死と生
最近、大事な従兄弟が亡くなった。
いつも通りの朝だった。一階に降りた時に親から伝えられた訃報は、あまり突然で、僕の脳は思考停止した。
僕よりも若い彼が死ぬ理由が分からなかった。人は理解ができないことに直面したとき、本当に脳が停止する。何も考えられず、ただただ押し寄せてくる悲しみと寂しさを感じるしかなかった。
2ヶ月以上経った今も、彼の死の原因は分かっていない。そんな彼の死が、僕に教えてくれたこと、僕に感じさせたことを、ここに吐き出してみようと思う。
死に様に、生き様を見る
告別式での彼は、ただただ眠っているように見えた。それも心地よく寝ている感じ。彼を呼ぶ声に反応はしないけど、普通に寝ているように見えた。
人の数だけ、生き物の数だけ、そして生き方の数だけ、死に方もあるんだと思う。
彼の死に方は、とても偉大な死に方だった。彼の姿を一眼見ようと大勢の人たちが集まっていた。ヤンチャな人も、大人しそうな人も、優しそうな人も、男の子も、女の子も。色んな人たちが集まってくれた。告別式の参列者たちが、彼の優しくて温かな人柄を表していたと思う。
死に様に、生き様が見える。その言葉を、そのまま見せつけられたと思う。
死と生について
"Death and life. And death and life. Right next door to each other. There's like, there's a hair between them."
- from Elizabethtown (film)
彼の告別式は、これまでの人生で最も死に近づいた瞬間だった。死というものを身近に感じた時、生がはっきりと見えるような気がした。
死んでいった彼とは、年に3•4回会う仲だった。祖父母の家に行くと、毎回会いに来てくれたものだった。僕とは年が少し離れていて、小さい頃から可愛がっていた。今にもイタズラしそうなヤンチャな笑顔を今でも覚えている。
年に数回しか会わないというのは、僕の日常に彼はいないといなかったということになる。僕らはお互いを思いやってはいたものの、普段から連絡を取り合うような仲でもなかった。
それでも、僕らの関係はずっと続くものだと、そう思っていた。「こっちに遊びにおいでよ。いつでも案内するよ!」会うたびにそんなことを言っていたのに、一度もちゃんと誘うことはしなかった。きっと、彼も僕も、いつでも行ける、いつでも会える、そんな風に考えていたんだと思う。
今でも、帰省すれば、また彼に会えるような気がしてしまう。彼がこの世界にいるような気がしてしまう。彼が生きているような気がしてしまう。僕の日常にいなかったからこそ、僕には彼の死の実感がない。そのことに、どこかホッとしている自分と、悲しく寂しい自分がいる。
曖昧な記憶だけれど、年間の死者数でもって考えて見れば、1日に数千人くらいの人が日本で亡くなっているとか、いないとか、そんなことを聞いたことがある。それだけ沢山の命と、その命と生きた大勢の家族や友人が、毎日死と直面している。彼らの中で、どれだけの人が死と出会う準備ができていただろうか。心構えだけでも、用意があった人がいるのだろうか。
全く予期せぬ死と直面したからこそ、僕の日常に対する考え方は大きく変わった。今の僕は、生きることはおみくじを引くことのようにも感じる。いつ「死」と書かれたおみくじが出てくるかは分からない。「死」を望んで引いているのではないのだけど、僕たちは、毎日そのおみくじを無意識に引いているんだ。そのおみくじの結果、僕たちは今、息をしている。
ありきたりな言葉に聞こえてしまうかも知れないけれど、「今を生きろ。」「今を無駄にするな。」「命を燃やせ。」そんな風に、彼に言われているような気がするんだ。
僕の可愛い従兄弟は、彼自身の死に方で、僕に最高の生き方を教えてくれたと思う。自分の命も、大事な人たちの命も、目の前の人の命も、いつ終わりが来るかは分からない。分からないからこそ、今を大事にしたい、そう思う。
彼のような、偉大な生き方と死に方ができるかは分からないけど、彼が教えてくれたことを胸に、僕の人生を、僕の生き方で、情熱を持って、一生懸命生きていきたいと思う。
彼に向けて書き始めたつもりはなかったけど、今の気持ちをそのままここに。
愛と感謝を込めて。
追記(2021/3/27)
Kolderさんというfilm makerのYoutube作品を見た。彼は兄を事故で亡くして、この動画の作成をしたらしい。この作品を公開したのが、彼の兄の死去から5年後。僕がこの動画を見つけたのは、ちょうど僕の従兄弟が亡くなって、5ヶ月と1日目だった。過ぎた時間は違えど、感じる思いは等しくて、動画を見ながら従兄弟のことを想った。
動画の中で、Kolderさんはメッセージを残している。兄の死を受け、彼が導き出した答えを、これを読むあなたにも共有したいと思う。
I kept chasing my dreams, followed what deeply made me tick because if there's one thing I've learned on my time here on earth, it's that we shouldn't ask what the world needs. Ask what makes you come alive. Because what the world needs the most, is more people who come alive.
It took death, for me truly embrace life.
彼のこのメッセージを、僕も大事にしたいと思う。
(彼の動画は撮影、編集、構図、音楽、アニメーション、演出、あらゆる観点で素晴らしいので、ぜひ見てみて欲しい)
動画はこちら
Hey Tim - The Story of my Life.
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