音、振動、サイボーグ。
平素よりお世話になっております。高島です。
開催予定でありました『REVENGE&CHALLENGE』ツアー、12/3浜松窓枠公演、12/4広島ALMIGHTY公演、延期とさせていただきました。
体調不良が続き、このままでは100%のパフォーマンスをお届けできない、と泣く泣くの決断です。ご来場予定だった皆さま、誠に申し訳ございません。
飽くまで延期、です。
本人に話を聞くところ治療の経過は良好。なんでも今回は根本治療を施すらしく、喉を開いて体内のあちこちにマシンを仕込み、脳に流行りのチップを埋め込み、眼球にLEDを仕込み、最終的にはサイボーグになって戻ってくるそうです。ミニサイボーグボーカル。
リベンジの更にリベンジ、そしてヒューマノイドへのチャレンジ。個人的にとても楽しみです。
決して心を落とさず、お楽しみにお待ちいただければ、と存じます。
巷では風邪やらインフルエンザやら流行っているそうで。
皆さまもどうかくれぐれもお身体にはお気をつけてお過ごしくださいませ。タトゥーだらけの人間がいうことでもありませんけど。
一方、僕は何をしてるかといえば相も変わらず街中の標語にケチをつけたり、タイムラインに流れてくるタトゥーのポストを一生懸命に捕まえたり、音楽を空想したりしています。
以前書き記した「26インチバスドラム」の話。
このバカデカバスドラムとの出会いこそが、僕の二十余年におけるドラマー人生において大きなターニングポイントになったのは過去に記した通り。
立て続いてもう一つ、自分の人生でパラダイムシフトが起きようとしています。それは「ハイハットスタンド」。
ドラムセットのなかにはハイハットと呼ばれるパーツがあります。客席から向かって右側、ジャカジャカ鳴ったりパカパカ開いたりするアレです。
いつも自前のハイハットシンバルを会場に持ち込むんですが、各ライブハウスによってまったく違うサウンドを奏でていることに気が付いてしまったのです。
会場のサイズ、吸音レベル、湿度に合わせてスネア(小太鼓)をチューニングするので、そういった環境的要素かと思いましたが「あれ、今日いつもと違うシンバルだっけ?いや、一緒だな…」と、そんな具合。
これは研究しなければなりません。
掃除機に例えると“ゴミを吸う”機能だけならダイソンもパナソニックもまったく同じ、しかし使用後の絨毯の毛羽立ちが明らかに違う。それぐらい細かい、些末な話です。
大きく二つのポイントに着目しました。
・ペダル部分
ハイハットシンバルは左足で踏んで操作をする楽器で、教則的には「オープン」「ハーフオープン」「クローズ」と大きく三つに奏法が分かれます(その他の奏法について今回は割愛)。
主に音価(音の長さ)を調整する目的の奏法ですが、今回掘り下げるのは三つ目の「クローズをどこまでクローズできるか」です。
ハイハットスタンドのペダルを左足で踏み、クローズした二枚のシンバル叩くと「ツッ」と音がなる、これがクローズ奏法。
実はこの先にまた別の世界があって、この踏み込む力量を増やします。すると二枚のシンバルへかかる圧力がさらに増し、ピッチ(音程)や音価をさらに自由に扱える、という世界が待っています。
例えば。
二枚のコインを指で挟みます。これを擦るとチャリチャリと音が鳴りますが、今度はギュッと指できつく挟んで擦り合います。前のそれとは明らかに違う、ギリギリという音が鳴るはずです。ホント些末な話ですね。
そもそもなんでこんな事考えてんの、って話ですが例えば「100kmで走ってゴールを目指しましょう」というゲームがあったとします。
軽自動車で走る100kmとアメ車で走る100km、勝敗は同じでもゲームとしての意味がまったく違うじゃないですか。
太鼓とシンバルの複合体をドラムセットと呼び、歴史的にアメリカのジャズが源流。
ダンスの伴奏としてボサノバ、マンボなどのラテン音楽を演奏する場合はフロアタムがスルド(ブラジル打楽器)、スネアのリムショットがクラーベを刻むウッドブロックの役目を果たし、ハイハットはシェイカーの代用として使われます。
