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後半ちゃんとシンガーズハイの話しますから。

平素よりお世話になっております。高島です。

お客さんから差し入れでタトゥーのケアグッズをいただくあたり、俺もだいぶ極まってきたなー、と思います。

そう、タトゥーを入れました(n回目)。
左腕にあった既存のタトゥーを埋めるように隙間をデザインしていき、今回は手の甲~指まで入れて完成。いつもやってもらってる彫り師さんが「虚無フレーム」という概念を打ち出し、若干それに乗っかったカタチです。
予定通りのスケジュール間ではありましたが、隙間(肌色)をグレーでぼかしていくともっと美しい、バキっとした感じでデザイン作れそう、ってことで来月まで延長。
たぶん僕が何言ってるのかわかんないと思います(僕もわかってません)が、徹底的にデザイン追い込もうぜ、ってことです。神は細部に宿る。

帰り道にあまり行かない近所のコンビニに寄って、少し買い物をしたんですが一点気になる広告を見つけました。

「95%のお客様がおいしい!と答えたから揚げ!」

100人中、95人がおいしい、とリアクションしたから揚げ。このポップが妙に引っかかる。
「から揚げを不味いっていう人いんのか?」これが僕のファーストインプレッション。

※「不味い」は適切な表現ではないが、「おいしく+“ない”」だと言葉の打ち消しになるため、今回は便宜上「不味い」と言い換えさせてもらいます。他意はありません。あしからず。

から揚げは、たしかに美味しい。
ライブで日ごろお世話になってるカメラマンのてるという男がいますが、彼は無類のから揚げラバー。居酒屋で大皿のそれが来るとおーから揚げや!と一喜一憂している。

ある時はサービスエリアで紙袋を二つぶら下げて戻ってきたので、何買ったの?聞くと「から揚げっす!」と満面の笑み。え、じゃあそっちは?「から揚げっす!こっちは胡椒なしで!」と。
またある時は楽屋でコンビニの巻き寿司を食べててへー、珍しいなーと思い覗いてみるとその寿司にはから揚げが巻かれていた。ふざけんじゃないよ、まったく。

不味いから揚げも存在するだろう。しかしそれはあくまで民間レベルの話で、例えばお母さんが作ったから揚げで揚げすぎてて焦げてる、とか反対に生焼けで美味しくない、とか。
それでもから揚げが美味しいケースがほぼほぼなわけだし、商品として企業が扱うレベルならスーパーのお総菜コーナーの冷えたから揚げですら美味しい。
だから、尚のこと「なんだ、このから揚げ!マズ!」と評した5%の人々の気持ちが計り知れない。

①レンジ

食べ物のおいしさにはレンジ(幅)があると僕は考えている。例えば「おいしさLv.100のフライドポテト」と「おいしさLv.100のハンバーガー」。

以前、ニューヨークに滞在していた頃、現地のお偉方に高級ハンバーガー店に連れて行ってもらったことがある。
まぁゆうてアメリカンフードやもんな、とタカをくくっていたが実物を見て驚いた。聞くとパティの作り方からソースや中に挟む野菜の鮮度など、徹底的に管理されており、バンズにいたっては今でも研究開発を続けているらしい。
スーツ姿の店長さんが「ハンバーガーはこの国の象徴、アメリカの未来のために私たちは研鑽を欠かさない」みたいなことを言っていて、大衆の食べ物という概念が覆ってしまった。
もちろん今まで食べたハンバーガーのなかでは群を抜いて、いやむしろ別の食べ物だった。

pict by IkkoTakashima

おいしさLv.100のフライドポテトと、おいしさLv.100のハンバーガー。
Lv.100であろうとも一方は所詮、揚げたジャガイモ。同じLv.100でもこの価値観がイコールであるか、というとそうとは決して言えない。
おいしさのレンジは揚げたジャガイモより、ハンバーガーの方がずっと広い、といえます。もちろんその分不味いハンバーガーはめっちゃ不味いし、不味いフライドポテトを作るのは相当難しい。

pict by IkkoTakashima

フライドポテトがそうなら、から揚げも所詮は揚げた鶏。焦がさず、生焼けにもしなければ一定量のクオリティは保たれるはずです。
調理工数が多少増しますから、イモのそれよりは多少レンジは広くなります。

このレンジが賛否の幅であり、フライドポテト・から揚げが嫌い、という人が少ない理由にもなる。俺めっちゃから揚げ好きなんすよ!いうてるみたいな人がいればそりゃレンジ狭いしね、と回答できます。
ちなみに僕はハワイアン風味のハンバーガーが苦手。あの酸味が絡んでくるのがどうも納得できず、これこそもレンジで説明がつくだろう、と考えています。

故に「95%のお客様がおいしい!と答えたから揚げ!」が引っかかる。5%の人はそもそも鶏肉食べられない、とか宗教上の理由である、とかそういった証左がなければ到底納得できません。

②設問の罠

ここまで考え進めていって、ある一つの可能性に気付き僕は背筋を凍らせることとなりました。当たり前のように「おいしい!と答えた」について考えてきましたが、もしその回答に中央値があったら?

