絵師ドルぷろじぇくと!【note週刊少年マガジン原作大賞・企画書部門応募作品】
【キャッチコピー】
令和の崖っぷちアイドルと江戸の天才浮世絵師、時代を超えた出会いが紡ぐ七色サクセスストーリー!
【あらすじ】
加地賢太は“神絵師”を夢見る青年。ある日、祖父の遺品整理中に見つけた大量の浮世絵から、江戸時代の名プロデューサー・蔦屋重三郎の霊が現れる。現代文化を知りたがる蔦屋に、賢太は推しの地下アイドルグループ「東京伍伍」を教える。そんな折、賢太のバイト先に東京伍伍のリーダー・みかが後輩として入り、交流が生まれる。しかし、東京伍伍は運営の策略により解散。窮地のみかを救いたい賢太は蔦屋と手を組み、蔦屋同様この世に現れた天才浮世絵師達を守護霊としたアイドル、“絵師ドル”としてみか達を売り出す。やがて新メンバーも加わり、新たに「オーエドセブン」として再出発。賢太は彼女らをスターにするため奔走する。
【第1話のストーリー】
満席の会場に轟く歓声。着物を基調とした衣装で、ステージ狭しと歌い踊る7人組アイドルグループ「オーエドセブン」。そして、彼女らを舞台袖から見守る男がいる。
「おっさん見てるか? とうとうここまで来たぜ…」
“神絵師”を夢見るも、絵の仕事は無くSNSでも低評価ばかりの加地賢太(22)。ある日、兄の隆太(25)に呼び出されて祖父の遺品を整理中、大量の浮世絵を発見。直後に謎の声に呼ばれたことが気になり、浮世絵を持ち帰る。
帰宅した賢太は、推しの5人組地下アイドルグループ「東京伍伍」のライブ配信を鑑賞。すると突然、見知らぬ和装の男が出現し驚く。男の正体は、江戸時代の名プロデューサー・蔦屋重三郎(48・通称:蔦重)の亡霊だった。賢太が浮世絵を発見したことで何故か現世に戻されたと語る蔦重は、現代文化を知る目的で、賢太と共に配信を鑑賞。賢太は蔦重にメンバーを教える。リーダーのみか(19)、セクシーキャラのはるか(20)、クールキャラのなみ(18)、清純キャラのあおい(16)、そして、センターのかなた(17)。蔦重はアイドル研究のために動画浸けとなり、賢太のアパートに居着く。
翌日、賢太のバイト先のファミレスに新人が入る。それは東京伍伍のみか本人だった。正体に気づいた賢太にみかは他言無用をお願いするが、それがきっかけで交流が始まる。ある日、バイト中に急なイベントで呼び出されたみかに代わり、賢太は深夜まで働く。そのお礼として、みかから次回のライブチケットを渡される。賢太は浮かれるが、蔦重は東京伍伍がまとまりに欠け、長く続かないと指摘。賢太は否定するが、ライブ当日の夜、会場へ行くと東京伍伍は出演中止となっていた。
賢太は帰る途中、橋の上でみかと出くわす。みかは賢太に気づくとチケットをもらい受け、賢太だけにライブパフォーマンスを見せる。しかし、それを終えるとみかはアイドル引退を宣言。理由は、かなたの大手事務所移籍で多額の移籍金を手にした運営により、残りのメンバー共々解雇されたためと告白。さらに、母親にネグレクトされていた過去や、生き別れの父親に成長した姿を見せたくてアイドルになったことも話すが、心が折れてしまい泣き崩れる。胸を痛めた賢太は、思わず「君を必ずスターにする!」と口走る。
その頃、賢太のアパートでは蔦重の元に人魂が次々と出現。蔦重は笑みを浮かべた。「面白いことになってきたな…」
【第2話以降のストーリー】
みかに「君を必ずスターにする!」と言ってしまった賢太。その場は感謝されて別れるが、言葉の重さに後悔する。蔦重に相談するため帰宅すると、喜多川歌麿・葛飾北斎・歌川豊国・歌川広重といった天才浮世絵師達の霊がおり驚愕。蔦重は、彼らが自分と同様、賢太の見つけた浮世絵からこの世に呼び戻されたと語る。そして、賢太からみかのことを相談されると、しばらく考え込んだ後、妙案が浮かんだと言って賢太にみかと他の解雇メンバーを集めるよう指示する。
翌日、賢太はバイト先に現れたみかに、いいプロデューサーがいるから会ってほしいと頼み込む。みかは疑心暗鬼ながらも了承する。賢太はさらに、密かについてきていた蔦重の指示を受け、一人ずつ直接会って声をかけたいとお願いする。
賢太とみか(と蔦重)は、残る3人のもとを順番に訪れ、声をかけていく。図書館で読書しているあおい、自室で絵を描くことに没頭するなみ、SNS用に自撮りセクシー写真を撮るはるか。こうして元東京伍伍の4人が集められたところで、賢太は蔦重の指示通りに計画を伝える。それは、天才浮世絵師達の魂を4人の守護霊とすることで、強い個性を放つ新たなアイドル、“絵師ドル”として再出発するというもの。 あまりに突飛な計画に、4人は難色を示す。しかし、みかはどうせ失うものが無いなら思い切ったことをやろうと言い出し、絵師ドルとなる決心をする。他の3人も同調する。
蔦重は、4人それぞれに見合った絵師を決める。美を追求するはるかには、美人画の大家・歌麿。芸術家肌のなみには、稀代の画狂人・北斎。真面目だが空想好きのあおいには、風景画の名手・広重。責任感の強いみかには、最大派閥・歌川派を率いた豊国が紹介されたが、歌麿と北斎が「自分より年下の豊国の指示に従えない」と反対し、豊国も「(蔦重のライバルである)和泉屋に恩がある」と言い残し、あの世に戻ってしまう。蔦重は次の手があると言い、一度賢太のアパートへ戻っていく。
