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内燃

【0.エピローグ:始まりの街】 
 大阪の街を二人は歩いている。
 眠そうに目をこする人たちの合間を抜けていく。仕事始めのサラリーマンもいれば、ここで一晩過ごしたと思しき集団もいた。辺りには、薄っすらと朝が立ち込めている。
 その中を二人は歩いている。

 突然、強烈な光が目に飛び込んできた。思わず足を止めて、空を見上げると、ビルに反射した朝陽がスポットライトのように二人を照らしている。あるいは、そう見えただけなのかもしれない。街の眠気まで一緒に溶かしてしまいそうな勢いだ。

 一ノ瀬がふりかえり、何かあったんかと尋ねてきた。何もないと答えた。迎えの車がそこまで来ていた。二人はまた歩く。

 この街も変わらない。
 路上ライブをすることはめっきりなくなってしまった。けれども、この街を歩くといつだって、あの時の記憶が蘇ってくる。俺たちにとってはじまりの街。
 ビルの間を吹き抜ける風が少しくすぐったい。空は青く、吸い込まれてしまうような感覚に陥った。


【1.漫才バンザイ!!】
「漫才バンザイ!!」
 突然、一ノ瀬が叫んだ。通りがかったカップルと足早に歩くサラリーマンがこちらをチラリと見たが、そのまま雑踏へと消えていった。
「どうもありがとうございました!」
 受け取り手のいない虚しい音は、サラリーマンのように街に溶け込んでいった。空の水色は鮮やかさを急速に失い、ビルが辺りに暗い陰を落としていた。
「今日はこの辺にしとこか。」
 そう言って、カンパ用の箱を取り上げた。サクラでいれておいた小銭以外は入っていない。いつものことだった。
 この街のお笑いに対する目は厳しいと感じる。一般人さえも、日常会話でお笑いのセンスが洗練されている。目も肥えている。街中で漫才をしていると、評論家たちに試されていると感じることすらある。
「てか最近なんで最後に『漫才バンザイ!!』って言うねん。そんな漫才あるかい。」
「そら、おれらのモットーやからな。モットーなんていつ言うても損せえへんやろ。最後は漫才バンザイ!!言うたらなんか締まること発見してん。一丁締めみたいなもんや。」
 一ノ瀬とは中学の時に知り合った。もう八年の付き合いになる。俺とは違って、直感でものごとを決めることが多いのは、出会った時から変わっていない。そもそも俺は『漫才バンザイ!!』をモットーにしたつもりなどない。
 一ノ瀬にムッとしたものの、こうなるとどうしようもないこともわかっていた。説得するのを諦めて、商店街の方へ歩き出した。
 週末はなんばの駅前広場で路上ライブをした後、そのまま反省会がてら一杯ひっかけるのが日常だった。まあいつも飲んでいるだけだったのだが。
 居酒屋『はなもと』ののれんをくぐると、大将と数人の客しかいなかった。こじんまりとしたカウンターの席に座り、「とりあえず生で」と言い、ビールを注ぐ大将と談笑し始めた。
「最近、調子はどうなんや。」
「全然ですね。今日も路上で漫才してたんですけど、人間どころか犬すらスルーするくらいで。」
「犬は漫才わからんやろ。でも、絶対売れたろうと思ってます。俺たちが売れたら、この店もすぐ有名なりますよ。」
「そうか、そしたら十年後、このサインなんぼで売れるやろなぁ。」
「いや、大将、売らんといてください。」
「ほな、二人は売れへんってことかぁ。」
「いやいや、俺たちは売れますって。」
「人身売買?一生奴隷か、、」
「そういうことちゃうわ!まあ、俺もお前も事務所の奴隷みたいなもんやけどな、、」
「まあまあそんなこと言わんと。はい、刺身の盛り合わせね。」
 大将は決まって、いかをサービスしてくれる。なぜかを聞くともうサービスしてくれない気がするし、なによりそんな無粋なことはできないので、元気よく「ありがとうございます」と言って頂くことにしていた。
 一ノ瀬が「酒は漫才師のガソリンや!レギュラー満タンで!」と言いながら、二本目の熱燗を頼もうとしたので、もう頃合いだと思った。大将におあいそをお願いし、半ば引きずり出すように一ノ瀬と外に出た。
 居酒屋を出ると、さっきまでのせわしさはすっかりなくなっていた。一週間の煩わしさから解放された煌びやかな街が広がっていた。電飾が眩しい。至るところから笑い声が聞こえてくる。

 大阪ほど無愛想な街はないと思う。
 たしかに、大阪は「義理と人情の街」と言われている。俺たちも例外ではなく、大将のいかはありがたく頂戴している。
 だからといって、誰にでも優しく慈愛の目を向けてくれるわけではない。むしろ、自分の知らない存在に対しては冷やかさすら感じる。交差点を行き交う人々は自分のこと以外気にも止めないほど、視野が狭くなっている。
 「義理と人情の街」という輝かしい看板を掲げているが、その実を伴っていないと感じていた。名もない芸人だけがそう感じているのだろうか?
 そんなことを考えながら、大学生の騒がしい集団を白けた目で眺めていた。

 ひとしきり歩いて、公園に着いた。高いビルも一日の疲れを癒すかのように、静まり返っていた。辺りには人気がない。
 自販機で水を買って、ベンチに腰掛けた。一ノ瀬は半分ほど水を一気に飲み、うなだれてしまった。今日も長くなりそうだ。
 それにしても、俺たちはいつまでこんな生活をしているのだろう。
「俺たちいつまでこんな生活してるんやろな。」
 突然、自分の考えていたことがそのまま耳から聞こえてきたので驚いた。その声の主は相方だった。珍しく酒に潰れていたわけではないようだ。
「この数年間、めちゃくちゃ頑張ってきたはずやのに、成功のせの字も見えへんやんか。厳しい世界やって分かってたつもりやけど、こんなにもかね。俺らがこの街にきた頃はもっと、なんか明るくて視界がパーっと開けてた気がしててんけどな。今は何を追っかけてるんか見失ってる気分やねん。」
 いつになく弱気だ。なにかまずいものでも食ったのだろうか。
「まあ絶対漫才はやめへんけどな。」
「何当たり前のこと言うてんねん。そんな簡単に辞められてもらったら困るからな。それにこのノートに秘策があるから大丈夫や。」

 俺たちは発展途上だ。まだ芽が出ていないことは認める。それでも、自信と情熱があった。何より、成功するだけの自信と見通しがあった。
 おもむろに相方は立ち上がり、語り出した。
「俺たちが世界一面白いことを証明したんねん。漫才は、、漫才で人を笑顔にする。お客さんは俺たちを待ってくれてて、俺たちは笑いを届ける。こうはしてられへん!漫才の練習や!なんでやねん!なんでやねん!なんでやねん……」
「なんでやねん!お前ボケやろ!ツッコミの練習してどないすんねん!」
 これだけ一緒にいるが、一ノ瀬の考えていることはよく分からない。ひとまず本調子にもどったので安心だ。俺は相方と二人でてっぺんをめざす。どんな時でも二人で歩んでいくのだ。

