
書籍レビュー『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』J・ナヴァロ、M・カーリング(2010)大脳辺縁系はウソをつけない
【約2100字/5.5分で読めます】
【こんな人にオススメ】
・人に興味がある
・癖が気になる
・よく騙される
【こんな時にオススメ】
・人間関係がうまくいっていない
・コミュニケーション力を高めたい
・プレゼン力を高めたい

「スパイキャッチャー」
「人間ウソ発見器」の
異名を持つ著者
本書は FBI 捜査官の経験を持つ著者が書いた「しぐさ」からわかる心理学の本です。
もちろん、一つのしぐさからわかることは限られており、前後関係がとても大事だと書かれています。
また、プロである著者の感覚から言っても、人のウソを見抜くのは、並大抵のことではないとのことです。
一つのしぐさから、その人のことを断定してはいけないと、この本でも何度も注意喚起されています。
なぜ、特定のシチュエーションの時に
同じしぐさをしてしまうのか
それはおもに、それらの行動が「大脳辺縁系」からくるものだから、とのことです。
「大脳辺縁系」は、情動や本能をつかさどるので、ごまかすことができません。
例えば、大嫌いな人に対して、心からの満面の笑顔を見せることには、誰にでも抵抗があるでしょう。
それができないのは、まさに「満面の笑顔」が「大脳辺縁系」がもたらしているものだからです。
本書を読んでいて
とても参考になったのは
多くの人は、その人の気持ちを察しようとした時に、「顔」の表情に注目しがちですよね。
しかし、「顔」というのは、身体の中ではもっとも「ウソ」をつきやすいパーツなんだそうです。
著者は「足」と「脚」に注目すると書いています。
実は「足」と「脚」は、ウソが付きにくいパーツで、人間の原始的な性質が多く残っているのです。
例えば、二人の人が話しているのを見かけた時に、一人の足は相手の方に向いているのにも関わらず、もう一人の足が話し相手ではなく、出口の方を向いている場合があるとしましょう。
この場合は、足がソッポを向いている方の人は、なんらかの事情で「話したくない」「話を打ち切りたい」と思っているのです。
もちろん、そういうしぐさがあったからと言って、すぐさまその人が話し相手のことを「嫌っている」とは決めつけられません。
何か他の予定があって、早く出口に向かう必要があるのかもしれません。
あるいは、話し相手のことが「嫌い」なのではなくて、会話の「内容」が、その人にとっては逃げ出したくなるようなものだったのかもしれません。
ただ、その人が「会話」を好ましく思っていないことはわかります。
こういうことが、顔だけではわからない場合があるんですよね。
この他にも、「脚」つながりで言うと、「リラックス」しているか、「緊張」しているかも見分けられると言います。
立っているか、座っているかに限らず、脚を組んでいる時は、「リラックス」している状態です。
もちろん、これも「好き」「嫌い」とは別で、脚の組み方によっては、「自分を守る」ために脚を組む場合もあります。
例えば、お互いに横に並んで話している場合に、相手の方向の脚(左側に相手がいるなら左脚)が前に出ているとしましょう。
この場合は、前に出ている脚の方向に身体が傾くので、横に並んでいる人に寄りかかるような姿勢になります。
これは明らかに、話し相手を信頼してリラックスしている状態です。
しかし、これとは逆に、相手の方向とは逆の脚(左に相手がいるなら、右の脚)が前に出ているとしましょう。
今度は、相手の方向とは逆向きに身体が傾くことになります。
これはリラックスしてはいても、相手のことは信頼していないか、あるいは、意見が対立していて、相手側の方にある脚(相手が左にいるなら左側の脚)で自分を守ろうとしているのです。
私はこの本を読んでから、いろんなところで他人の「脚」と「足」に注目するようになりました。
そうすると、不思議なくらいに、脚を組むしぐさをしている人を多く見かけました。
立っている時でも、座っている時でも、脚を交差させるしぐさをする人は、思っていた以上に多かったんですよね。
それを見て、私は職場で「人に頼みごとをする時」は、「脚」を見るようにしようと思いました。
「脚を組んでいる人」は、それほど忙しくなく、「リラックス」しているかもしれないので、頼みごとの成功率が上がるでしょう。
脚を組みながら、「今、忙しいんで」と言い訳をしてきたら、その人は「ウソ」をついている可能性が高いですね(笑)
【作品情報】
発行年:2010年(文庫版:2012年)
著者:ジョー・ナヴァロ、マーヴィン・カーリンズ
出版社:河出書房新社
【著者について】
ジョー・ナヴァロ
25年にわたり FBI スパイ防止活動特別捜査官を務める。
セント・レオ大学、FBI で非常勤講師を務める。
マーヴィン・カーリンズ
心理学博士。サウス・フロリダ大学で経営管理学・教授を務める。
【ジョー・ナヴァロの著書】

「第一印象」の心理学』
(2011)

「危ない人」の見分け方』
(2015)

「しぐさ」の心理学 解読編』
(2023)
いいなと思ったら応援しよう!
