カープダイアリー第8368話「連夜の延長サヨナラゲームのエンディングはマツダスタジアム上空に舞い上がるマットアロー19号」(2023年9月6日)
午後10時20分過ぎ、ツーアウトランナーなしで「ホームラン、ホームラン、デビッドソン」の大合唱。渇いた打球音とともに高く、高く舞い上がった白球は風にも乗ってカープファンの待つライトスタンドに舞い降りた。
相手ベンチのリクエストでゲームセットまで間があった前日に続く2夜連続の延長サヨナラ勝ちは十一回、マットアロー19号。ホームベースに集まるカープナインの後方から新井監督と藤井ヘッド、少し遅れて朝山打撃コーチもその歓喜の輪に加わった。
最後まで絶対に諦めない。3対3同点で迎えた九回、栗林がヤクルト戦3連投の8月27日以来、10日ぶりのマウンドへ。この時点で、バンテリンドームナゴヤの阪神は中日に1対0のスコアで勝利を収めていた。
その裏、一死一、二塁からマットはインフィールドフライに倒れ、坂倉もボテボテの一ゴロに終わった。延長十回の二死一、二塁では小園三ゴロ…
だが、故障者続出で連日のように変更される打順には、同年齢の3首脳、新井監督、藤井ヘッド、朝山打撃コーチの創意と工夫の読みが凝縮されている。
前夜は一番に入った堂林が猛打賞の活躍で最後にサヨナラ打を放った。
この日はDeNA先発が今永でも一番に小園。六回、大瀬良の代打曾澤が追い込まれながらも左腕の低目チェンジアップを三塁線に打ち返し2点を返してなおも二塁という場面ではレフトオーバーの同点三塁打を放ち、締めて4安打と見事に切り込み隊長役を全うした。
7月12日以来の四番に座ったマットは1点を追いかける初回の一死一、二塁でチェンジアップの上っ面を叩いてショートゴロ併殺打、2点ビハインドの四回の無死一塁でもチェンジアップを空振り三振…
さらに3点差の五回には二死一、三塁で高目の148キロにそのバットは空を切った。DeNAバッテリーにやられっぱなし…
七回、九回の打席でますます力みの見えたマットは迎えた第6打席で「センター方向から右しか意識せずに打席に立つ」という約束を思い出していた。DeNA7人目、中川の149キロ高目やや外寄りの球はその思いと完全に一致。そして左足を二度引き上げる右腕の投球モーションに、自身の左足を高く上げるタイミングもまた見事にシンクロさせたのだった。
ウォーターシャワーでずぶ濡れになったヒーローを抱きしめた新井監督はインタビューでシンプルにこう答えた。
「本当に2日連続すごい試合で選手全員の頑張りには頭が下がります。ベンチでホームラン打ってくれぇと思って見ていました。本当に打ってくれてナイスバッティングだったと思います」
こう聞くと、たまたまそうなった…ように思うファンもいるだろうが、決してそうではない…
前夜、手痛いエラーを犯したライアンが復帰後初ヒットなど2安打1四球でチームの勝利に絡んだように、ナインは強いメンタルでグラウンドに立ち続ける。延長十一回、10日ぶりの出番でプロ1勝目をマークした益田武尚もそうだ。
午後十一時を回り、夜間照明の下で片付けの続くスタンドには秋の気配が漂い始めていた。首位阪神と7・5差は変わらず、優勝マジックは13で一桁になるのも時間の問題だが新井監督の思いは最後まで変わりそうもない。だって、コメントの締めが前夜といっしょ…
「連日ファンの方も遅くまで応援していただいてありがとうございます。明日も、その日暮らしで頑張ります!」
ヒーローインタビューの益田武尚とマット
-益田投手から、初勝利です。
益田武尚 ほんとに野手の方に助けてもらったので嬉しい気持ちでいっぱいです。とにかくランナー出してもゼロで抑えるという気持ちで上がりました。
-続いてデビッドソン選手
マット グレート!難しい試合展開で勝ち切れたので気分は最高、これからも勝ち続けたい。塁に出ることを心掛けていた。ここ数試合、難しい試合ばかり。何とか勝ちがつくように、とね。
-四番は?
マット 打点をあげたりと重要なポジションだけど、どの打順でもチームが勝てるようにと思って打席に立っています。遅くまで応援ありがとうございます。優勝とプレーオフを目標にやっているのでこれからもスタジアムに来て応援よろしくお願いします。
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