 その日、俺は一人だった。
 高校の同窓会に来ていた。結構な出費なので俺は全く行くつもりはなかった。一ノ瀬がどうしてもと言うので、気乗りはしなかったが、付いていくことにした。そしたら、前日になって風邪で行けないと言い出した。馬鹿は風邪をひかないはずなのに。キャンセル料も勿体無いので、渋々一人で行くことにしたのだった。
 同窓会はホテルで開かれていた。会場に着くと賑やかで眩い世界が広がっていた。テーブルにはバイキングの料理が所狭しと並んでいた。豪華なシャンデリアは思わず目を細めてしまうほどの存在感だった。
 高校卒業以来、同窓会に来るのは初めてだったが、見たことのあるはずの顔がいくつもあった。
 ふらふら歩いていると、何人かに声をかけられたので、無愛想にならないように応えた。そのうち、かつての級友と会ったので、一緒に席に着くことにした。
「花山はまだ漫才続けてるんか。」
「うん。まあ続けてるで。全く無名やけどな。」
 少し言い淀んでしまった。
「はえー。すごいなぁ。俺なんか毎日、家と会社の往復やわ。」
「会社勤めの方がすごいと思うで。そんなんできんわ。」
 仕事の話になると、とりあえず建前でこう答えるようにしていた。それにしても、裏表のない純粋な言葉には、胸がキュッと締め付けられる。
「いやいやいや。花山は実は真面目やからな。俺みたいな事務仕事絶対できるやろ。まあ、一ノ瀬はちょっと厳しいかもせんけど、、、とにかく、夢あるやんか。俺たちはどのみち、会社と家の往復やし、辿り着くのは地獄やからな。」
 「夢あるやんか」という言葉が頭の中で反芻された。本当に夢はあるのだろうか。実は俺たちの方が地獄に向かっているのではないだろうか……。

「お、花山か。久しぶり。」
「海老原。最近何してんの。」
 唐突に海老原が来たので、挨拶もせず気になったことを聞いてしまった。
 海老原は俺たちと文化祭でしのぎを削った漫才コンビ・スマートスーツケースのボケ担当だった。俺や一ノ瀬とは違って、クラスの正統派の人気者だった。漫才を始めたのも文化祭の枠が余ってるから出てくれと言われて出たのが始まりだった。それでも、はじめての漫才で笑いをかっさらっていった。
 スマートスーツケースとバンバンディーゼルは文化祭で結構なお客さんを集めた。
「俺?東京の食品会社で働いててさ。最近残業続きなんだよね。残業自体はいいんだけど、奥さんが怒ってさ。本当に怖いんだよね。あ、去年の八月に結婚しました。報告遅れたけど。」
「海老原すごいな。」
「順風満帆やな。」
 周りにいた友達たちも口々に言う。俺は、無言で運ばれてきた、ムースを口に運んでいた。
「ちょっと、奥さん見せてや。」
「え、これ、白池さんやん。」
「高校時代マドンナと言われてたあの白池さんと!?」
 辺りは衝撃の事実に驚愕した。俺もその時ばかりはさすがに驚きを隠せなかった。
 海老原は周囲の言う通り、絵に描いたようような人生だと感じた。高校時代でさえ、人に取り入って笑いを取るのが得意だった。社会人になった今、会社での人間関係はもちろん上手くいっているのだろう。加えて新婚生活もきっと幸せの絶頂といったところだろう。
 ムースの口触りはとても柔らかく感じた。
「ええなぁ。みんな楽しそうで。海老原は絵に描いたような勝ち組の人生やし、花山は漫才師でガムシャラに夢を追いかけてるし。」
「花山漫才続けてるんか。がんばってな。」
 海老原に応援されたのは単純に嬉しかったので、強くうなずいた。すると、周りのガヤが口々に言い出した。
「ちょ、花山漫才やってや。どんな漫才やってるん。」
「なんかおもろいことゆうてや。」
「俺はツッコミやから、一ノ瀬がおらんとできん。」
「そんな寂しいこと言うなよ。花山がネタ考えてるんやろ。」
 こいつらは、俺たちが積み上げてきたものをタダで見ようとしている。それなら、まだしも批評しようとしている。俺はこういう人種が嫌いだ。自分は笑いをとりにいく度胸もないのに、人にやらざるを得ない状況を作って安全圏から眺めているやつが。そういうやつに限って、人を貶してくる。周りの同調する人も同様だ。同等の覚悟がないやつにわざわざ見せてやる義理はない。
 意地でも見せてやるまい。と思い、断り続けていると、やはり「ノリ悪」という言葉が飛んできた。辺りはとてつもない雰囲気につつまれた。
 シャンデリアは相変わらず煌々と輝いていた。
「まあ、ボケ不在で漫才師におもろいこと言えっていうのも結構無理な話じゃないか。」
「まあそうなんかなぁ。」
 海老原のおかげでピンチは去ったと見えて、胸を撫で下ろした。甘ったるいムースの最後の一口を食べ終えた。なぜこんなにも辛酸を舐めなければならないのだろうか。
 後味の悪い形で、同窓会はお開きとなった。他の人は二次会に行くということで、夜の街に消えていった。俺は行く気にはなれなかった。海老原も妻が待っているということで、帰ることになったが、別々の道だった。
 ぼんやり地下鉄に乗りながら、もし一ノ瀬と一緒に同窓会へ行っていたらどうだっただろうかと考えていた。
 しばらくすると、何かを察したかのように一ノ瀬から連絡が来た。


 同窓会どうやった?俺おらんくて寂しかったんやろ。
 寂しくなるかいな。なにアホなこと言うてんねん。アホの付き添いせんでよかったから羽伸ばせたわ。
 そんなアホアホ言われたらほんまにアホなってまうやないか。
 元々アホやろ。

 そんなアホなやりとりをしていると、現実に戻って来れたような気がした。
 俺たちは性懲りも無くまだ見ぬ景色をめざして、もがき続けるだろう。その行き先はもしかしたら地獄なのかもしれない。けれど、この灰色の街で生きていくには、心を無にするか、何かを追いかけるしかない。この灰色の街を色づける何かを探して。
 そう考えると居ても立っても居られない感じがして、地下鉄の中で秘伝のノートを開き、ネタを考え始めた。


【2.書き潰した願い】
 俺たちは大会を一ヶ月後に控えていた。若手の登竜門の大会で、五年目になる俺たちにとっては、ラストイヤーになる大会だ。まだ、勝負のネタが完成していないので、少し焦りを感じている。それは、花山も同じのようで、とにかくネタ合わせをしようと訴えてくる。切羽詰まっていることは確かだったので、とりあえず集まることにした。

