映像で読み解く(5)CM『レナウン』(1985)
色褪せないキャッチーなメロディー
今回、CM を取り上げるにあたって、
アパレルメーカー、
レナウンの一連の CM を観てみました。
残念ながらレナウンは
2020年に破綻してしまいましたが、
その CM は、CM そのものの切り口、
斬新な画面構成から
カラフルな配色にいたるまで、
初期(‘60年代)から他社と
一線を画する雰囲気がありました。
‘70年代の海外の俳優や
高倉健を起用した映画風のCMも
捨てがたかったのですが、
今回は‘85年に制作された
企業イメージ CM をご紹介しましょう。
まずは、使用されている音楽についてです。
これは‘60年代から同社の CM で
使用されていた
『ワンサカ娘』という曲です。
小林亜星が作詞・作曲を手掛け、
初代は、かまやつひろしが
歌っていたようです。
この曲は時代によって
アレンジを変えつつ、
‘90年代まで使われていました。
今回ご紹介する CM では、
いかにも‘80年代らしい
打ち込みの電子音を
使ったものになっています。
キャッチーなメロディーは
時代が変わっても色褪せることなく、
様々なアレンジに対応していますね。
手間暇かけた豪華なCM
夜の街のセットを舞台に
カラフルな衣装に身を包んだ女性と
シックなスーツのネコの着ぐるみが
ダンスも含めた演技を披露しています。
実写にアニメーションを
ふんだんに盛り込んだ内容で、
演者が身に付けている被り物や小道具も
精巧に作られている印象です。
今の時代では考えられないほど、
お金のかかっていそうな映像で、
景気のいい時代ならではの CM ですね。
女性が流れ星を手に取ったり、
途中で現れる土星のキャラクターの
頭のわっかをこっそり盗んだり、
ユニークな内容になっています。
実写とアニメーションの調和
なんといってもこの CM の魅力は
ファンタジックな世界観、
キャラクター、衣装、
個性的なセットにあると思います。
それらの個性的な要素を
一つのまとまった世界観にしているのは、
配色と平面っぽい画面構成に
あるのではないでしょうか。
アニメーションと実写の部分の配色が
夜空の背景に映える
ビビットな色調で統一されています。
また、実写部分の人物はよく見ると、
常に、カメラに体の正面を向けるような
姿勢になっているんですよね。
例えば、土星のキャラクターが
建物の中に入っていた隙に
壁に立てかけてあった光の輪を
女性がこっそり盗むシーンがあります。
建物の影に隠れていた女性は、
普通に登場するのではなく、
画面の中に階層(レイヤー)があるような
動きになっていますね。
こういった部分から、このCMは
「飽くまでも平面上の
絵本のような画面を意識して
作られていたのではないか」
と思うのです。
逆に、アニメーションの方は
奥行きを意識した
立体的な動きのあるものになっていますが、
流石に今のアニメーションとは違って、
実写なみの立体感は出ていません。
ですから、この映像の
実写とアニメーションの違和感のなさは、
実写は平面に、
アニメは立体に近づけるように
作られているからこそ、
成り立っているのではないか、
というのが私なりの分析です。
いろいろと書いてきましたが、
純粋にこの時代ならではの
映像作品として、
楽しい作品ですね。
【作品情報】
1985年公開
制作国:日本
企業:レナウン
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