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映像で読み解く(4)アニメ『トムとジェリー』(1940~1958)

なめらかなアニメーション

アニメ作品の1本目としてご紹介するのは、
言わずと知れた
アメリカの人気カートゥーン
『トムとジェリー』です。

調べるまで知らなかったのですが、
アメリカのカートゥーンにおいて、

‘30年代の時点ではディズニー、
フライシャー・スタジオの2社が圧倒的で、
MGMの『トムとジェリー』は
後発とのことです。

(フライシャー・スタジオ:
 フライシャー兄弟が1921年に設立。
 代表作『ベティ・ブープ』『ポパイ』)

当初、『トムとジェリー』は
MGM の劇場用短編アニメとして制作され、
本編の前の余興として
上映されていました。

その後、制作会社が変遷した後、
テレビアニメ化し、
現在はワーナーブラザースが
版権を持っています。

現在でもアニメ専門チャンネルなどで
再放送がされており、
近年は新作映画も作られました。
(アニメと実写を交えた新作。
 2021年に公開)

今回、私が観たのは、
ハンナ=バーベラのコンビが手掛けた
第1期(1940~1958年)のものです。

トムとジェリーが誕生した
第1作目『上には上がある』を観た
第一印象として感じたのは、

「トムの顔が随分怖いなぁ」
ということです(^^;

初期の頃は、
私の子ども時代(‘80年代)に
テレビで観ていたものと比べると、

若干、絵のタッチが
写実的な印象があります。

しかしながら、
ナンセンスなギャグのセンスは、
初期から変わらずに発揮されおり、

トムに対するジェリーの仕返しに
過激なイタズラも多いです。

それでもかわいい見た目によって
しっかり笑える内容になっています。

アニメーションの動きが
非常になめらかで、

全力疾走で走るトムが、
急ブレーキをかけたように止まる動きは
昨今のアニメでも見られるもので、
その原点を感じさせます。

自由自在なキャラクターの造形

『トムとジェリー』と言えば、
キャラクターが壁に
ぶつかった時に

体がグシャッと潰れたりする
アクションが印象的です。

このようなギミックが登場するのは、
シリーズが始まって
何年か経ってからのことでした。

少なくとも、
今回観たいくつかの作品の中では、

‘40~’42年くらいまでの作品には、
体のフォルムが極端に変化する場面が
なかったような気がします。

壁にぶつかって、
顔からしっぽまでが
折りたたまれるように潰れたり、

凍らされて体がガチガチになったり、

この手のスラップスティックなギャグは
アニメ作品ならではですね。

今観ても斬新なアクションが多く、
未だに色褪せない魅力を感じさせます。

カラフルな爆発シーン

画面全体の明るさに関しては、
流石に古い作品というのもあって、
少し暗めです。

それも欠点とは言えず、
今となっては落ち着いた
風合いとして楽しめます。

そんな中で、
ひと際鮮やかに見えたのが、
爆弾によって、
画面全体が爆発するシーンです。

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爆発シーンの頻度は少なめで、
今回観た約20本の作品の中では、
2回程度でした。

少ないからこそ、
印象に残るのかもしれませんが、

爆発する際のギザギザした衝撃波の
配色が赤、青、黄色とカラフルで、
非常に斬新な見せ方に感じました。

今のアニメで同じシーンを描くなら、
きっと、衝撃波の色は、
赤か黄色で統一するでしょうが、

この頃の『トムとジェリー』の爆発も
意外とリアルなものに見えます。

(単に、現実と見た目が似ている
 ということではなく、
 感覚的なリアルさがあるということ)

他にも、特筆すべき点としては、
このハンナ=バーベラ期の作品は
トムとジェリーにセリフがほぼなく、
映像のみで内容を伝えています。

音楽はクラシカルなものから、
スウィング・ジャズまで、
この作品のために作られた
オリジナルの楽曲です。

音楽とアニメーションのテンポが
ぴったりフィットしていて、
気持ちのいい映像になっていました。

【作品情報】
1940~1958年公開
制作国:アメリカ
監督:ウィリアム・ハンナ、
   ジョセフ・バーベラ
配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー

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いっき82
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