 そういう日は必ず、半額の惣菜を買い、俺の家で集まることになっていた。四畳半のワンルームは一人で暮らすのには便利だが、二人で過ごすには少し狭い。
 基本は俺がネタを書くことになっているが、何も思いつかない時は、今日みたいに一ノ瀬が一緒に書く日もあった。
「とりあえず、設定としては〈同窓会で久しぶりに会って変わってしまった人〉でいこうと思ってるんやけどどう思う?」
「ええんちゃうか。どんな人登場させる?」
「思いついたのはこんな感じかな?」
 ネタ帳を一ノ瀬に渡した。数分の間、真剣に眺めた後、「なんというかパンチが足りんな。」と言った。
「ほな、どんなんがある?」
「せやなあ、」そういって、一ノ瀬はペンをとり、書き始めた。
 数分後、自信満々に「できた!」と言ったので、見てみると、「南米の少数民族に入籍し、独特の民族衣装で登場」であったり、「テレビショッピングのプロになってて、真珠の指輪を売りつけようとしてくる」であったり、一ノ瀬らしい超展開が幾つか並んでいた。
「ええか、一ノ瀬。漫才にも理論ちゅうもんがあるんや。ただガムシャラにボケてたらええってもんやない。まず、設定をきっちり守らなあかん。今回の場合やったら、同窓会やから同窓会に関係のあるもんやないと。その上で、緻密な計算の中でどこで笑いを掻っ攫うかを考えなあかん。であるからして…」
 一ノ瀬には難しかったか。頭がショートしてしまっているようだった。俺自身もちょうど行き詰まりを感じてきたので、ベランダで一服することにした。

 その日は雨が降っていた。そのせいだろうか。全然煙草に火がつかない。何度か試したが、ライターの残りが少なくなっていることに気づいた。何となく意地でもこのライターでつけてやろうと思い、躍起になっていた。
 二、三分の格闘の末、なんとか火をつけ、煙草を吸い始めた。
 大会が一ヶ月後に控えているにも関わらず、ネタがまだできていないのは初めてのことだった。そんな現状に多少なりとも焦りを感じずにはいられなかった。それは一ノ瀬も同じなのだろう。
 最近ようやくオーディションにも受かるようになり、漫才の寄席に参加する機会も、もらえるようになった。しかし、当然勢いのある若手も増えてきて、自分の出られなかった寄席に若手が出ていることもあった。そういうことも重なり、余裕は本当になかった。
 タバコを吸い殻入れに入れると、短くなった吸い殻はジジ…と哀しい音を立てた。

 部屋へ戻ると、一ノ瀬がこの設定ならどうだと言わんばかりに紙を突き出してきた。
「残業で疲れ果てて、ジャコメッティの作品みたいになった人。」
「誰がジャコメッティ分かるねん。それに残業で疲れ過ぎてはセンシティブ過ぎるな。」
 一ノ瀬は愛すべきアホである。丁重に却下して、また二人で机に向かった。そんなこんなで夜はふけていった。

 小鳥のさえずりが新たな朝を告げた。全てを白く染め上げてしまいそうな曇り空が世界を包んでいた。エナジードリンクも無くなった今、少なくとも俺の頭は真っ白だった。結局、その晩は何も進まなかった。
 何の収穫も得られない日は少なくない。


 その後、一ノ瀬を置いて眠い目をこすりながら仕事に向かった。今の稼ぎでは到底生活できないので、派遣社員として工場で勤務しながら生計をたてている。
 誰かに見られることなど、微塵も気にしないような殺風景な工場が第二の主戦場だった。工場の中は、絶えず機械音が聞こえていた。
 働いている人はおじさんばかりだったが、ネタを考えながら、仕事できるので、俺にとっては好都合だった。それに、おじさんたちはよく気にかけてくれる。
 同窓会でいた人のことを思い返しながら検品を進めていると、「花山くん眠そうやな。」と、工場勤務おじさんの一人、前原さんが話しかけてきた。
 前原さんは四十代後半くらいの気前のいいおじさんで、いっつも何かと奢ってくれる。若い頃、借金で苦労したらしく、その疲れが髪に表れていた。
「はい。大丈夫です。すみません。」
「最近、本業の方はどうなん?忙しいんか。」
「だめっすね。まるっきりうまくいってなくて。まだまだ副業になってしまってます。」
「そうかそうか。まあ、まだ若いんやから。挑戦あるのみやで。間違っても俺らみたいに夢も希望も女房もないようなやつなったらあかんで。」
「ほんまに。この歳なったら一つも成長せんのやから。」
「成長していくのは、そのお腹だけやからな。」工場勤務おじさんの一人、さっさんが間に入ってきた。
「やかましわ。お前もやろ。」
 おじさんたちは、検品をしながら軽快なトークを展開していく。
 三年間の工場勤務で、おじさんたちの話はたくさん聞いてきた。もはや、検品することが仕事かおじさんの話を聞くのが仕事か分からなくなるほどに聞いてきた。前原さんの話に限っては、本気を出せば伝記ができるほどだ。
 おじさんたちにとって、俺はちょうど息子くらいの歳のはずだ。そんな夢を追いかける若人はこの会社の期待の星に他ならない。いつも応援してくれるのだが、まだ芽の出る見通しのない俺にとってありがたいながらも、プレッシャーになっていることは確かだった。
 正直、俺はおじさんたちをどういう目で見ていいか分からない。俺は三十年後、おじさんになる。しかし、どんなおじさんになるか分からない。おじさんたちの生き様は、聞く限りカッコ悪くて、最高にカッコ良かった。
 その一方で、正直なところおじさんのようにはなりたくないと思っている自分もいる。誓って、おじさんたちを見下しているわけではない。ただ、おじさんのようになるということは、夢がついえることとイコールである。「俺みたいになるな。」という前原さんの言葉は、冗談混じりではあったが、苦労をかけたくない親心のようなものが働いていたのかもしれない。どのみち、俺が売れればこんな憂いもなくなるだろう。
 ふと時計を見ると、まだ十時だった。勤務時間は残り七時間…。検品をしながらネタを考えることにした。遠くでタービンの唸る音が聞こえていた。


 退勤する頃には、早く寝たい以外の感情が機能しなくなっていた。しかし、少しだけネタの構想はできた。帰りのバスに乗り、次の日のネタ合わせの日を決めようと携帯を開いた。すると、一ノ瀬から「実家に帰ります。探さないでください。」と連絡が来ていた。
 いや、新婚二年目くらいで夫との生活に嫌気がさした時の新妻か。それに、探さないでくださいって書いてる割に居場所伝えてるやないか。と、思わずツッこんでしまった。
 だが、こうなってしまうと、一ノ瀬は本当に引きこもってしまうだろう。そうなると、大会に間に合わなくなる。帰りのバスを途中下車し、地元に向かった。

 数年ぶりに地元へ帰ったが、風景はそれほど変わっておらず、少し安心した。一ノ瀬をなんとか家から引きずり出し、昔よくネタ合わせをした公園へ連れ出した。
「どないしたんや。お前らしくない。」
「力が欲しい。」
「バーサーカーやないんやから。」
「そういうことやないねん。」冗談が通じない。結構やられてるみたいだ。
「やっぱり売れる気がせん。俺には才能がない。漫才は好きやし、一生なんらかの形で漫才はやりたいと思ってる。みんなを笑顔にしたい。けど、現状何もできてない。才能がない。昨日の晩かて、何もできてへん。どんだけ案を出しても、しっくりくるもんが出てこん。結果的に全部花山頼りになってしもてる。漫才で有名になって、一人でも多くの人を笑顔にしたい。世界を救いたい。大袈裟かもせんけど、漫才にはそんだけの力があると思ってる。でも何もできてない。何をすればええんか分からん。」
 うつむきながら一ノ瀬はひとしきり吐き出したようだ。
「ええか。お前が何もしてないと思ったことは一回もない。昨日に関しては結局俺も何も思いつかんかったし、お互い様や。それでも、一ノ瀬は一生懸命漫才に向き合ってる。いつだって漫才を諦めてない。舞台に立った時、特にそれが分かる。漫才は二人で作り出すもんや。お前ありきで、俺もネタ作ってる。それは、お前の必死さがバンバンディーゼルの武器やからや。だから、力ないってことは絶対ない。これだけは誓って言い切れる。自信もて。」
 意外にも、素直な言葉たちが自分の口から飛び出たので驚いた。一ノ瀬に本心をさらけ出すのは、片手で数えられる程しかない。
 少しだけ一ノ瀬の顔が明るくなったようだ。
「とにかく、今は才能ないって言うててもしゃあない。大会がもう、さしせまってるからな。ネタを書き起こしたら、特訓やから、腕まくって待っとけ。」
「まだ、腕まくりしたら肌寒いで。」
「あほ。そういうことちゃうねん。気合い入れて待っとけっちゅうことや。」
「うい。」

