「虚実の皮膜」 近年のヒット映画とプロレスブームに共通するキーワード
東京女子プロレスの公式パンフレットを購入し、読み浸っていたところ、滝川あずさ選手の引退に橋本宗洋さんがコメントを寄せていました。
そこで語られていたキーワードが「虚実の皮膜」でした。
プロレスの醍醐味は「虚実の皮膜」「グレーさ」を楽しむ
プロレスの面白さは語り尽くせないくらいありますが、醍醐味の一つはまさしく「虚実の皮膜」にあると思います。
くりぃむしちゅー有田は、これを「グレーさを楽しむ」と表現していましたが、まさに「本当」と「フィクション」が混ざり合い溶け込んだ世界を楽しむのがプロレスだと思います。
選手同士の因縁、勝利の勝敗、試合の展開、突然の乱入、いきなりの仲間割れ・・・どれも最初から仕組まれたことか、本当に感情が爆発したのか、もしくは半々なのか・・・これはどちらとも言えるし、どちらとも言えないのがプロレスです。
「虚実の皮膜」は生の舞台演技から来た言葉
プロレスが苦手な方は「痛そうすぎて無理」という人と「やらさでつまらない」という2タイプがいると思います。これはどちらもあっていますが、どちらも間違っているとも言えます。
「痛くないけど痛そうにやるのがプロレス」とも言えるし、「やらせばかりではないガチな要素が見え隠れするのがプロレス」とも言えます。
そこを楽しむ。他の格闘技にはない、生の舞台を楽しむような感覚も持ち合わせているのがプロレスです。上の記事で「虚実の皮膜」は舞台から来た言葉だとも紹介されていました。生の舞台も台本はあっても、何が起こるかわからないし、アドリブも魅力だったりするわけです。
近年のヒット映画とプロレスの共通キーワード
急に話を大きくしてみたいと思います。
最近流行している「カメラを止めるな」もネタバレしない程度に書くならば「虚実の皮膜」を楽しむ作品だと思います。
巧みな脚本により、どこまで「虚構」でどこまで「現実」かを何重にも楽しめる作品になっています。
そしてこの「虚構」と「現実」というキーワードは2年前に大ヒットした「シン・ゴジラ」で使われてたメインキーワードでした。
完全なファンタジー作品である「虚」でもなく、完全なリアルであるドキュメンタリーや報道ニュースのような「実」でもない。
曖昧模糊とした「虚実の皮膜」を現代の消費者は好むようになったことは、もしかしたら近年のプロレスブームとも無関係ではないかもしれません。
現実社会も「虚」か「実」か曖昧になった背景が
「虚実の皮膜」が流行るきっかけを社会傾向に求めてみると、スマホが普及しSNSが一般化したことがあるのではと考えています。
タイムラインには、現実の友達・憧れの芸能人・架空のアニメキャラクターなどが同列して表示されたりします。
また嘘のような本当の他国のニュースやありふれた日常の話も同じタイムラインに平気で並びます。
そして「中の人」はいるのはわかってもあくまでそれはそれと楽しむ文化もできました。「タニタ」は「タニタ」であって、中の人の〇〇さんではないんです。
さらにフェイクニュースやデマのようなものも拡散されてしまうのがSNSであり、ますます「虚」と「実」の見分けは難しくなっています。
そのようにSNSから情報を取得することが当たり前になった消費者からすると「虚実の皮膜」はごく当たり前であり、むしろもっともリアルというかもっとも吸収しやすいコンテンツになったとも言えるかもしれません。
もっとプロレス好きな人を増やすには・・・
話をプロレスに戻しますと、もっともっとプロレスが好きな人が増えてほしいと思う筆者ですが、上述のような仮説から、
「カメラを止めるな」や「シン・ゴジラ」を楽しめる人はプロレスを好きになれる
と思いますので、ぜひ当てはまる人はプロレスを一度観戦して欲しいと思います。