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人生を楽しく生きるコツを伝えた、87歳現役ヘルパーの千福幸子さん
「いきてゆくウィーク」は、大阪府豊中市で約20年にわたって開催されてきた「いきいき長寿フェア」をリニューアルしたイベントです。
高齢者の社会参加、介護/福祉をベースにしながら、さまざまな方が参加したり、学んだりできるようなイベントになっています。今年度は、11月7日から11月13日の1週間、オンラインを中心にイベントを開催しました。
このnoteでは、いきてゆくウィークに関わるメンバーの想いや背景を発信しています。今回インタビューしたのは、ヘルパーとして活躍中の千福幸子(せんぷく・ゆきこ)さん。
取材時87歳だった千福さんは、73歳でホームヘルパー2級(現「介護職員初任者研修」)を取得され、76歳で介護福祉士、80歳にはケアマネジャーの試験に一発合格。現在も様々なチャレンジを続けられています。
人生経験豊富な「おばあ」に悩み相談ができる「おばあbar」に、おばあのひとりとして参加された千福さん。また、今をいきる高齢者のみなさんの写真展示をした「いきてゆく写真館」では、モデルを務められました。そんな千福さんに、いきてゆくウィークに参加する中で感じたことや、仕事への想いを伺いました。
写真:水本光
ヘルパーとして、相手の心に寄り添う
── はじめに、千福さんの仕事について教えていただけますか。
週に3日、介護が必要な方のご自宅に訪問して、ヘルパーの仕事をしています。おむつ替えや清拭などの「身体介護」や、掃除や洗濯などの「生活援助」が主な仕事です。
※身体介護とは、直接身体に触れて行う介護を指す。生活援助とは、家事をすることが困難な場合に行われる日常生活支援のこと。
── ヘルパーとして働くうえで、どのようなことを大切になさっていますか。
根本にあるのは「相手の心に寄り添う」ことです。そんな気持ちで、毎日を過ごしています。1日の中で何度も同じ話をされたときも、心に寄り添ってその話を聞くこと。それが務めですね。
利用者のみなさんは、人生の同伴者のように思っています。週に何度か、同じ時間を持ってそのときを過ごすんです。その中で、「楽しい話をさせてもらいましょうか」「今日はこんなお料理をつくってみましょうか」など、いろんな話をします。
ご自宅に伺っている時間を精一杯使って、できることをさせていただく。そんなことの積み重ねです。
── 利用者さんとの関わりの中で、印象に残っていることはありますか。
一人ひとりに人生があって、どの方も思い出に残っています。例えば、私と同じように戦争を経験した方とは、お互いがどこへ疎開していたかを話しました。また、当時を思い出して、一緒に軍歌を歌ったこともあります。
皆さんの心の中に戦争が刻まれているという印象はありますね。それを持って、今までずっと生きてこられたと感じています。
テーマは人生。悩み相談を受けた、おばあbar
── 人生経験豊富な「おばあ」に悩み相談ができる「おばあbar」に、千福さんは参加されましたね。初めて企画について聞いたとき、どのようなことを感じられましたか。
運営メンバーの方に声をかけてもらい、おばあbarの企画を知りました。多世代交流を大切にしていると教えてもらい、それは良いことだと思ったんです。それで、「役に立つことがあれば参加させてもらおう」という気持ちで、お誘いを引き受けました。
── 当日は、全国のみなさんとZoomで話されていましたね。おばあbarに参加された感想を教えてください。
参加された方々からお話を伺う中で、みなさんがそれぞれの職場で一生懸命仕事をなさっていると感じました。その印象が強かったです。それで、「私ももっとがんばらないといけない」という気持ちになりました。
── 千福さんが参加された回は「人生を楽しく生きるコツ」がテーマでしたね。
ダイヤモンドを買えたといったことではなくて、小さなことに喜びを感じられたら良いのかなと思っています。
美味しいものを食べたときに「ああ、美味しい。こんなに美味しいものを食べられるって幸せ」と思うのも、ひとつの方法です。「今日も元気で過ごせたな」と夜に思うのも、幸せを感じるひとときですね。
── 人生の中で困ったことが起こったとき、これまでどのように困難を乗り越えてきましたか。
今までの人生で、いろんなことがありました。それはもう数えきれないくらい。例えば、戦時中は、爆弾の落ちる中逃げました。終戦の日は、知らない疎開先でひとり、父も母も生きているかどうかわからず、「明日からどうなるのかな」と思って過ごしました。
