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留学生紹介 Binaさん ~安心と不自由に囲まれた日本で~(Vol.3)

今回お話を伺ったのは留学生のBinaさん。
一橋大学法学部を経て、一橋大学国際・公共政策大学院(以下IPP)のグローバルガバナンスコースに進学され、現在IPP在学1年目に当たります。
ご家族の都合で幼少期をイランや日本、オーストラリアなど様々な地域で過ごし、大学進学を機に再び来日したBinaさん。
Vol.1からVol.3に分けてお届けする今回のインタビュー、Vol.1では国際経験豊富なBinaさんの生い立ちや現在の音楽活動、Vol.2では日本と世界の文化や仕事観の違い、Vol.3では国際政治のお話を伺いました。(取材は7月に実施しています)
 
この記事ではVol.3をお届けします!


1.ニュースでは得づらいイランの実情


槇尾)イランの若者には、イランの経済状況や社会的自由の制限から留学を通して外に出たい人が多いという話がありましたが、詳しく伺ってもよろしいですか。
 
Bina)宗教的な政府と反対に、だいたい今のイランの若者は宗教的じゃない人が多いんです。お祈りする人も少なくて、ラマダーンで断食する人も少なくなっています。
 
槇尾)それはイランの中で宗教観が薄れているという社会問題になっているのですか?
 
Bina)はい。問題になっています。政府としては法律とかで宗教観を強く植え付けようとしているという側面はあります。でも国民はそれに抵抗していて、直近では大規模デモも多く起こっています。ここに、ニュースとかで見るイランのイメージと実際のイランのイメージの差はあるかもしれませんね。
 
槇尾)実際私も宗教的な政府の印象のみを持っていました。そういった構図からイランの若者で、留学などを通して国外の生活を経験してみたいという人が増えているのですね。
 
Bina)はい。そうですね。
 
 
 
 
 
2.国際関係を学ばれるビナさんが考える日本の政治問題
槇尾)国際問題や国際政治を研究しているということで、日本におけるこれらの問題で関心を持っていることはありますか?
 
Bina)最近、難民法の改定に関するデモが国会の前であり、それに参加しました。具体的に難民法の何が変わったのかと言うと、今まで難民として日本に来る人はだいたい数カ月に1回、難民認定の申請をしなくてはいけませんでした。そしてほとんどの申請は落ちて、また申請するみたいな感じで日本に長く住むという構図がありました。でも申請が通らない限り自分の県から出られないんです。ちゃんとしたビザもないので就職もできません。今の状況でも難民にとってはひどい状況で、日本は難民を受け入れない国として国際的に批判を浴びています。そして今回参院で可決された法案は、3回難民申請に落ちたら送還可能になり、強制的に帰国させられる可能性がある、というものでした。これは完全に国際法に違反していることで、デモはそのことに反対するために参加しました。
 
槇尾)興味深いお話ありがとうございます。私の勉強不足で、難民法改正にそのような争点があることを知りませんでした。社会的認知が広まっていないことも課題だと感じます。他に日本の課題だと感じるものはありますか。
 
Bina)社会的認知の部分で、日本はイランや一橋の留学生らと比べた時に、全体的への関心が薄いと思います。それが一橋大学という有名な国立大学でもまだあって、この4,5年間大学にいて無関心な人が多いなと何度も感じました。これが第一の課題ですね。
槇尾)やはりいろいろな国を見てきてもそう感じられるということは日本の大きな課題ですよね。
 
Bina)そうですね。でも例えば戦後の日本はそういう感じではなくて、ストライキなどよく起こっていたと思います。それがいつの間にか消えていった感じです。
 
槇尾)無関心になっていった要因としては、平和すぎたことが最初に思いつくのですが、他に原因などについてお考えはありますか。
 
Bina)かつては政治的運動を行っていた人たちがいましたが、政府がそれを抑える過程で、市民の中で政治への関心がなくなっていったという部分はあるかもしれません。例えば学生運動などは様々な方法で抑えられてきたと思います。他にはメディアの、日本は民主主義で自由な国、という報道に安心感を持ちすぎていることもあると思います。実際日本は、男女平等で見ると世界で100位以下だったと思いますし、そもそもメディアの自由度でもOECDのなかでは下の方です。
 *世界経済フォーラムの2023年ジェンダーギャップ指数で、日本は146か国中125位。
国境なき記者団の2023年世界報道自由度ランキングで、日本は180か国中68位(G7で最下位)

槇尾)メディアの自由度とは、メディアがなんでも発信できるかということですかね?
 
Bina)そうです。表立ってこれを言ったらだめ、というような決まりはないのですが、制度的に自由度が低いとみなされる部分があると思います。例えば記者クラブの話では、招待される記者の基準が公表されていないので、政府が意図的に選ぶことができるかもしれません。
 結局、日本の政治的無関心にはいろんな要因や捉え方があるかもしれませんが、現状について本当に自由なのか、本当に安心していいのかということを考えることが大切だと思います。
 
槇尾)私にはない視点で、すごくハッとしました。日本人として当たり前を考え直すことも必要ですね。お話ありがとうございます。


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