私の忘れたくない一行。壹岐悠太郎が選ぶ「詩」
◎忘れたくない一行
一人称の物語はここで終る
(松浦寿輝「物語」(『ウサギのダンス』七月堂、1982年。)引用は『現代詩文庫 松浦寿輝詩集』思潮社、1992年)
こんなに切ない「一行」があるだろうか。
方法の午後、ひとは、視えるものを視ることはできない。
(荒川洋治「キルギス錐情」(『娼婦論』檸檬屋、1971年。)引用は『現代詩文庫 荒川洋治詩集』思潮社、1981年)
こんなに切ない「一行」があるだろうか。2(ツー)
ねえ you 結婚よりすごいことしよヲタクの方が幸せ
(METAMUSE(大森靖子)「ハッピーエンド延長戦」2023年)
そうだなあ。
その引用の闇に、散文は遅れる。
(建畠晢「旅の遅延」『余白のランナー』思潮社、1991年)
ギョッとするような真実をここに書かれてしまった。
◎忘れたくない、「自身の」一行
ミヨちゃんは私の向かいに座っている。なにも喋らないで、頬杖をついてニコニコしている。かわいい。
(壹岐悠太郎「街とその鳥の、」『空地 Vol.4』2024年)
これが書けたとき、もう何も書かなくていいと思った。
オナガの群れに乗り・旅をしたいね
(壹岐悠太郎「ウニト」『現代詩手帖』2024年2月号新人作品欄、思潮社、2024年)
オナガの群れに乗り旅をしたいね。