人生は山あり谷ありです。上り坂、下り坂があるんですけど、「まさか」という坂もあるんです。それが乗り越えにくい。それを乗り越えたら、自分の血となり肉となるのではないかと思います。
その「まさか」を乗り越えるために、私は開き直るんです。これより、大きなことは起きない。山よりでかい獅子は出ん。夜の明けない明日はない。そう思っていつも過ごしてきました。それで、今日に至っているわけです。
思い出の商店街で撮影をした、いきてゆく写真館
── 今をいきる高齢者のみなさんの写真展示をした「いきてゆく写真館」では、モデルを務められましたよね。撮影場所になった豊中市の岡町商店街は、千福さんにとってどのような場所ですか。
以前は、岡町商店街へよく行っていました。昔は、買い物と言ったら岡町商店街。ハレの日のために何かつくりたいと思ったときは、「岡町へ買い物に行こう。岡町に行ったら何でもある」と言っていたんです。
岡町商店街へ行ったら何でも揃うという気持ちで、バスを乗り継いで買い物に行っていました。子どもたちもぞろぞろ連れて出かけていましたね。そんな思い出がたくさんあります。とても良いところなんです。撮影当日は、「昔はもっと人通りが多くて」と話していました。
── 商店街のおもちゃ屋さんでも、撮影が行われたそうですね。印象に残っている当時のエピソードはありますか。
生まれた長男がかわいくてかわいくて、みんなが大事にするんですね。それで、いろんなおもちゃを買っていました。そんな中、岡町商店街のおもちゃ屋さんへ当時行ったのですが、息子はどのおもちゃも手にとらなかったんです。
その様子を見たおもちゃ屋さんに「この子はほしいおもちゃをいつも買ってもらっているから、特別にほしいものがない。少し甘やかしすぎですね」と言われたんです。それが、ずっと記憶に残っています。今は、そんな息子も大人になりました。優しい人に育ってくれて良かったなと思っています。
「待っていた」と言われることが、ヘルパーとして働く喜び
── いきてゆくウィークでは、介護の魅力発信も大切にしています。千福さんにとって、介護の魅力は何ですか。
ご自宅に伺ったとき、みなさんに「待っていた」と言っていただくこと。その一言に尽きると思います。その言葉が励みになるんです。「会えて良かった。嬉しかった」と言っていただけたら、それで十分ではないかと思っています。
── 最後に、千福さんにとって「いきてゆく」とは何か教えてください。
健康であることです。今できることをして一人ひとりの心に寄り添いながら、毎日元気に働きたい。そのためには、「健康でいないと」と思っているので、朝昼晩しっかりと食事をとります。そして、少しの晩酌をいただいて「今日も良かったな。最高!ありがとうございました」と感謝します。
そして、明日を迎えることができたら「今日も元気でがんばろう」という気持ちになるんです。それが、生きていくことではないかなと思っています。
── 千福さん、ありがとうございました。
介護保険制度
社会全体で介護が必要となった人を支える仕組み。介護が必要となったときも、住みなれた地域で安心して暮らしていけるよう支援する。40歳以上の方が納めている介護保険料と税金が財源になっているため、介護を必要としている方は、原則1割の自己負担でさまざまな介護サービスを受けられる。(※前年度の所得により、自己負担は2割または3割になる)
介護サービスにはさまざまな種類があり、自宅で利用できるサービス(訪問介護、デイサービスなど)や、施設に入所するサービス(介護老人福祉施設など)、生活環境を整えるサービス(住宅改修や福祉用具レンタル・購入)などがある。
市町村の地域包括支援センターで、介護保険制度に関する相談や情報提供を行っている。
いきてゆくウィークって?
「いきてゆくウィーク」は、豊中市で約20年にわたって開催されてきた「いきいき長寿フェア」をリニューアルしたイベントです。
高齢者の社会参加、介護/福祉をベースにしながら、
さまざまな方が参加したり、学んだりできたりするようなイベントになっています。
今回は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて、オンライン(一部、展示会については現地開催)で行います。
これまでとは少し違った新企画がぞくぞく。
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