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書籍レビュー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆(2024)労働と読書の関係を歴史からひもとく

【約1500字/4分で読めます】

【こんな人にオススメ】
・最近、本を読んでいない
・効率重視
・いつも忙しい

【こんな時にオススメ】
・スキマ時間
・人生に悩んでいる
・視野を広げたい

おもしろくて
いっきに読んでしまった!

著者は子どもの頃から「本が大好き」で、はじめて就職が決まった時には「好きな本がたくさん買える」と喜んだそうです。

しかし、実際に働いてみると、全然、本が読めなくなってしまいました。

一番の理由は「時間がない」ことです。

残業もそれなりにあり、たまに定時で終われる日があるかと思えば、同僚との付き合いなどもあって、自分の時間が持てません。

休日になると、今度は平日の疲れを持ち越していて、本を読む気力もなかったそうです。

結局、3年半でその会社は辞めたそうですが、会社を辞めると、再び大好きな読書ができるようになりました。

本書では、そんな経験を持つ著者が「労働」「読書」の関係を読み解いています。

第2回 書店員が選ぶ
ノンフィクション大賞2024 受賞

今年になってから「新書大賞(中央公論社が主催する賞)」も受賞しています。

先日、私が購入した本書の奥付(発行元などが記されている巻末のページ)を見ると、「9刷」となっています。

受賞の効果もあるかもしれませんが、この本がいかに売れているかが、わかるところです(2024年4月に1刷、10月に9刷となっている)。

思っている以上に「働きながら本が読めない」「読みたくても読めない」という人が多いのでしょうね。

私も昨年、書店でこの本を見かけた時は、自然と目に留まりました。

しかし、私自身は「働きながら本が読めている方」なので、その時は「機会があれば読みたい」と思うくらいで、購入するまでにはいたらなかったのです。

なぜ、私がこの本を買ったのかと言えば、衝動買いに近い形ではあったんですよね。

先日購入した『Casa BURUTUS』にも、著者が登場しており、その記事を読んで著者に妙な親近感を覚えまして(「あの時に見た本の人だ!」という感じ)、「やっぱり、あの本、読んでみよう」となったわけです。

『Casa BRUTUS』2025年3月号
「美しい本の森へ」
図書館、書店、
ブックカフェ・ホテルなどの特集

「なぜ働いていると本が
読めなくなるのか」

疑問を探るために、本書では「歴史」をひも解いて、「労働」と「読書」の関係を明らかにしています。

著者が本当に伝えたい「結論」は、最後の10章に書いてあり、1~9章は、明治~2010年代までの歴史について綴られているんですよね。

ですから、なかなか結論にたどり着かないことに、じれったさを感じる読者も多いでしょう。

しかし、この本は最終章だけ読んでも、多くの方にはピンとこないところがあると思います。

それは「労働」と「読書」の「歴史」を知らないからです。

それを知ってこそ、著者の主張が腑に落ちるんですよね。

これこそが読書の醍醐味だと思います。

あっさり「結論」が手に入ることは、ネットで検索すればいいんです。

新書にしては厚めの300ページ近い本ですが、おもしろくて、あっという間に読めてしまいます。

いろいろと書きたいことはありますが、収拾がつかなくなりそうなので、別の記事に改めます。


【作品情報】
発行年:2024年
著者:三宅香帆
出版社:集英社

【著者について】
'94年生まれ。高知県出身。文芸評論家。
'17年、『人生を狂わす名著50』で文芸家としてデビュー。

【同じ著者の作品】

『名場面でわかる 刺さる小説の技術』
(2023)
『推しの素晴らしさを語りたいのに
「やばい!」しかでてこない』
(2023)
『娘が母を殺すには?』
(2024)

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いっき82
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