 そこからの日々は怒涛だった。記憶は時間の激流に流されながら、細かい粒状になった。

 ベルトコンベアーは生真面目に一定の時を刻む。満員電車に揺られる人々のように。終着駅も知らないで。途中下車する人の波。気だるげな夜は早くも更ける。

 目の下にくまを作りながら、ただひたすら机にかじりつく。入試前の浪人生のような風貌。ただ眼の奥だけが燃えている。

 自分の甘さの蓄積。夢より頼りないものはない。辺りに漂うカフェインの香り。淡々と始まっていく朝。

 嵐は過ぎるのをただ待つしかない。ただひたすらに過ぎるのを待つ。

 永遠にも感じらた時の流れの末。大雨は真っ赤な嘘だったのだろうか。清々しく青空が広がっていた。風はそよそよとよそよそしく吹いていた。

 雑踏の合間に埋もれて、自分たちも風景の一部になりかけていた。心の声は届かない。ビルに吸い込まれてしまいそうだ。それでも。

 綺麗な夜景も、その灯りの一つ一つに物語があるはずだ。しかし、遠くから見るとそれはまるで何もなかったかのように均質におしなべられてしまう。それは記憶も似たようなものだ。


 夢か現実かその境も曖昧になってしまった時間の中で、ふと気づけば大会は明日に迫っていた。
 燻っていた過去と訣別し、今こそバンバンディーゼルが輝く時だと確信していた。


【3.笑われた夢】
 数年前から始まった「ネクスターズ」は結成5年以下の漫才師の大会で、若手の試金石である。初回の覇者「浮上サブマリン」の活躍もあって、メディアの注目も自ずと集まっていた。結成5年目の俺たちにとって、最後のネクスターズだった。
 「炭酸ヒットチャート」は最近、SNSで脚光を浴び、若者を中心に大人気のコンビになっていた。「だるさんズ」は今まで鎬を削った同期である。他にも、この界隈では名の知れた漫才師たちが静かに自己主張していた。荒削りがゆえだろうか。鈍いながらも確かにキラリと光るものがあった。
「全国から強そうなやつが集まってんな。ワクワクしてきたで、、なぁ花山!」
「なに、漫画のかませ犬みたいなこと言うてんねん。」
「いや、言ってみたいセリフランキングナンバーワンのセリフやろ。そんなんゆうてるけど、本当は言ってみたいんやろ?」
「……。」

 俺たちはEグループの八番目だった。ネクスターズでは、各グループのトップのみが決勝大会に進み、各グループの二位は敗者復活戦を勝ち抜かなければいけない。決勝大会に進むには、かなりの難関を突破しなければならなかった。
 昨年は「フォトンシュークリーム」に次いで予選グループを二位通過したもの、敗者復活戦で敗北を喫した。
 それでも、初めて結果を残した大会だった。陳腐な表現になるが、俺たちの漫才人生は決して平らな道ではなかった。


 元々俺は漫才が好きだったが、自分でしてみようと思ったことはなかった。高校三年生の頃、漫才師を志すことになった。

 当たり前だが、高校生の話題といえば、ほとんどが恋愛の話だった。
「誰々と遊びにいったんやって。ストーリー上がってたわ。付き合ったんかな?」
「あのカップル半年らしいで。あの二人は推せる。」

 その一方で、高校三年になると現実問題、進学先も気になるところである。ほとんどの時間を勉強に費やしていた。
「志望校どこ?」
「模試の結果どうやった?大学の判定は?」
 そこそこの高校に行っていたので、進学以外の選択肢はないものだと思っていた。
 そんな、自由と制約に満ちた青春の中で、平凡に過ごしていた。高校三年生になっても、進路は漠然としている人がほとんどだ。俺自身もこの先適当な大学に行って、適当な会社に就職するものだろうと思っていた。

 一学期も終わりに差し掛かったプールの塩素が睡魔をもたらす午下がりのことだ。たしか、数Ⅲの授業中だった。隣の席に座っていた一ノ瀬が声をかけてきた。
「文化祭一緒に漫才しようぜ。」

 俺はたしかに、中学の頃からずっと漫才が好きだった。人を笑顔にする漫才師を尊敬していた。けれども、その当時漫才をするどころか、漫才を見てすらいなかった。唐突な誘いなこともあって、断ろうとした。だが、知っての通り一ノ瀬は一度言い出すと、絶対に引き下がらなかった。
 最後の思い出づくりということもあって、渋々一緒に出場することにした。(もちろん、海老原たちもこの時、出場することが決まった。)受験生にとって、夏休みは勝負の時期だ。けれども、本気じゃない漫才は漫才じゃない。とにかく漫才の動画をたくさん観た。勉学と漫才に明け暮れた。

 そして、九月の文化祭。漫才ステージには、予想以上にたくさんのお客さんが集まった。熟考の末に、学校の七不思議について漫才をすることにした。自分のネタがウケるのかという心配と自分のネタに対する自信を胸に漫才をした。ステージの上にいたのは一瞬だった。どんな内容だったのかもほとんど覚えていない。それでも、自分の人生を変えるには十分だった。スマートスーツケースの活躍もあり、初舞台は大盛況で幕を閉じた。

 文化祭の後、漫才を続けたいと思うようになった。漫才は自分らもお客さんも笑顔にできる。考えれば、考えた分だけ、目に見える形で結果につながる。おもしろい。

 有名になること自体にそれほどの魅力は感じなかったが、漫才師の頂点に立つことで、文化祭の笑い声とは比べものにならないくらいの歓声が得られるはずだ。笑顔は平和な時にしか起こらない。漫才は世界を救うほどのパワーを秘めている。

 この世の中にごまんといる漫才師の中で、なの知れた漫才師は、ほんの一握りである。煌びやかな世界の裏には、俺たちの知り得ない陰の世界があることは分かっていた。ただ、その頃の俺は自信があった。
 大学で漫才を続けるという方法ももちろんあった。けれど、鉄は熱いうちに打ちたかった。それに、逃げ道があると、この気持ちが消え入ってしまいそうで怖かった。かといって、漫才一本で行くだけの甲斐性は持ち合わせていなかった。
 そんな葛藤の最中、一ノ瀬が「俺たちやったらなんとなくいける気する。というより、おれは花山と一緒じゃないと無理な気がする。漫才師なろうや。」と言ってきた。一ノ瀬が相方でいてくれるなら心強い。「どうせやるならてっぺん取るで。」

