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ジャズと私(9)YMOとフュージョン
【約1800字/4.5分で読めます】
私の音楽遍歴では「純性のジャズ」に絞ると、大したことが書けません。
なぜならば、王道のジャズを聴いた数がまだまだ少ないからです。
しかし、ジャズから派生した「フュージョン」を含めると、もう少し話題が提供できるでしょう。
フュージョン
'60年代後半~'70年代初頭にジャズから派生したジャンル。
ジャズにロック、ラテン音楽、電子音楽の要素などを取り入れた音楽。
マイルス・デイヴィスのアルバム『In A Silent Way』('67)、『Bitches Brew』('70)がその始祖とされる。
というのも、私が10代の頃から好きだった YMO は、デビュー当初、レコード会社もどういうジャンルに当てはめていいかわからず、フュージョン系のライブに出演していたんですよね(当時「テクノ」というジャンルはなかった)。
そもそも、年代的に YMO の三人は、フュージョンに少なからず影響を受けているでしょう。
細野さんで言えば、ティン・パン・アレーの頃、幸宏さんで言えば、サディスティックスの頃は、それに近いサウンドですし、YMO も1枚目のアルバムは、やはりフュージョンっぽい感じもあります。
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ティン・パン・アレー('75)
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YMO('78)
ティン・パン・アレー
細野晴臣が、はっぴいえんどの次に立ちあげたバンド。
'73~'77年頃まで活動。メンバーには鈴木茂、林立夫、松任谷正隆がいた。
荒井由実(現・松任谷由美)、雪村いずみ、いしだあゆみなどのバッキングやプロデュースも務めた。
坂本龍一は、ソロデビュー作『千のナイフ』を発表したのが、フュージョン系のレーベル「ベター・デイズ」でした。
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『千のナイフ』は、YMO の1作目に先行して発表された作品で、もちろんテクノっぽい感じは強いです(特に、当時の坂本が好んで聴いていたジャーマン・ロックに通じるサウンド)。
しかし、純粋に音の質感だけを聴くと、ジャズのそれに近い感じがあります。
さらに、このアルバムに参加していたギタリスト・渡辺香津美は、同じくベター・デイズから作品を発表していたレーベルメイトでもありました。
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そんなところから YMO の1回目のワールドツアーにも彼が抜擢され、その頃の YMO のライブは一段とフュージョン色が高まることになったんですよね。
坂本・渡辺のコンビは、「キリン」というユニットも結成し、それがのちに「カクトウギセッション」というバンドにもつながっていきます。
カクトウギセッションには、YMO のメンバーである細野・高橋に加え、矢野顕子、小原礼(元・サディスティックス)、鈴木茂(元・はっぴいえんど、ティン・パン・アレー)、大村憲司なども参加し、文字通り「異種格闘技戦」のようなセッションが繰り広げられることになりました。
坂本の目論見としては、フュージョン系とロック系のプレイヤーを「格闘技」のように見立て、ぶつけることによって、その化学変化を見たかったのでしょう。
ただ、はっきりとは名言されていませんが、細野さんはこのカクトウギセッションがあまり好きではなかったのではないかという気がします。
というのも、カクトウギセッションは、何度かライブをやっているんですが、後半の方は細野さんがドタキャンするようになったそうなんですね。
おそらく、細野さんはフュージョン的な音から離れたかったのでしょう(たぶん、幸宏さんも乗り気ではなかったはず)。
こういうボタンのかけ違いというか、それぞれの思惑の違いが、YMO における細野・坂本の確執にもつながっていくのですが、それはまた別の話ですね。
カクトウギセッションは、『サマー・ナーヴス』というアルバムを1枚だけ残していて、これがまた名盤でした(ここもやはり、細野さんは演奏には不参加で、楽曲提供のみ)。
YMO関連、坂本龍一関連の作品では、もっともフュージョン色が強い作品で、私自身は、19~20歳くらいの頃に散々、聴き込んだアルバムです。
シンセは使いつつも、テクノ的なアプローチではなく、フュージョン寄りの音になっているんですよね。また、レゲエやファンクの要素も強いですね。
ほぼテクノにしか興味がなかった当時の私が、このアルバムを聴き込んだ後には、ウェザー・リポートやボブ・マーリーも聴くようになりました。
(続く)
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