例えばこういったアンケートを目にすることがあります。

もし「95%のお客様がおいしい!と答えたから揚げ!」問題に

  1. 「おいしい」

  2. 「どちらかといえばおいしい」

  3. 「どちらともいえない」

  4. 「どちらかといえば不味い」

  5. 「不味い」

の選択肢が用意されていたらどうでしょう。計算が大きく狂っていきます。
当然このから揚げ美味しいですか?と問われ「いや、別にフツーっすね」と感じる人はいるでしょう。僕はこの可能性をまったく考えていなかった。

もう少し踏み込んでこの問題を知る必要があります。企業のサイトを見てみましょう。

2023年6月15日(木)に実施した、245名を対象とした新旧(「○○(商品名)」と「○○(商品名)」)食べ比べ調査において、95%のお客様においしいとお答えいただいた商品です。

どうやら今回は旧商品と新商品を比較した調査、ということが分かりました。
さっくり計算で233名の人がポジティブ評価をし、12名の人がネガティブ評価を下した。
「このAのから揚げとBのから揚げ、どっちがおいしいと思いますか?」というアンケートが行われた、ということです。

ここに言葉の罠がありました。

pict by IkkoTakashima

“答えた”とありますので、僕は「好き or 嫌い」以外の中央値、「どちらともいえない」可能性に触れてしまったのですが、今回は新旧との比較。

どういった状況で調査されたのか、わかりやすくシミュレーションしてみましょう。

pict by IkkoTakashima

コンビニの出口に愛想の良いスーツを着た男性が立っています。
柔和な雰囲気で「お忙しいところすいません、新商品のアンケートとってまして、ご協力お願いできますか?」と、あなたに声を掛けてきます。
両手には二つのから揚げ。もちろん、心優しいあなたは応じることに。

あなたは二つを食べ比べます。目を輝かせてスーツの男性はあなたに問います。
「いま、新しいから揚げを開発中なんです。どっちが美味しいですか?」

あなたはAとB、どちらが美味しいと「答える」んでしょうか。
それともAかB、どちらかを「選ぶ」のでしょうか。

pict by IkkoTakashima

あくまで個人的ではありますが「95%のお客様がおいしい!と“選んだ”から揚げ!」が表現としては適切でしょう。
答えた、ではなく「選んだ」。こちらであればなにかとの比較である、と暗に示すことができますし、当初の5%のネガティブ評価の問題も解消されます。完全なる言葉の罠です。

最初に広告を見て感じた違和感、もしかすると何パーセントかはこういった言葉の用量も問題も隠れているのかもしれません。
実はこれもマーケティングなんだぜ、と言わりゃあ相手が一枚上。感服いたします。

③総括

今回の「95%のお客様がおいしい!と答えたから揚げ!」問題、言葉の機能性によってネガティブが発生してしまい、また同時に言葉の機能性によってそのネガティブは回避できる、ということがわかりました。

全体の総括としてはさっきから俺はなに言ってんだろう、です。図まで作って。別に暇なわけでもないし、タトゥー入れたばっかで指も痛いのに。
自分でもなにいってんのかわかりません。ついつい熱が上がってしまいました。

来る日も来る日も、段ボールを解体しては捨てて、解体しては捨てて。ふと我に返ってコレなんなんだっけ、と部屋の隅に積まれたドラムスティックの束。

それもそう、ここ最近ライブをやりまくっています。
渋谷でやって専門学校でやって、今度はホールでやって。陸路で向かったツアー福岡と名古屋。
仙台に行ってはまた名古屋へ戻り、下北沢の地下室での共闘。都度都度折れては発注し、割れては発注し。それほどにご用立ていただけている、と思うとありがたい限りです。

遠征時の車中はたいてい音楽を聴くか、映画を観るか、で夏もようやく終えAmerican Footballが染みる季節になりました。

アメリカン・フットボール(英: American Football)は、アメリカ・イリノイ州アーバナ出身のロックバンド。作品の題名は全てセルフタイトルとして発表されている。

https://ja.wikipedia.org/wiki

2016年作品のアルバムが特にお気に入りで、いつも三曲目の"Home Is Where the Haunt Is"から始めて最後までいってアルバムの頭に戻る。

奇しくも一曲目が"Where Are We Now?"というタイトルで、二度目の名古屋から帰京時にまさに「俺いまどこにおんねん」と。自分がどこにいるか分からなくなるのはツアーバンドあるあるだそうです。

極めつけは11/10の22時。四本目のビールを空けたころにスマホの着信が鳴る。電話口の向こうは慌てた様子で、なんでも所属の後輩バンドの体調が優れず、代打で出演できないか、という打診でした。
ふむふむ、それは仕方ないな、でいつなの?明日か。明日!?早朝六時半に都内事務所で集合、空路で後輩たちを救いに四国まで向かうのだと。

楽器を積んだカートで羽田空港の構内を駆け抜ける一同。ケースに貼られたバンドロゴも相まってさぞかし滑稽な光景でしたでしょう。

恥も外聞もなし。ということで救ってきました。

「凛々しくも端正なボーイバンドが来高!」と思いきや、現れたのはやたら快活なフッ軽・中堅四人組。

がっかりさせてしまっていたら申し訳ありません、がしかし。楽しませる気概はマックスお届けいたしました。楽しんでいただけたのなら是幸いです。

ヤバT一同とは一年ほど前に共演させていただいた以来。結成10周年もお祝いできてよかった。
車内で気絶していたらもうそこはいつもの東京。面白い生活だ。

ということで、ここ一か月ほどライブが立て込んでおりました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。各所で差し入れなどもいただき、感謝しております。

どちらかと言えばインドア派なので特別な用事がないと外出しませんし、ましてや東京都外なんてもってのほか。
こういったライブのおかげで各地方都市に出向いて思い出を作ったり、個性が滲み出た街並みに感激したりできています。間違いなく、ご来場いただいてる皆さんに僕は楽しませてもらっている。

好きにタトゥーを入れてなりたい自分になって、みんなに笑かしてもらって。こんな都合のいい人生あっていいのかしら、と若干の後ろめたさを打ち消すがごとく、毎度フルパワーでバキバキとスティックを叩き折っています。

いつも応援ありがとうございます。まだまだ闘いましょう。

以上となります。それでは引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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