
書籍レビュー『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』原田将嗣(2022)まずは言葉から変えてみる
※2500字以上の記事です。
お時間のある時に
お付き合いいただけると嬉しいです。
「慣れ合い」とは違う「健全な意見の衝突」
心理的安全性とは、
「チームの中で対人関係における
リスクをとっても大丈夫だ、
というチームメンバーに
共有される信念のこと」
つまり、チーム内で、
気兼ねすることなく、
意見を言い合えることです。
このように説明すると、
「慣れあい」のような
印象を抱く方も
いるかもしれませんが、
実際には、
そういうことではありません。
むしろ、正直に
ものを言い合える分、
単なる上からの押し付けより
厳しい環境とも言えるでしょう。
本当に心理的安全性がある
チームであれば、意見が対立しても、
険悪なムードに
なることはありません。
なんせ、そのくらいのことで、
険悪になるのであれば、
それは心理的安全性が低い
と言わざるを得ないからです。
心理的安全性を保つには、
お互いに相手の意見を尊重し、
その上で、意見の違いを
照らし合わせます。
そうすることによって、
より多くの人にとって、
望ましい結果に結び付く、
新しい解答を得ることができるのです。
小規模からはじめる心理的安全性
「心理的安全性」については、
以前も他の記事で紹介してきました。
しかし、この概念は、
実感として、
おもに職場で立場が上の方が
実践できないと、
うまくいかないことが多いです。
いくら下の者が
「心理的安全性、心理的安全性」
と思ったところで、
上の立場の方が、
その空気をぶち壊してしまう
ようなことがあれば、
心理的安全性は成り立ちません。
なぜならば、このような雰囲気は、
一人が作るものではなく、
みんなで作るものだからです。
そこで、本書では、
私のように、立場が上でなくとも、
取り入れやすい行動が書かれています。
まず、チーム全体ではなく、
もっと小規模の人数で、
「心理的安全性」を共有するのです。
そして、その小グループの中で、
実践していけば、
その輪は職場全体に
広がっていくでしょう。
これは取り入れやすいやり方
だと思いました。
私も上の人を捕まえて、
いきなり心理的安全性のことを
訴える勇気はありません。
ですが、チーム内でも、
気兼ねなく話せる方は、
数人います。
そういう人たちと協力し合って、
本書に書かれているような
心理的安全性を高める行動を
実践していくのです。
それが成果に結びついたならば、
会社としても、無視することは
できないでしょう。
そして、心理的安全性を
高めることができれば、
成果に結びつく可能性も
高まります。
なぜならば、今の時代は、
先行きがものすごく
不安定な時代だからです。
昨日まで正解だったことが、
今日も正解とは限らないほど、
世の中は急激な変化を見せています。
そういう時代にあっては、
一人の強力なリーダーが
チームを引っ張っていくよりも、
チーム全員でアイディアを出し合って、
より正解に近い答えを
導き出す必要があるんですね。
そのためにも、メンバー全員が、
思っていることを正直に
打ち明け合える空気が必要なんです。
まずは「言葉」を変えてみる
とはいえ、長年、しみついてきた
習慣を変えるのは、
なかなか大変なことです。
特にキャリアが長ければ長いほど、
経験が邪魔をする
ということはあるでしょう。
「心理的安全性と言われても、
何から手を付けていいか
わからない」
というのが、誰もが
思うところではないでしょうか。
私にもそんなところがありました。
概念については理解しても、
実践が伴わなければ、
意味がありませんよね。
本書では、そういった点も踏まえ、
「言葉」に着目して、
心理的安全性が解説されています。
例えば、みなさんも職場で、
こんな言葉を使ったことは
ないでしょうか。
「どうして報告しなかったんだ!」
この言葉は、心理的安全性を
踏まえると NG です。
他にも本書では、
こんな言葉が NGワードとして、
紹介されています。
「まずは自分で考えて!」
「前にも言ったよね」
「会社のルールはこれだから」
どの言葉も相手を威圧する
強力なパワーを持った言葉です。
部下を委縮させたいなら、
これらの NGワードを連発すれば、
効果てきめんでしょうね。
相手はたちまち自分の思うことを
言えなくなります。
あなたの指示することしかできない、
ロボットの出来上がりです。
しかし、心理的安全性を保ち、
メンバーの力を引き出したい
と思うならば、
日常で使う言葉の一つひとつに
気を配る必要があります。
心理的安全性では、
「きっかけ→行動→みかえり」
といったフレームワークが
よく出てくるんですよね。
つまり、「きっかけ」を与え、
その「行動」が実践され、
「みかえり」がなければ、
人はこのサイクルを
決して繰り返さないんです。
ところがこのことが
わかっていないリーダーは、
ミスの報告をした部下を
みんなの前でどやしつけます。
そうすると、どうなるでしょうか。
叱られた部下は、
あなたに相談や報告を
しにくくなるんです。
下手をすると、
会社に大損害をもたらすような
ミスを隠蔽してしまうことすら
あるかもしれません。
しかも、その影響は
叱られた部下に限りません。
周りでそれを見ていた人たちも、
あなたに相談や報告を
避けるようになるかもしれないのです。
なぜ、こうなったのでしょう。
あなたが、みんなの前で、
部下をどやしつけたからです。
心理的安全性、
つまり、お互いにものを言えるような
関係を意識するならば、
悪い報告であっても、
正直に打ち明けてくれた、
その「行動」に対して、
「みかえり」を与えるべきです。
私はこの本に書いてあることが
大事だと思ったので、
同じ場面に遭遇したら、
こう言います。
「言いにくいことを
報告してくれてありがとう。
一緒にどうするか考えようか」
このように、失敗したこととは別に、
正直に話してくれた
「行動」に対して、
敬意を払うべきなんです。
そうすれば、相手は、
どんなに小さな問題でも、
あなたを頼りにして、
いち早く報告して
くれるかもしれません。
情報が早く伝われば、
いろんな対処ができます。
さらに、その情報を
チーム全体で共有できれば、
アイディアも
たくさん出てくるでしょう。
先行きが不安定な今の時代に
求められているのは、
こういったチームの総合力です。
本書に書かれている
言葉を実生活に取り入れて、
あなたも心理的安全性のある
チームを作ってみませんか。
【書籍情報】
発行年:2022年
著者:原田将嗣
監修:石井遼介
出版社:飛鳥新社
【著者について】
はらだ・まさし。
株式会社ZENTech
シニアコンサルタント。
本書が初の著書。
【心理的安全性に関する書籍】
【関連記事】
いいなと思ったら応援しよう!
