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ライヒ・リゲティ・花小金井、

9月18日

[スティーヴ・ライヒ(Steve Reich、1936年10月3日‐)は、ミニマル・ミュージックを代表するアメリカの作曲家。母は女優のジューン・キャロル(旧姓・シルマン)。異父弟に作家のジョナサン・キャロル。]


いわずと知れたライヒの《Electric Counterpoint》(1987)の、とくに三楽章を寝る前によく聴く、ライヒはエモい、と私は思う、そのほかにもこの人は、《Counterpoint》を題にもつ様々な作品を書いているが、エレクリックギターのために書かれたこの音楽(Pat Methenyの演奏が好きだ、)の、ミニマル、ではあるもののノリのいい、なんとなく私はネオアコのような音がすると思う、たとえばこれをCornelius小山田圭吾が演奏したらどうか、と考える、小山田圭吾はギターの名手だと思う、止まらない列車がすごい加速する、みたいな、そんなことを考える、電車はきっちり止まる、急行に乗らない限りは降りたい駅で止まってくれる、


ライヒに《Tehillim》という曲があることを知る、ヘブライ語で 詩篇 の意味を持つと知った、室内楽で声楽であるいはオーケストラ、私は金管楽器しかできない、からこういう音楽にあこがれる、打楽器にもあこがれる、西村朗の響きもある、声が高いところと低いところを行ったり来たりする、ウミウシを浅瀬でつかまえたときのような、ウミウシを潰すと変な色の汁が出ると聞いて怖くなった、ヒトデを投げている人もいた、太平洋のほうが近いのだが、海に行くときはたいてい山脈を突っ切って日本海のほうに抜けた、


榎本櫻湖『Hanakoganei Counterpoint』は果たしてライヒに由来するか? と私は寝る前の時間をこの本を読むことに費やしている、「(  Tehi)llim」という作品がある、間違いなくライヒの引用だとわかる、わかったことにする、楽しいからわかったことにしている、〈(霓蝶波)、〉〈蠶〉〈聨禱〉〈舊〉〈黄鮟鱇〉〈蝨〉読めない漢字を探していくのは虫を見ているようで、文字のレイアウトの上下するのに視線も合わせて上下すると、飛び回っている虫を追いかけているようで今度はライヒのマラカスの音に共鳴している、ライヒは「ハレルヤ」とうたう、〈聨禱〉を探すのに時間がかかった、三善晃の好きな曲に《連禱富士》というのがあり、これは室内楽ではなくてオーケストラの大きな編成の音楽なのだが、はじめのチャイムの音、驚くべきティンパニとバスドラムの怒号、鋭い金管楽器のスタッカートにも、一見グロテスクなたとえばストラヴィンスキー《春の祭典》(榎本さんは「春祭」についての詩を書いていた……散文詩誌『サクラコいずビューティフルと愉快な仲間たち』第5号に、文字の楽譜がびっしりと載っている〔万華鏡、具象化された春の跫に、雪のさなかポケットに手を突っこんだ猫背の男が横転する、春の跫の具体化、あるいはがさつな猟師のもつ空砲ばかりの肝細胞、フォアグラの姫たちが万華鏡から躍りでてくる、穴熊の巣に降り積もる金箔の白粉、……、〕)の冒頭のバスーン・ソロの美しさにも似たハープの旋律、


100台のメトロノームを鳴らして、そのメトロノームたちが消えていく(ねじ巻き式メトロノームだろうか)Ligeti Györgyに《Poème Symphonique》というのがあることを知った、リゲティといえば室内楽の名曲《Sechs Bagatellen für Bläserquintett》6つのバガテルと呼ばれることが多いだろう、私はこの曲が大好きだ、あとは木管五重奏ならイベールやアーノルドの陽気なものも、好きだ、榎本さんの『Hanakoganei Counterpoint』には「Poème Symphonique for 100 fragments Un texte en hommage à LIGETI GYÖRGY」という詩があり、〈46 レコード盤が廻転している水浸しの書庫の、翅を捥がれた水棲昆虫たちが外骨骼を搖すって交信していた、〉にはシビれる、なんてカッコいい詩行が、と油断していると〈62 束の間よぎっていく文字の陰翳を摑みとることもできずにたたずむのみである、〉というのはまさに詩を書くことである、


まっ白で、カバーに掘られた文字の凹凸を撫でると生き物の表面のようなやさしさで、またカバーを外すと透明な文字が光りの加減であらわれたり消えたりするのは、夢のよう、そして帯に〈永遠に/読み終わらない/書物の夢〉、




[ ]はWikipedia、「スティーヴ・ライヒ」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%92)から引用(2024年9月18日23時閲覧)

〈 〉は榎本櫻湖『Hanakoganei Counterpoint』(七月堂、2024年9月)から引用

〔 〕は散文詩誌『サクラコいずビューティフルと愉快な仲間たち』第5号(発行・榎本櫻湖、2012年5月)

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