カープダイアリー第8437話「内田湘大の満塁弾、森下翔太の決勝弾…そして吉田正尚からバトン受けるオリックス龍馬誕生へ」(2023年11月16日)
打球音がした瞬間、スタンドのファンもベンチの選手、コーチたちも沸いた。大きな放物線で天福球場左翼、無人の芝生席へ。初回、一死満塁から内田湘大が大仕事をやってのけた。
「第1クールからいろいろなことを試してきて、少しずつ良くなってきていると思う。春(のキャンプでは)一軍で呼ばれるようにしたい」
打ったのは玉村のストレート、しかも初球。「軸回転」がうまくできた。無理に振らなくても飛ぶ。その感触をいかに増やしていくことができるか。大事なのは「再現性」。もちろん一軍の舞台でそれができなければこの世界でやっていくことはできない。
ルーキーイヤー。常に明るく元気にグラウンドに立ってきた。初めて経験することばかり。でも体重が5キロ以上増えるなど体作りの方は順調にきた。いい傾向だ。一方、肝心のバッティングの方はさっぱり。ウエスタン・リーグでスタメン出場を続け、テーマを持って打席に立ち続けたが結果が出ない。
「数字を気にせず思い切りやる」とは言ってみたものの、9月最終日にはとうとう打率が1割5分台になった。新人と言えどもあまりに打てなさ過ぎ…
キャンプ第1クール2日目。内田湘大は新井監督に声をかけられた際にさらに助言を求めた。19歳が父親のような存在に臆せず話かけるのは、なかなか勇気がいることだ。新井監督の優しさがそうさせる、ということもあるのだろうけれども…
およそ40分、打撃の土台になる形を頭の中に、いや自分の顔に叩き込んだ。大事なのは「軸」、「回転運動」、「頭と顔の位置」、「目線」。
構えた時に前傾姿勢になると「軸」がブレる。「目線」もブレる。そうなるとバットに当たらない、当たっても飛ばない、角度がつかない。
そこを意識してむしろオーバー過ぎるぐらの気持ちで素直に振ったら真芯に当たった。1シーズン鍛えたおかげで打球はさらに飛ぶようになっていた。
白組の五番サードでスタメン出場して途中からDH、ショートにも入った。三遊間の強い打球をさばき6・4・3のゲッツーも決めた。一度、できたからと言って次もできる保証はない。ひたすら鍛錬を重ねていくことに変わりはない。
紅組スタメン
セカンド羽月
ショート矢野
レフト中村貴浩
ライト田村
サード林
ファースト韮澤
センターバスケス(アカデミー)
キャッチャー持丸
DH清水
紅組投手と結果
玉村5回6安打7失点
河野3回3安打1失点
白組スタメン
セカンド久保
センター中村健人
サード二俣
ライト末包
サード内田
ファーストラミレス(アカデミー)
レフトロベルト(アカデミー)
キャッチャー石原貴規
DH高木
白組投手と結果
益田3回2安打1失点
新家1回2安打1失点
長谷部1回1安打無失点
高橋昂也2回無安打無失点
森浦2回1安打無失点
新井監督の話
第3クールで疲れもある中で実戦で各選手がいいものを出してくれた。秋は若い選手がしっかり力をつけてくれる時期ですし、もう彼らにとっては来シーズンは始まっていますので、ここから春のキャンプ、オープン戦、開幕してからもずっと競争は続くと思います。
一部メディアはFA権行使の選手と球団側の交渉が解禁されたこの日、龍馬がオリックス担当者と接点を持ったことを報じた。4年12億円以上の条件提示がなされ、背番号も吉田正尚のつけていた7が用意された、としている。カープ時代の3倍に近い。また鈴木球団本部長から提示されたとされる2億円の1・5倍だ。勝負にならない。
丸佳浩、鈴木誠也、丸の穴を埋めた龍馬…どんどん抜けていく、それはどんどん育つための条件でもある。
東京ドーム午後7時。
6年ぶり開催にこぎつけたカーネクストアジアプロ野球チャンピオンシップ2023が開幕して侍ジャパンがチャイニーズ・タイペイと対戦した。両軍ゼロ行進で迎えた七回、二番小園海斗がライト前ヒット。初めての先頭打者出塁だったが次打者森下翔太の2球目の前にスタートを切り二塁でアウトになった。
その直後、ドーム空間に快音が響き渡り豪快な一発がレフトスタンドに飛び込んだ。
チャイニーズ・タイペイ先発の右腕、グーリン・ルイヤンは最速157キロの本格派で五回まではパーフェクトピッチングだった。六回に門脇誠がチーム初ヒット。だが森下翔太の存在感はやはり別格だろう。CSでも、日本シリーズでも国際試合でもいいところで打つ。「再現性」なくしてはできない芸当だ。”同じ”ルーキーイヤーを終えようとしている内田湘大はどこまで森下翔太に近づけるのか…
試合は侍ジャパンの5人の投手リレーがわずかに3安打しか許さず、4対0の白星発進となった。“完封捕手”になった坂倉将吾は九回の第4打席で“らしい”センター前タイムリーも放った。
小園海斗や坂倉将吾が侍の中心として、新井カープの中心としてその道を歩むのはもう間違いない。あとは19歳の内田ら若ゴイと言われる世代からどれだけの戦力が育ってくるか。晩秋の日南は休日を挟み残り4日…
※この記事内で選手などの呼称は独自のものとなっています。