どうせゲームをやるのなら、こんなバックグラウンドやストーリーを一身に積んで、とてつもない馬力で余裕の100kmを出したいわけです。構造主義者としては見逃せない観点です。
バラードの16ビートなんかがより顕著で、このシェイカーのイメージで演奏したい場合、ハイハットの音価はもっと短くしたいし、ピッチ感ももっと極端に表現したい。
このミッションをクリアするには、とりあえずいつもかけている圧力のマックス100を、150~200程度に増やせればよさそう。
23年目、真面目にハイハットスタンドの仕組み・機構と向き合います。
ハイハットスタンドはペダルを踏むとパイプの中間に仕込まれた芯棒が下がり、この芯棒の上部に固定されたシンバルが下がる、という仕組み。
このペダルと心棒を繋ぐポイント、大きく分けると「ダイレクト型」「滑車型・レバー型」があります。
ダイレクト型、これはその名の通りペダルと芯棒がダイレクトに繋がっているタイプ。最もクラシックなタイプでこの世に出回るハイハットスタンドの八割方はこの方式を採択している、といっていいでしょう。
一方で後者の「滑車型・レバー型」、こちらはこの接合部にひと手間加えられていて、どういった仕組みが施されているかというと“テコの原理”。
小さな力で大きな力を生み出すのがテコの原理。みんなが小学校で習ったアレを応用した「滑車型・レバー型」は100の力で踏み込んでも150~200の力が働く。
ハードケースから自分のハイハットスタンドを取り出して確認してみました。ゴツいチェーンが付いたダイレクト型、なるほど道理で理想とは違う音が出ていたのか。
・ウェイト
自分のハイハットスタンドを取り出してもう一つ気付いたことがありました。「なんか俺のスタンド重くね?」
僕はどちらかといえば力いっぱい叩くタイプなので、ハードウェア関係は華奢では困る。高校生の時に福岡のライブハウスでスタンドをへし折ったことを思い出し、どうせ買うなら、とハイエンドなモデルを日がな使用しています。
しかしこの問題に差し当たった時、つまり会場でお借りしたハイハットスタンドがやけに音がよく聴こえたとき、もっと取り回しがよかった印象がある。適度に重い、というか自分のものとはそもそも金属の質が違う気さえする。
音とは空気の振動で輪ゴムをピンと張って指で弾く、緩めてまた弾く。音価が長く、柔らかに鳴るのは後者であって、これは緩めた方がより振動しているからに他ならない。
目視で確認はできませんが、金属製のスタンドも微量に揺れています。ここからは僕の専門外ですが、使われてる金属・合金の種類によって揺れ幅は違うでしょうし、スタンドの上中下どこに重心が置かれているかによっても揺れ方は変わりそう。
もっというと、僕の持っているスタンドはカクカクしていてとてもカッコいい。しかし振動という点だけでいえばもっと流線形なデザインの方に軍配はあがる。
以上、二点のことがわかりました。
「タトゥーがあるんだから服なんかシンプルでよい」が信条の僕はあまり散財するタイプではありません。
ですが、よりよい環境、快適な状態にはとことん手間暇かけます。
どれだけ自分が心地いい状態でいられるか、その日を気分良く過ごせるか、一日一日の積み重ねが未来を作るわけですから、足元しっかりさえしておけば何も怖くないのです。
その足元にはヘビーデューティでカクカクしたハイハットスタンド。カッコいいコイツをそっと物置にしまい、「滑車型・レバー型」で、適度な重量で、流線形のスタンドを探し、いくつか発注してみました。
はたして理想のサウンドを手に入れられるのか。研究に進捗があればまたお知らせします。
例え需要がなくたって、例えなに言ってるかわかんなくたって。僕の人生には音楽かタトゥーしかないのですから。
以上となります。
それでは引き続きよろしくお願いいたします。