カープダイアリー第8361 話「末包、マット、堂林で巨人戦3発の8月20日お立ち台その続編そのⅡ…」(2023年8月30日)

高くライトポール際へと上がった打球は、そのまま4・2メートルの高いフェンスの向こうに着弾して大きく跳ねた。

3試合連続、末包の7号ソロホームラン。打たれた菅野は少しだけ首を捻る仕草をした。打った末包は三塁赤松コーチの前を、高い位置で手を叩くお決まりのポーズで通過すると胸を張ってホームに還ってきた。

1対0で迎えた五回、先頭打者は八番。菅野-大城卓の巨人バッテリーにとっては痛すぎる一発になった。

四回には初回タイムリーの龍馬に6球目を左前打され、マットを6球目で歩かせ、二死一、二塁となって坂倉を8球目で打ち取った。1イニング28球。慎重に、冷静に、じっくりと…

そんな菅野-大城卓の共同作業を末包が一振りで打ち砕いた。初球カットボール空振り、2球目外角真っすぐはストライク、3球目外スラはボール、4球目の甘目のコースに来た150キロは右へファウル…

5球目で大城卓のミットはアウトローに固定されたが152キロの快速球はアウトハイに浮いた。4球目と同じように右への意識を強くしてスイングしたから、押し込みが効いてファウルにならなかった。

勝負は1球で決まる。新井監督は現役時、そういう試合を嫌と言うほど経験してきた。もちろん自らの一振りでも数多くの勝利を味わってきた。打率・278、2203安打319本塁打の生涯打撃成績を誇るのだから当然の話、だ。

ライアンも秋山も長期離脱、とおう中にあっては「みんなでつないで、つないで」得点力アップを目指す、が合言葉になった。だが「あと1本が出ない」がために落とす試合も目についた。そういう展開では投手陣へ過度な負担がかかる。

阪神追撃へ、首位まで2差で突入した8月の戦いでは、つなぎの野球に長距離砲3門が加わった。

前日まででマットが月間9発、堂林が同じく5発、そして末包も計5発。

3人は8月20日のマツダスタジアムで巨人投手陣からそれぞれスタンドに叩き込みお立ち台にも揃って上がった。そんな3人を2月のキャンプ以降、開幕前後も含めて励まし続けてきたのが新井監督だった。

20年にも及ぶ現役生活で何度も打撃不振に見舞われてきた新井監督は、その都度、創意と工夫によって局面を打開してきた。時にはメンタル構造がズタズタになるほどの危機もあったが、そこで白旗を上げることはなかった。

だからいくらメディアが“ダメ出し”しようとも、ネット上で厳しい声が飛び交おうとも、そしてチームの最下位予想がまん延しても、選手たちを信じて性急な結果を求めることはしない。

「自分が変わるきっかけを作って下さった方ですし、間違いなく僕の恩師です」(堂林)

技術的なことで言えば堂林もマットも末包もやっと夏場になって「センターから右方向」という新井監督らの教えを実践できるようになってきた。加えて2月以降、ずっと「タイミングを取るのが遅い」と指摘されてきたマットと末包は、相手がどんなタイプ、どんなレベルの投手であろうとも自分の間合いというものを掴み始めた。

特に末包は開幕前に首脳陣から言われた言葉が身に染みている。

「お前は確率を上げないと今のままじゃダメ。俺たちは2年目と思って指導するけど、球団はそうは思っていないんだから…」

秋山に続いて上本も故障したことでチャンスが転がり込んできたことは末包自身が一番よく分かっている。相手の先発が左腕続きだったことで8月半ば以降、3試合連続、4試合連続でスタメンに名を連ねることができた。

前日の試合では山崎伊織が先発したためベンチスタートだったが代打決勝3ランをかっ飛ばして「状態がいいので使ってあげたい、初対戦なので思い切っていって欲しい」(朝山打撃コーチ)とその背中を後押しされた。そして見事結果を“叩き出した”のである。

試合は九回、矢崎が岡田にプロ初アーチを打たれたため2対1のスコアになった。しかしこの日の試合展開なら、まず負けることはない。チームの連勝は4に伸びて、阪神が負けたためその差は5に縮まった。

新井監督の試合後の談話

-先発大瀬良が6回無失点、4月以来の連勝

新井監督 はい、大地が要所を締めて素晴らしいピッチングだったと思いますし、また要所、要所でキクの(セカンド守備での)プレーっていうのが本当に大きかったです。彼にはいつも打つ方もそうなんですけど、守備でたくさん助けてもらっています。

-リリーフ陣ががんばった

新井監督 うん、あとから投げたピッチャーも、ほんとによくがんばってくれましたね。いつもなんですけれども。栗林はきょうもリカバリーに当てるということで、だいじょうぶです。

-打つ方では末包選手に一発

新井監督 末包さん、すごいですねぇー!きのうはレフトできょうはライトですか!本人もつかんだって言ってました!

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