カープダイアリー第8246話「新井流、3点差でも4安打、ゲームセットまで沸くドーム」(2023年4月28日)

マツダスタジアムでの押し出しサヨナラ劇から23時間後、舞台が東京ドームに変わっても新井カープの“最終回の反撃”は続いた。2対5、3点を追いかけて先頭の代打韮澤、今季初ヒットとなる右前打…

前夜、お立ち台で「最高デース!」と2度声を張り上げた韮澤にとっては「そのあと」が問われる格別の打席だった。

興奮してほとんど寝る間もなく新幹線移動で東京へ。体中を駆け巡る熱いものを感じながら、いつものように試合前練習では最後に控え組の“回し打ち”に参加した。

バットを振らないままヒーローになったのに、バットを握ると不思議なぐらいエネルギーが湧いてくる。フリー打撃では、ヘッドのよく効いたスイングができている。これならいける、と…

打たれた大勢は一瞬、驚きの表情を浮かべた。真っすぐ3連投。ファウルとボール球のあとのインローへの153キロを完璧に振り切られた。

続く代打坂倉は左飛に倒れて代打松山。ここでも155キロ低目を捉えて見せた。懸命に背走するセンターブリンソンの伸ばすグラブの先を打球が抜けて適時二塁打。レフトスタンドのカープファンの声援がさらに大きくなった。

このあと菊池が間髪入れずレフト前タイムリー。初球の156キロストライクを見送ったあとの落ちないフォークをミートした。

たまらずマウンドに歩み寄る阿波野投手コーチ。大勢の顔から汗が噴き出していた。

冷静さを失い気持ちが動転した時はこうした状況になる。WBCで栄光の瞬間に立ち会った右腕は、ここまで6試合に投げて自責0だった。難攻不落と目された相手をカープ打線はわずか11球で追い詰めたことになる。

打席には野間。156キロストライク、153キロファウルからの3球目は釣り球。ここで菊池が二盗に成功した。もう三塁側ベンチの優勢は明らかで、野間は5球目のフォークをきれいにセカンド頭上に打ち返した。

一死一、三塁で秋山。2球目で野間が楽々二塁に進みボールカウント1-1。しかしここからはファウル2つのあと逃げていく155キロにバットは空を切った。この勝負、全球ストレート。続くライアンは真っすぐが5球続いたあとの膝下のフォークを空振りしてゲームセットとなった。

試合後、逃げ切りに成功した原監督は「まあ…、スリリングなというかね、ひとつ勝つのは非常に難しいことで、1点上回ったのは良かったということですね」と話した。

5得点のうちの4得点は坂本の3ラン(四回)とソロ(八回)。それでコケていたら前夜の阪神戦0対15負けと同じくらい重たい敗戦になっていただろう。

一方の新井監督はベンチに戻ってくる選手たちに声をかけながら出迎えて肩を叩いた。渋い顔で椅子から立ち上がり、きびすを返してサッとベンチ裏に消える、そんな指揮官が多い中、その行動は異質に映る。

勝ち負けはつきもので、優勝しても4割以上は負けゲーム。勝ち負けよりも大事なものは何か?バットを振ることより大事なものは何か?なぜ2夜続けて粘ることができたのか?

応援してくれる人たちに勝っても負けてもファイティグポーズを見せ続ける。そんな姿勢は、このカード開幕4連敗を免れた原監督や27球も投げた大勢への強烈なボディブローとなり、明日以降の戦い必ず効いてくる。

22試合を終えて11勝11敗。ほとんどのプロ野球OBが「最下位予想」したチームは堂々の勝率5割キープで大型連休に突入する。

※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。

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