれまた打球に伸びがない。ゴムチューブを巻くなどして両腕が軸回転に巻きつくようなスイングの感覚をもう一度取り戻そうと懸命の日々が続く。
指揮官から短い言葉ではあるが直接助言も受けた。8月だけで9発。否、9発は8月だけ。
投手戦になるほどに一発長打への期待は大きくなる。ラスト4試合で代打起用しかされなかったライアンはすでにスタメン構想からは外れている。首脳陣はマット、末包を何番に配置するか?を思案中だ。
そして、もうひとり。
4人のそばで黙々と居残りロングティに取り組んだのが堂林。プロ初となる四番に座るととうとう14試合連続で“完走”した。
スイング軌道を確認しながらセンター返しのイメージでどんどん遠くに飛ばしていく。その前後を打つのは龍馬と坂倉、あるいは龍馬と秋山になる。
30分近く続いた特打のあと新井監督は報道陣にこの日の特打を“アピール”してベンチ裏へと消えていった。取材に応じたのは堂林と末包だった。
陽射しは強いが、もう汗ひとつかかないほどの過ごしやすい気候になった。秋の空はますます高く、青い空はマツダスタジアムでふたりが放つ美しい放物線を暗示していた。
※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。
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