蔦重はアパートの隅に潜んでいた絵師の霊に声をかける。その絵師は、蔦重の時代より遥か前に活躍し、浮世絵の祖と呼ばれた菱川師宣だった。彼は自らの絵を大和絵と称し、浮世絵と呼ばれるのを嫌っていた。しかし蔦重に、ぜひ他の絵師のまとめ役になってほしいとの説得を受け、合流を決意。晴れてみかの守護霊となる。
こうして4人全員に守護霊の絵師がついた。しかし、蔦重はこれだけではまだ不十分と考え、賢太に追加メンバー探しを命じる。賢太は路上でスカウトを行うもうまくいかず、みかは知り合いの地下アイドル達に声をかけるも全て断られる。そこで賢太は、公務員であり音楽通でもある兄・隆太に相談し、彼の勧めで、歌やダンスのショート動画を投稿している配信者を調べていく。その中で蔦重の目に止まったのが、きらという少女だった。賢太はきらのSNSのDMでコンタクトをとり、待ち合わせ場所を決める。その時きらに提案されたのは、賢太とみかがバイトするファミレスだった。きらは、このファミレスでいつも一人でドリンクバーだけを注文する常連客だった。
審査の為に、スタジオできらに歌とダンスを披露してもらったところ、そのずば抜けた実力に全員が脱帽。賢太は正式にスカウトするが、きらはグループに頼らず、自分の力だけで上に行きたいという理由で拒否する。賢太は諦めかけるが、蔦重は何としてでも引き入れさせるため、きらを一年間限定のメンバーとし、その間はずっとセンターという条件を出す。それでもきらは食い下がるため、蔦重はきらの意識下に何かを語りかけたところ、きらはなぜか条件を飲み、加入を決断。きらには、蔦重の秘蔵っ子である謎の絵師・東洲斎写楽を守護霊としてあてがわれるが、賢太は写楽の亡霊が見えないことを疑問に感じた。こうして再び5人組になったところで、「東京伍伍」を「オーエドファイブ」に改名。芸名も絵師の名前を用い、「師宣みか」「歌麿はるか」「北斎なみ」「広重あおい」「写楽きら」となった。
その後、賢太の行動に興味を持った隆太が、自ら趣味で制作していた楽曲を提供。それに蔦重が詞をつけて、オーエドファイブのためのオリジナル曲が完成する。振り付けはみかが担当。さらに蔦重の勧めにより、賢太は衣装デザインを手掛けることになる。そして、かつて東京伍伍が出演したことのある野外イベントで、一枠空いた時間にライブをさせてもらえることに。みか達の復活のための準備は着々と進むが、蔦重との出会い以降まともに絵を描いていなかった賢太は、衣装デザインに苦戦する。
そんな折、東京伍伍から唯一大手事務所に移籍したかなたが、トップアイドルグループの「M.M.チューン」に加入することが公表される。大型商業ビルの広場でお披露目ライブが行われることになるが、その日時はオーエドファイブの初ライブと重なることが判明。かつての東京伍伍ファンの多くはかなたを見に行くことが予想され、不安感からみか達の士気は下がってしまう。
危機を感じた賢太は、浮世絵を熱心に研究することでようやく衣装デザインを仕上げる。届いた完成品は、浮世絵師達の作品をモチーフに、お揃いではなく各々の個性に合わせた衣装となった。誰もがその出来に満足していると、蔦重は大胆な演出を思いつき、オーエドファイブはその練習に励みだす。
こうして迎えた初ライブ当日、オーエドファイブは衣装を着てスタジオで練習を続けていた。そこへ、出演するイベントの主催者から電話が。なんと、時間管理をしていた賢太がオーエドファイブの出演時間を勘違いしており、出番が迫っていることが発覚。このままでは間に合わないため、蔦重はステージ衣装のまますぐ会場へ向かうよう指示。5人は仕方なく衣装のままで出発する。賢太も大きな巻物を抱えて同行する。
案の定、ゆく先々で注目を浴びてしまうオーエドファイブ。電車に乗り込むと信号故障でストップするトラブルに巻き込まれ、近道のためにM.M.チューンのライブ会場を通過する羽目にもなる。どうにかギリギリで会場入りするが、オーエドファイブは息も整わぬままステージに上がる。賢太は申し訳無さと不安でいっぱいになるが、そこでオーエドファイブは、歌とダンスに合わせて大きな巻物に一枚絵を描き上げるという、ライブペイントを取り入れた大胆なパフォーマンスでお客を魅了。見事初ライブを成功させた。
その夜、M.M.チューンのライブがSNSのトレンドに上がる一方で、オーエドファイブもトレンドに上がっていた。街中を走る珍奇な集団として。しかし、ライブを見た者達が絶賛の声を上げたため、ある程度の宣伝効果を生み出していた。すぐに次のライブも決まり、一同は手を取り合って喜ぶ。一方、賢太は時間を間違えた責任を感じていたが、みかからこれからもスタッフとして支え続けてほしいと頼まれる。戸惑う賢太に、みかは言う。「だって、言ってくれたもんね? 君を必ずスターにするって!」
その頃、拡散されたオーエドファイブの動画を熱心に見入る姉妹がいた。奇抜なファッションを好む姉・はなに、引きこもり気味で反抗的な妹・たま。後に二人は絵師ドル「国貞はな」「国芳たま」となり、みか達に合流。オーエドファイブは「オーエドセブン」となり、さらなる高みを目指すことになる。