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ウケるためのロジックとスキル
犬の目と死神
落語を始めてけったいなネタばかりでしたので、まともなネタをやらないとおかしな感じになるんやないかと考え、3つ目のネタは、
「看板の一」を演じました。
仕込みとバラシという噺の構成で、落語の滑稽噺では、この構成が一番多いいわゆる王道の構成だと僕は思っています。
名人・達人が一流の技を披露し、その立ち振る舞いに惚れこんだアホが
真似をして、とんちんかんな結果になってしまうという流れです。
この構成はとっても皮肉なんです。寄席で噺家さんの落語でウケている様を目のあたりにして、「俺も同じようにウケたいぃぃぃぃぃ!」っと思ってしまうんです。
そこまではいいんですが、自分の身の丈にあう落語でやればいいものを、寄席で見た噺家さんのように演じたいので、そのように演じようとします。けれども、噺家さんにはプロの技が入っているので、そのままできやしないんです。
「でもウケてたやん、俺もやりたいねん」の念が強く、うしろっかわにある、ウケるためのロジックやスキルなんて理解できないし、理解しようとしません。
「ウケた」という、表面上の現象しか観ていないのです。
だから、なんと言われようとも演じたいんです。
だけど、悲劇は確実に訪れます。
発表会で、どんスベリするのです。
ウケるとおもたのに、全然ウケへんやん!状態となるんです。そのとき、自分とプロとの違いがわかり、恥ずかしさで一杯になります。スッポンポンで高座に上がってることに気づくのです。
落語の仕込みとバラシを身をもって体験した瞬間でございます。噺の中の構成のはずが、自分自身が噺に構成されてしまったのです。
おそろしや、落語。そんな皮肉を与えんといて!
スッポンポンな姿ってことに気づかせんといて!
「看板の一」以来、仕込みとバラシを演っていない。
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