アサナロジー/まえがき
ヴァイクンタヨガ・アサナロジー /まえがき
– 幾何学的秩序に従い構築された –
まえがき
自由奔放に映るヨガであるが、その実のところは型であり、秩序立てられた規律である。その事は、西洋やインドの古典音楽やクラッシックバレエと同じく、謂わば、枠内に於いての表現なのであり、逆にそのことは、枠を設定しているからこそ、魂による自由な振る舞いが可能となるのである。
また、ヨガは芸術と同じく、もとい、ヨガは芸術でもあり、真実を追い求める自己探求者であり、その資質として、感受性や想像力、洞察力、集中力、知性、研究心、冒険心、修練、卓越した技術などが不可欠であり、
その枠組みの中で、型から入り熟練し型から出るなら良いのであるが、付け焼き刃の型無き型は型無しで、とどのつまり行き詰まるのである。
なぜならば、ヨガとは修練に積む修練に折り重なった、卓越した技術の上に成り立つ神技なのであるのだから。
さて、ヨガの根本経典である、ヨガスートラに於いて、著者である聖パタンジャリはヨガの修練方法を、アシュタンガと名付け、八つのセクションに分けて規定したのである。
そのことこそ、ヨガとは型であり、秩序立てられた規律ということの裏付けであり、そのことを示唆しているのである。
そして、アサナ修練とは、八つに分けられたアシュタンガの枠組の3番目のセクションに位置付けられているのである。
しかしながら、現代に於いて、そのアサナという枠組みの中で行われているものは、非常に残念なことに実に無秩序なのである。
そのことは、歴史的考察から観た、失われてきたアサナ発展の時代や、その後の現代においての世界的で急速なヨガの発展と、それに付随する講師養成講座の低レベル化、ヨガインストラクターの技術力の低さ。ということなど様々な問題が浮き彫りになっており、
その、秩序無きアサナの世界を、分析、分類し秩序立て、4階層に分けて規律立でた形で、
『坂東イッキのヴァイクンタヨガアサナロジー(アサナ学)』として文章にまとめたものをシリーズ化し、みなさまにお伝えしようと私は考えているのである。
坂東イッキのヴァイクンタヨガアサナロジー(アサナ学)の枠組みは、以下の4つの要素を主題としているのである。
一つ目の階層の主題として、現代ヨガは運動療法の側面を持つアサナ主体のヨガであることが挙げられる。そして、それは運動である以上、他の運動と同様に、必ず怪我が付き物であり。そのため、アサナの枠組みの中で、怪我を可能な限り無くすための規定を設けることが必要であり、そのことを順序立て規律として明らかに示すということ。
二つ目の階層の主題として、アサナは、有機体である人体を用いて構築される幾何学的な立体図形であるということ。それゆえに、アサナは「Vital / 生命力溢れた(ヴァイタル)」な要素を備えている必要があるということ。そのためには、プラナ(生命エネルギー)の取り扱いに熟達し、ポーズにプラナを纏わせる必要があり、その様なアサナの在り方について明らかに示すということ。
三つ目の階層の主題として、ヨガスートラに基づいた修練であるということから、当然ながら、アサナとは自己探求の道であることが求められるということ。そして、一つ目の主題であるケガが無く美しか正しい、アライメント通りのポーズや、二つ目の主題であるプラナを惑わせたポーズを取るだけでは、単なるエクササイズであり、それはアサナでは無い。自己探求の道上に在るアサナの在り方を明瞭に示すということ。
四つ目の階層の主題として、アサナはヨガスートラの枠組みの中に規定されているのではあるが、しかしながら、ヒンドウ教と仏教という両宗教のタントラ思想(密教)を媒体として、アサナは発展を遂げて来た歴史を持ち、教義の中に於いては『ハタヨガの道はヨガスートラに続く』とされている経典の類も多いことから、そのタントラの中核思想をアサナは継承していることは必至であり、タントラの印であるアサナの在り方を明確に示すということ。(自身の欲とエゴを煽り、エゴを満たす目的とした修練、所謂、左道的なものではなく、左道、その事は単なる方便(例え)でしか無く、その裏に隠されたタントラの本質を叡智の光を当て読み取り、それを継承したものである。という意味なのである)
以上の4つの要素を基に、カオスで無秩序な、現代ヨガにおけるアサナの世界を整理し、規律正しい体系として再構築することで、アサナの叡智を明らかにし、秩序ある世界を目指したいと考えているのである。このことは、28年間、ヨガを行じて来た私の義務であり、夢でも在るのである。
この Asanalogy シリーズは、ヨガを始めたい方や既にヨガをされている方々、全ての Yoga lovers を対象としており、アサナというものの本質を理解して頂ける良き機会となる事を望んでいるのである。
アサナというものを考察していくに於いて、まずは、その成り立ちや歴史的背景を次回はお伝えしたいと考えており、今後のシリーズ展開を、みなさまにはお楽しみにしていただきたいのである。
Om
坂東イッキ