所内は13時間、路上12時間

平素よりお世話になっております。高島です。

「ねぇ、今度の金曜日バイトしない？
人間と”ブツ”を関東近郊まで届けてもらうだけのカンタンな内容なんだけど。」

後輩にそう電話入れたのが深夜の二時。
BGMは舐達麻、GREEN ASSASSIN DOLLARのビートが冷たく響く。

『日程、空いてますよ。ちなみに何運ぶんすか？

……ヤバいモノじゃないっすよね？』

LINE通話はどこで漏れるかわからないから迂闊なことは言えないし、
口を滑らせててビビらせてもうまく事が運ばない。

いくばくか緊張が走る。今回は絶対に失敗できないのだ。

「大丈夫大丈夫、来れば分かるから。じゃあ当日ね。」

それだけ残して電話を切った。

金曜日。この季節は朝が冷える。
用意したのはホンダのフリード。ファミリーカーであるためどこを走っても怪しまれることはないし、なによりモノがたくさん載る。

全身黒ずくめの俺と、ジャージ姿の後輩くん。