 そこから、親と先生の説得が始まった。当たり前だが、そう簡単にYESを出してくれるはずもなかった。進路懇談も人より五回は多くしたはずだ。
 どんな内容かはほとんど忘れたが、「あんたがやりたいことをやればいいと思ってるけど、せっかく今まで勉強頑張ってきたのに、なんで漫才師なんかになるん。」というおかんの言葉だけは鮮明に残っている。
 学生の悪いところだ。NOを突きつけられれば、突きつけられるほどやりたくなってしまう。ほとんど振り切る形で漫才師の道へ走り出した。

 漫才師になってからは、知っての通り、バイトとネタ合わせの連続だった。難しいものだとは知っていたはずだが、想像以上に光が見えなかった。暗中模索という表現が一番近いだろうか。
 漫才師として今までに得た収入は全て合わせても一般的な初任給に及ばない。
 普段の食事は素パスタかコンビニバイトの廃棄だった。雑草を食べた日もあった。
 「一ノ瀬と花山が漫才師?絶対無理やろ。」と嘲ってきた地元の関わりは全て絶った。そもそも相手にしている余裕がなかった。
 目の前の出来事に、ただひたすらガムシャラにしがみついて、しがみついて過ごしていた。「夢は見るものじゃなくて、追いかけるもの」と誰かが言っていたが、実際は「夢は置いていかれないようにしがみつくもの」が正しい表現な気がする。夢は無愛想で、気まぐれで、理不尽だ。雲を掴むような毎日の中で、「つぎこそは」を続けてきた。
 今回ばかりは何か掴めそうな気がしていた。今年こそきっと。ラストイヤーだからきっと。

「よっしゃ、エンジン全開じゃ!一本目からとっておきやったるで!」一ノ瀬もやる気は十分だ。
「チッチッチッ…まだまだ一ノ瀬くんは三流だね。ええか。ネタっちゅうもんは他の組や場の雰囲気を見て、最適解を出さなあかんねん。芸の基本ってやつやな。かの芸能マスター・世阿弥が書いた奥義書・風姿花伝にも同じこと書いてるからな。」
「なんかすごそうやな。」
「そのために、漫才7本に加えて、とっておきを作ってきてんから。」
「え、8回戦あるんじゃないん。全部やらんの。」
「高校野球か。」

 くだらない話をしていたら、順番が迫ってきた。舞台袖から他のEグループの漫才を見ていると、動きのあるネタを使う漫才師が多かった。最近の流行りである。
 こういった賞レースにおいて、いかに観客や審査員にインパクトを与えられるかが勝負である。つまり、他の漫才師と違う芸風で攻めるのが定石だ。今回の場合、あえて王道のしゃべくり漫才をする方が良いだろう。
 一ノ瀬にも勝負するネタを伝えた。一ノ瀬は頷き、自然な流れでネタ合わせが始まった。一ノ瀬は異様に覚えが早く、その天性のキャラクターと共に漫才師の才能が確かにあった。
 一つ前の漫才師がネタを終え、俺たちの幕が上がった。
「続いてはバンバンディーゼルのお二人です!どうぞ!」
 出囃子が鳴り始めた。不思議なほど緊張はしていなかった。サウナの後に水風呂に入る時の感覚だ。火照っている体を包み込むピシッととした感覚だ。
「どうもーバンバンディーゼルでーす。よろしくお願いします!」

 舞台に立つ時は、いつだってそうだ。記憶も感覚も何もない。後になって、全ての記憶や感覚が襲ってくる。

「もうええわ。どうもありがとうございました。」
 割れるような拍手の波が押し寄せた。狙ったところで笑いの爆発もあった。手応えが残った。文化祭の時の感覚だ。
「花山、なんか今回いける気する。」
「一ノ瀬、実は俺もや。」

「Eグループ一位通過は…バンバンディーゼルのお二人です!」
 うまく行く時は突然やってくる。そして、とことんトントン拍子でものごとが進む。今まで悩んでいたのが嘘かのようにポンポンとネタが出てくるように。
 今の俺たちなら、本当にてっぺんを手にすることができる気がする。気づけば、一ノ瀬も同じガッツポーズをしていた。

 決勝大会の順番は8組中6番目だった。順番も完璧。後半の方が賞レースでは、有利だ。ここまでくると、もう神が味方しているとしか、思いようがない。
「一ノ瀬、とっておきでいくで!」
「お、やっぱり最後まで取っておくべきやったな。よっしゃ!突っ走るぞ!うぉーー!」

 出番まで舞台裏でネタ合わせをすることにした。
 列車は最初不安定で綿密な準備を必要とする。しかし、一度走り出してしまいさえすれば安定する。今まさに加速している。
 ネタ合わせは快いスピードで進んでいく。目的地までのレールはもう敷かれている。俺たちは、ただ今できることに没頭するだけでいい。

 俺たちの番が来た。
 舞台袖から客席の様子は見えない。ただ、うなるような拍手が迎え入れてくれた。センターマイクへと歩いていく。ネクスターズの黄色い照明が眩しい。
 予選ともまた違う感覚に襲われていた。今までの鬱々とした人生が頭の中を巡った。負の感情が全て悪いものではない。むしろ芸人はマイナスをプラスに変える仕事だ。負の感情はその反作用でとてつもないエネルギーを生み出す。笑いの起爆剤となる。今こそ溜め込んだエネルギーを解放する時だ。
 導火線を伝う火花のように、センターマイクへと歩む。俺は一ノ瀬とセンターマイクの前に立った。

「どうもーバンバンディーゼルです。よろしくお願いします!」
「漫才バンザイ!」


「どうもありがとうございました!!」
 目の前で爆発的な笑いが起きていた。勝ち取ったという確信と、やりきったという満足感があたりに充ちていた。今までの苦い思い出が頭に浮かんだのも、一種の走馬灯のようなものだろう。今こそ生まれ変わる時なのだ。影も形もなかった夢が掴める位置にまで近づいていた。

 ネクスターズは、結果発表になった。
「いやー。どの組も面白かったですねー。今年はいつも以上にレベルが高かったんじゃないですかねぇ。」
 他の組の様子は見ていなかったが、自信はあった。他の漫才師を見ると、半分くらいは同期だったが、見たことのない組もたくさんいた。
 でも、きっと大丈夫。夢は叶う。
「それでは結果発表します。」

「優勝は……ますたーどのお二人です!!」
 優勝を勝ち取ったのは無名の新人だった。


【4.それでも二人は】
 目が覚めた。何時かさえも分からない。辺りはまだ暗い。
 乱雑に置かれた洗濯物の山からリモコンを引っ張り出した。三回くらい電源ボタンを押した。テレビは退屈なニュース番組だった。乾いた笑い声がやけに耳についた。
 時計は午前五時二十一分を指し示していた。どうやら眠ってしまっていたらしい。

