「雪道を走る」論文が出ましたよ.
以前,「ネガティブリザルト.」というタイトルで記事にさせてもらったデータが,「北海道体育学研究」に掲載された.Note記事掲載時,統計処理方法が間違っているところが見つかり,少し解析しなおして執筆.査読者からは厳しめの指摘を頂いた部分はあったものの,無事査読通過.大学の教員職から離れてから自力で取ったデータとしては,初めての査読付き論文なので,小さな地方誌ではあっても充実感は感じているところ.それに,論文としてまとめたデータを「誰に貢献したいか」ということを考えると,雑誌選択はこれでよかったと考えている.
論文の内容は,積雪地における大学生の非エリート競技者において,1月~4月末までの走行距離(RD)と走行距離と強度の積とした指標(論文中ではランニングポイント:RP)を集計したもの.その結果,冬期間(=積雪期:1~3月)のRDが4月末の5000m記録(正確に言うと前年度の最高タイム達成率)と負の相関が認められた(冬期間に距離を踏んでいるほどタイムが悪い).また,冬期間におけるRPについても,同じく4月末の5000m記録と負の相関(冬期間における距離×強度の総量が多いほどタイムが悪い).しかし,4月のRDとは5000m記録は負の相関傾向(4月の走行距離が多いとタイムが悪い),RPをRDで除した強度の指標は5000m記録と正の相関(4月の走行速度が速いほどタイムが良い)が認められた.要約すると,「冬期間に走り込んでも4月末には記録が出ない」,「積雪後も距離よりも強度(速度)が重要」ということになる.
積雪地でトレーニングを行う選手に貢献できるデータを,ということで解析してみたんだけど,場合によっては「冬は走らなくてもいい?」という誤解を招いてしまいかねない.論文には書けない憶測に近い考察をここで吐き出しておこうと思う.
1.そもそも走ってなさ過ぎ(論文にも書いたけど)
対象となる選手の1~2月の走行距離は,平均で60km弱.3月で75kmくらい,4月は85kmくらい.あまりにも走っていなくて変な相関が捉えられた?という可能性もある.リディアードに叱られるよ,この距離じゃ・・・
2.「採りたいデータ」の選手が対象にならず
5000mの記録として評価した競技会が,1~2週ズレてしまうと同様に分析できなくなってしまう.そこで,分析・評価対象とする記録会を4月30日もしくは5月2日の競技会における5000m記録,と限定した.ところが,分析したい選手がその時期の大会で5000mに出おらず・・・1500mに出たり,1~2週ズレた時期に競技会に出ていたり.正直なところ,「練習デキてるなぁ~」の選手は分析対象から外れてしまった.「やってるけどまあぼちぼちかな」の選手が残ってしまった印象.
3.大学生対象だからこうなった感
「まあぼちぼち」の練習でも,大学生だと競技歴もそれなりになっていて,最大酸素摂取量についてはある程度天井になっていると想像される.測定していないので憶測ではあるけど,先行研究から,また練習での実感からもそこの改善は結構きついと考えられる.ただ,成長期の中高生や,最大酸素摂取量に伸びしろのあるいわゆる市民ランナーに関しては,まだ伸びる要素があるので,走行距離を延ばす意義はある気がする.とはいえ,最大酸素摂取量を伸ばすには「低負荷高容量」よりも「高負荷低容量」なんだけど・・・
と,いろいろ言いたいことはあるんだけども,走行距離至上主義にある程度異議を唱えたかった,という気持ちはある.積雪地で雪道を走らずに練習を継続することは難しいから,走ることそのものは続けるしかないし,このデータだけを見て「雪道で距離踏むべきではない」というのは拡大解釈過ぎると思う.ただ,積雪地域では走練習と並行して,「雪上走」のデメリットを埋めるトレーニングが必要だと思う.
「それは何なんだ?」と問われると・・・探っている途中です.
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