 ひとまず、タバコを吸うことにした。ベランダに出ると、見慣れた灰色の街が均一に広がっていた。空には、重たい雲が幾重にも重なっていた。
 今日はごみ収集の日なのだろうか。都会の嫌な匂いがかすかに漂っていた。
 ライターを二、三度カチカチさせた。朝の一服をすると、少し落ち着いた気がした。昨日はいつ眠りについたのだろう。そもそも、何をしていたのかさえも曖昧だ……。

 部屋に戻り、寝床に仰向けになった。目の前には、白い天井があるだけだ。部屋の殺風景に吸い込まれそうだ。あるいはもう吸い込まれてしまっているのかもしれない。

 どのくらい時間が過ぎただろうか。突然、テレビの内容が頭に入ってきた。
「それでは、本日のゲストはネクスターズで優勝し、今最も注目されているこちらのお二人です。どうぞ!」
「どうも〜。ますたーどで」
 すかさず、テレビを切った。リモコンをその辺に放り投げた。また布団の中にうずくまった。

 また、いつの間にかまどろんでいたようだ。目が覚めると、無性に腹が減っていることに気づいた。食べ物を台所へ取りに行くことさえも面倒だったので、その辺のポテトチップスを口にした。湿気で、古びた新聞紙を食べているようだ。
 ひとしきり咳き込んだあと、時計を見たが、二時間しか立っていなかった。

 毎日は、急速に色彩を失っていた。
 久々に工場へ行くと、あたりは油の匂いで満ち満ちていた。相変わらず、ベルトコンベアーは退屈そうに商品を運んでいた。
 その日は、前原さんとシフトが被っていた。
「花山くん。久しぶりやな。漫才の方が忙しかったんか?ひどい顔やないか。阪神負けた後、近鉄に乗ってるおっさんくらい変な顔してるで。」
「大丈夫です。」
 前原さんは全く悪気がなかった。しかし、今は自分の気持ちがコントロールできていなかった。本当は仕事も手につかない状況だった。けれども、生きていくためには働かなければならない。漫才ではなく、工場を……。
 もう、誰とも関わりたくなかった。その点工場は、人と向き合わずとも、商品と向き合っていればよい。そんなことを考えながら、黙々と作業を続けた。それ以降、前原さんとの会話もなくなってしまった。

 等間隔に流れてくる商品に向き合っていると、無限の時間が流れているような感覚に陥った。いつもと違って、何も考えていないので、その分時間もグッと引き延ばされてしまっていた。

 目的も希望も空中分解した毎日は、無限の地獄に似ていた。

 度々、発作のように身が灼かれる感覚にとらわれる瞬間がある。業火に感情も身体さえもドロドロに溶けていく感覚があった。
 もっと練習しておけば。もっと冷静になっていれば。挙げ出すとキリがない。その時は完璧だと思っていても、後から見ると「こうしておけば」がたくさん出てくる。そういう時に限って、根本的で、初歩的な「こうしておけば」だったりする。
 後から見ると、ツッコミが前のめり過ぎていていた。素人目には分からないだろう。が、いつものタイミングが掴めていない。
 過ぎ去った後なので、どうしようもできない。過去は変えられない。

 仕事を終えると、スマホの通知が数十件来ていた。中には、もう何日も放置しているものもあった。何もかもどうでもいい。社会から完全に孤立したい。小さな世界に閉じこもっていたい。そうなると、返信すら億劫になるものだ。
 そんな折、一ノ瀬から電話がかかってきた。

「もしもし。花山大丈夫か。全然連絡つかへんから心配したで。」
「おう………。」
 久々に声を発したので、ガスガスの声だった。
「元気ないやないか。ネクスターズ終わって、ショックなんは分かるけど。」
「………。」
「過ぎたことは変わらんし、残念やけどまあ気楽にいこう。早よまた漫才考えてくれ。」
 その時、自分でも意外なことを口走った。微かに唇が震えていた。
「おれ、漫才やめるわ。」
「え、、嘘やろ。何の冗談やねん。お前らしくない。」
「今回のネクスターズで分かってん。才能がないってことに。薄々気づいてたんやけど、今回のでそれがハッキリした気がした。だから、もうやめるわ。」
「なんでやねん。まだこれからやろ。」
「うん。でももう無理や。決めたことやから。ごめん。」
 電話を切った。自分でも突然のことで驚く気持ちはあったが、なぜか納得の方が大きかった。それはやっぱりそういうことなんだと、自分が納得するには十分すぎる材料だった。
 それは実感に変わっていった。ああ、これで芸人人生もおしまいなんだと。



 夜、一ノ瀬が訪ねてきた。正直会うつもりは微塵もなかったが、直接話さずに解散するのは筋が通らないので、会って話すことにした。その時は、自分の身勝手を丁重に謝罪したい気持ちはあったが、本気で漫才師を辞める決心をつけていた。
 家の中で話す気分ではなかったので、いつもよくネタ合わせをしていた公園で話すことにした。
 公園のベンチに二人が腰掛けると、カップルの別れ話の前のような重圧感が辺りを包み込んだ。夜の公園だけあって、人通りは無いに等しい。
 暗い公園だったが、照明がやけに明るく、一ノ瀬の顔はハッキリとは見えない。
 重たい沈黙を切り出したのは、一ノ瀬だった。
「ほんまにやめるんか。花山……。」
 いつになく、真剣な声色だ。
「電話では自分でも考えて無いようなことを口走ったなっていう感じはあった。けど、よく考えて見るとそれが深層心理なんかもせえへんなって思えてきた。今日ずっと考えてたけど、やっぱりもう無理かもせえへん。
 正直これまでずっとしんどいことしかなかった。先輩にドヤされた時、大きめの舞台でスベりたおした時、大寝坊してマネージャーに怒られまくった時…数え出したらキリないけど、夢さえあればなんとかなってなってた。でももう今はそれが無い。」
「夢が無いなら作ればええやん!俺たちはこっからや。」
「お前は絶望せんかったんか。俺は自信満々でこのネクスターズに挑んだつもりやった。全身全霊でやりきった。でも実際は、優勝には程遠かった。この差はすぐに埋まるもんじゃないねん。これからどんだけかかっても埋まらんかもせん差やねん。分かるか?」
「分かってるわ。そんなもん。俺たちがどんだけ練習して、どんだけこの大会にかけてきたことか。花山はその何倍も時間かけてネタ考えてきたんやろ。悔しくないんか。」
「悔しい!悔しいけどもう無理や。もう無理なんや……。今まで死ぬ気で積み重ねてきたつもりやった。でも、もう自信持てへん。周りにはもっと才能がある奴がめっちゃおる。なにより、そいつらは楽しそうに漫才をやってる。どんだけがんばっても評価されへん。俺の才能は尽きたし、この先が見えんからもうやめる。」
 一通り吐き出すと、頬がビリビリしてきた。漫才師になって一度たりとも弱音を吐露したことはなかった。もう漫才師は無理だと悟った。
(実際にはほんの数秒ほどの出来事だったような気がするが、)永遠にも感じられる、重苦しい沈黙の後に一ノ瀬は口を開いた。
「俺とおまえでてっぺんとるんやろ!目ぇ覚ませや!」
 俺は今までに見たことのない一ノ瀬の姿に半ば圧倒されていた。表情まではハッキリと分からないが、相方は本気だった。
「そら、他の奴らはええように見えるかもせえへんけど、それは今までの下積みがあって、積み上げてきた結果、舞台で輝いて見えてるんやろ?俺らがそれに及ばんかった。俺らよりおもしろかった。それだけのことやろ?」
「たしかに、そうかもしれへん。でも……。」
「でも、ちゃうねん!おれらは二人で一人やねん。俺たちは俺たちの笑いをめざしたらええし、他と比べる必要もない。俺たちには俺たちにしかできひんこともあるし、俺たちにしかできんお笑いもある。お客さんを笑顔にするのが仕事やろ。そこ見失ったらあかん。何より、漫才することが一番楽しいし、一番輝いてるって思える瞬間やしな。舞台で輝けてないんやったら、努力して努力して努力して輝かなあかんねん。」

 俺は一ノ瀬に言われてハッとした。
 今まで俺は漫才にのめり込むばかり、人の目を気にしていた。特に審査員や、作家の評価ばかりを気にしていた。結局、それは自分たちの世間の評価に直結するからだ。
 でも、俺たちの初心を思い返すとそんなもんが欲しくて漫才になったわけじゃなかった。もっと根本的で、大切なもの。「漫才バンザイ」を掲げ続けるわけ。それを、忘れてしまっていた。
 俺たちが大切にしていたもの。
 いつの間にか苦痛になっていた。「楽しいこと」は決して、楽しいだけじゃない。本気になればなるほど。だからと言って簡単に諦めきれない。やめられない。
「そうやな。大事なこと忘れてた。俺は俺の漫才を。もう一回再出発や。エンジン全開で!ブレーキーなんてかなぐり捨てろ!」
 一ノ瀬の前で弱音を吐いたことが恥ずかしかったからか、からげんきを出してしまった。まあ、これも本心だった。
 つくづく自分はめんどくさいやつだと思った。弱いやつだと思った。そして、つくづく一ノ瀬はアホだとも思った。今までに出会った誰よりも。

「ありがとう。」
 心の中でつぶやいた。
 バンバンディーゼルは新たな一歩を踏み出した。溶鉱炉から錬成された鉄のように熱く、固く。

 久方ぶりに、一ノ瀬と漫才がしたい気持ちでウズウズしていた。



【5.掲げた両手】
 それからというもの、俺たちはスター街道を駆け抜けていった。今までの挫折や苦渋をバネに、快進撃を遂げた。
 賞レースを総なめにし、注目の的となった。勢いそのままに、テレビ出演が増え、帯番組「バンバン言っちゃいな。」が始まった。今までの暇と苦労が嘘かのように、多忙で充実した毎日になった。売れっ子になってしまったら、それはそれで困ったものだ。

 と、まあ、ありきたりな物語だとこんな調子でトントン拍子に話は進むだろう。しかし、現実はそう甘くない。
 相変わらず、いつもの舞台は都会の雑踏だったし、最大の贅沢は「はなもと」で一杯引っ掛けることだった。
 変わり映えのない「普段通り」の生活が続いていた。

 ネクスターズが終わってから初めての仕事は、大阪の郊外の営業だった。お祭りの活気に皆、浮き足立っていた。
 だるさんズとともに、少し名の知れた先輩芸人の前座として舞台にあがった。だるさんズは自分の体型をいじったおデブネタで場をわかしていた。
 俺たちの出番になると、久々の感覚に陥った。あぁ、この高揚感。きっと祭りの雰囲気に飲まれてるだけじゃない。胸の内から強い鼓動が感じられた。
 ステージでは、多くのお客さんが見ていてくれた。俺たちのことなど、名前も知らないようなお客さんが、俺たちのことを見てくれている。そう考えると不思議な気持ちになる。お客さんにとって、今までの俺たちのドラマに興味はないし、知る由もない。ただ、面白いかどうか。それだけが判断基準だ。
 気合を入れて、センターマイクへと駆けて行った。

 だるさんズに負けじと俺たちも爽快なしゃべくり漫才を展開し、舞台から戻ってきた。だるさんズの福原が、「花山はやっぱり漫才やってる時が一番イキイキしとるわ。」と言ってきた。
 ニヤッとして、「そうかもな。」と言った。 バンバンディーゼルは長い停車を終え、再出発した。

 久々に手応えを感じたので、その足で「はなもと」へ行くと、大将はたいへん温かく受け入れてくれた。
「ネクスターズの決勝行ったって聞いて、ヒヤヒヤしたわ。」
「大将も応援してくれてたんですね。惜しいとこまで行ったんですけどねぇ。」
「優勝せんくて良かったわ。」
「いや、応援してくれてたんじゃないんですか!?」
「優勝したますたーどとか忙しそうやんか。あんなんなってもうたら、常連さん失ってまうからな。儲けが減ってまう。一生そこそこで頼んどくわ。」
「いや、そんな理由やったんですか。大将の呪いで優勝できんくなったやないですか。」
 冗談混じりに大将は微笑んでいた。微かに安堵しているように感じたのは気のせいだろうか。
「まあまあ、そうかっかせずに。まあいっかってことでイカサービスしとくから。」

 大将の優しさには救われるものの、漫才だけは「まあいっか」で済ますことはできない。

 それから、出させてもらえる舞台は全て出たし、賞レースも片っ端から全て出た。手応えのある日もあるにはあった。ネクスターズの決勝に進出したこともあって、漫才の世界では、少しずつ認知度も上がっていた。実際、顔をよく見るファンも少しずつ現れた。

 けれども、うまくいったのは数えるほどだった。空振りに終わることも少なくなかった。やはり、現実はそう甘くない。
 大喜利のイベントでひと笑いもとれずに終わってしまったこともあったし、ネクスターズでやったネタが全くウケないこともあった。一ノ瀬があまりにウケなさすぎて、暴走し、史上最高に地獄な空気で漫才を終え、漫才師の間で「暴走機関車一ノ瀬」と呼ばれた時もあった。
 一度ウケないと、それが常態化していった。ちょうど泥沼に足を突っ込んでしまい、抜け出そうと、もがくあの時の感覚に似ていた。
 ファンがついた一方で、倍のアンチも生まれた。SNSでひとたび「バンバンディーゼル」と検索すると、「おもんない」「何が面白い」と言葉が続く。認知度に比例して、厳しい言葉が並んでいた。
 「しゃべくり漫才でいきますみたいな顔して、テンポ悪い」という真っ当な意見から、「一ノ瀬わざとらしすぎる。」「花山いた?」など、個人を攻撃するものまで、多種多様なアンチコメントが寄せられた。ありとあらゆる角度から叩かれた。
 街中で漫才をし、誰も足を止めるものがなかったあの頃を思い返せば、まだマシだと思えた。一ノ瀬は「アンチは認知や。」とトンチンカンに見えて、あながち間違いではない主張をしていた。

 何もない日は、バイトに向かい、空いた時間でネタ合わせをした。睡眠時間を削り、寿命を削った。
 バイト帰りの街の灯が目に染みた。目がかすんで、光は万華鏡のように不規則な光になった。
 自販機のそばに落ちている空き缶に自分を重ねてみたりもした。

 普通であれば、体力的にも精神的にも辛いはずだ。けれども、その時の精神状態を振り返ると、しんどさはさほど感じていなかった。
 鉄は叩かれると固くなっていく。これを鍛錬と言うのだが、まさにそんな感じだった。何度も何度も叩かれて、へこんで、苦痛を味わった結果、明らかに強くなっていった。

 一ノ瀬は漫才を心から楽しんでいる様子だった。周りからとやかく言われても、何も感じていないようだ。本当に鈍感なやつだ。
 一ノ瀬は、相変わらずこだわりが強く、目を離すとあらぬ方向へ突っ走ってしまう。暴走機関車の異名もあながち間違いではないのかもしれない。
 特に、漫才をする時、必ず「漫才バンザイ!!」と叫んでいた。いつからかは分からないが、どんな時でも言うようになっていた。最初は戸惑ったが、必ずと言っていいほど言うので、渋々つかみとしてネタに組み入れることにしていた。一ノ瀬の暴走は止めることができない。
 一ノ瀬に聞いても、「俺たちのモットー」の一点張りで、全く答えてくれなかった。

 ある日、突然海老原から連絡が来た。ネクスターズを見てくれたようだ。

 お前らまだ「漫才バンザイ!!」してんねんな。なんか安心したわ。

 海老原が「漫才バンザイ!!」の正体を知っている。何の暗号なのだろうか。一ノ瀬と海老原が示し合わせたのだろうか。不思議だ。
 不思議だ。……不思議だ?
 そうだ。
 俺はバイト先から家に戻り、何冊にも重なった秘策ノートのNo.1を探し出した。
 そうだった。

 高校の文化祭で、俺たちは七不思議のネタをやった。その時、五番目の謎として、オーバーハンドパスをする時にバンザイをするバレーボール部という謎をネタにしていた。 一ノ瀬は、本番でバンザイを漫才と言い間違えた。その上、俺が「漫才してどないすんねん。バンザイやろ。」とツッコんでしまい、一時ツッコミ不在になってしまった。その時、たしか一ノ瀬は「漫才バンザイ!!」と言っていた。
 漫才自体は場の雰囲気もあって、大盛況で終わったので、ホッとした記憶がある。安堵とともに漫才の記憶も吹っ飛んでしまっていた。

 思い返せば、あの時から一ノ瀬は一切変わってない。
 「あほやな」で済ませられることも、済ませられないこともたくさんあった。だけど、漫才に対しては真っ直ぐストレートで全力勝負だ。だからこそ、憎めない。
 最近、俺の方まで一ノ瀬にやられてる気がする。元々、奥手で引っ込み思案だった俺は、一ノ瀬の引力によって半ば強制的に表舞台に引きずり出された。そして、他の評価を気にしない図太さも似てきた。

 自分たちの漫才は、万人ウケするような王道な漫才ではないかもしれない。だけど、自分たちのしたいことは突き詰めたい。
 今の漫才のスタイルは気に入ってるし、何より自分たちを表現できている感じがする。
 もちろん漫才はお客さんを笑顔にするためにあるし、それがうまくいったかどうかの、ものさしになる。だけど、自分たちを歪めてまでそんなことをしたいとは思わない。
 俺たちは、良くも悪くも高校時代から変わっていないのかもしれない。よく考えると、漫才も高校時代の延長線上だ。
 特に最近は、漫才を突き詰めれば突き詰めるほど、普段の一ノ瀬とのやりとりと何ら変わらなくなってきたように思える。これが、キャラを立たせる漫才というやつなのだろうか。
 理屈を突き詰めてきたつもりだったが、一ノ瀬にしてやられたような感じがして、ほんの少し悔しかった。でも、まあいっかとも思った。

 海老原に「俺たちのモットーは漫才バンザイ!!やからな。」と返信してみた。


 バンバンディーゼルは再出発した。
 新型の特急車両には敵わない。いくつもの名も知らぬような駅に停車しなければならない。いつ目的地にたどり着くかも分からない。
 燃料効率も悪いかもしれない。時に泥にまみれ、不恰好になることもある。
 けれども、ディーゼル車だからこそ走れる道がある。自分たちの道を自分たちで走り抜けられる。

 今日もまた、舞台に登る。
 前の組が終わり、MCが俺たちを紹介する。

「続いては浪花の暴走機関車!バンバンディーゼルのお二人です。どうぞ!」

 聞き慣れた出囃子と拍手が聞こえてくる。俺たちを照らすライトが眩しい。まるで俺たちだけを照らしているようだ。暗くて、舞台からは客席があまり見えない。それでも雰囲気は感じられる。出囃子と拍手が終わり、一瞬の静寂。何度も繰り返してきたこの形容し難い緊張感。この緊張感こそ、漫才にふさわしい。自分が生きていることを実感する。

「どうもーバンバンディーゼルです。」
「「漫才バンザイ!!」」

【Another story 〜Show Me da Louis〜】
 その日、スタジオでの練習を終え、俺は大阪の街を歩いてたんだよ。今日はマネージャーが休みだったから、久々に大阪の街を歩くことできた。
 ようやく世間に認知されてきたから、さすがに変装しながら歩いてたんだ。
 地元だし、たまには気分転換で歩くことにしててさ。街中にインスピレーションは転がってるからね。
 しっかし、大阪の街は変わらないね。毎日せわしなく過ぎてってる感じ。わかる?
 変化がないってことは刺激がないってことだからね。収穫はないな。そう思ってたんだよ。
 そんな矢先、大阪の街のど真ん中で路上ライブしてる奴らがいたんだよ。しかも漫才の。今どき見たことある?
 周りには誰もいなかったけど、根性あるなーって思って、ちょっと見てみたんだよ。俺も大阪の人間だからね。笑いには厳しいよ。で、案の定つまんないの。

 その日はそれで終わったんだ。ある日またその辺を通りかかったら、またいたの。久々に根性あるやつらだなと思って、陰ながら応援してたんだ。

 そこからしばらく見なかったんだけど、最近、大阪の街を歩いてた時にそいつらを見かけたんだよね。
 必死だったよ。でも、なんか吹っ切れた感じがしてさ。いい感じに肩の力抜けてんの。
 その影響なのかな。何人かお客さんが見てたの。お金いっぱい入ってんの。なんか嬉しくなっちゃってさ。
 俺までお金を入れちゃったよ。俺は稼いでるから一万円入れたよ?そしたら、めっちゃ喜んでてさ。

 そんな二人を見てるとある言葉がふっと降りてきたんだよ。それが今の新しい楽曲に繋がったんだけどね。

 ミュージシャンも漫才師もそうだけど、夢を追いかけるって、最高にしんどい。
 夢は叶えるものっていうけど、それは夢を叶えた人が言うセリフで、実際はそんな甘くねえよ。
 泥臭くもがいて、血を吐くような思いをして、嫌いになってからはじめて夢を追う資格を手に入れられる。
 それでも、成功するかなんて誰もわかんねぇ。ただ、必死に夢に喰らいつく姿は最高にかっこいい。そんな様子を曲にしたんだ。

 この曲は漫才師のためだけの曲じゃない。夢を追いかける全ての人に聴いてほしい。

(「週刊一華」2024年3月17日号 掲載
 独占インタビュー!「漫才バンザイ!!」作成秘話より)

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