【壱岐新報2024.10.4】賛成8人、反対7人と拮抗した採決、保護者と住民は願い届かず落胆
市議会定例会9月会議の先月25日、郷ノ浦町の柳田・志原保育所の閉所に関する条例改正についての採決は、賛成多数で可決した。この採決により「市へき地保育所設置条例」の一部を改正し、来年3月末に柳田・志原保育所を閉所する流れになる。採決は議長を除く15人で行われ、閉所に向けた条例改正に賛成した議員は8人、反対した議員は7人。総務文教厚生常任委員会(以下、総務委員会)で判断した条例改正の否決は本会議で覆された。
柳田・志原保育所、閉所条例、賛成多数で可決
先月17日の総務委員会では反対多数で否決だったことから、傍聴に訪れていた保育所保護者や地域住民らは意外な採決に驚きの表情を見せた。
柳田と志原保育所閉所の方針をめぐる問題は、保護者や地域住民を巻き込み混迷を極めた。へき地保育所の存続を望む会(頴川加奈江、田中愛妃共同代表、以下、望む会)と柳田保育会長は8月30日、市議会に対し「へき地保育所の閉園延長に関する請願」を提出し、柳田保育所閉所の一時延長を求めた。この請願には、紹介議員として中田恭一議員、賛同議員には8人、計9人が連名していたことと、総務委員会の条例改正否決を受け、大方の予想では本会議の採決も否決の見通しが強かった。それだけに、柳田保育所の一時存続を望んでいた傍聴席の保護者と地域住民の落胆は大きかった。
採決前の討論では、6人の議員が登壇した。条例改正による閉所に賛成の意見を述べた土谷勇二議員は「園児募集の時、閉所のお知らせで保護者に説明をしている。保護者らは園児の減少、少人数への保育の質を考え閉所に納得されたと思っている」とした。
同じく閉所に賛成の植村圭司議員は「本議案が議決されなければ、柳田・志原の両保育所が制限なく開かれることになる。柳田地区だけでなく、今後の市の未来を考えた場合、より有効な選択をすることが求められている」と述べた。
赤木貴尚議員は「子どもたちを学び預ける環境、施設環境、保護者や市民への説明、広報の状況を考え条例の可決は妥当だ」とした賛成討論を述べた。
一方で、閉所に反対の意見では、武原由里子議員は「市は、保護者の疑問や意見を聞く場面がないまま一方的に閉所と説明した。閉所により不利益を被る保護者や地域との、十分な話し合いと時間をかけての合意形成がなされていない」と意見した。
松本順子議員は「今は閉所の時ではない。せめて認定こども園ができるまで、閉所を見送っていただきたい」との考えを述べた。
山口欽秀議員は「柳田保育所は立地条件から見て、保育を求める保護者の声に今後も応える場として存在し続ける条件はある。小規模保育を求める保護者も多数いる。そういう中で柳田保育所の存在は大きい」と述べた。
閉所に向けた条例可決を受け、篠原一生市長は「へき地保育所の集約化により、保育士を効率的に配置し、職員の負担軽減と子ども一人ひとりに寄り添い、保育にかける力を集約、集中する。保育環境の充実、保育力の向上と質の高い幼児教育の提供につなげる」と、閉所に向けた決意を述べた。
柳田保育所の一時存続を求めた望む会の頴川共同代表は「3月より望む会を立ち上げ、市民の声として寄り添ってほしい、意見を聞いてほしいとの思いで、日々悩み考え進んできた。議会の採択には戸惑いしかない。
市議に責任を負わせる行政、市民に寄り添う市議、そうでない市議がいる中で、私たち市民がいくら声をあげても市と同じ土俵には上がれない、意見を意見としても聴いてもらえない存在だと痛感した。今まで閉所に反対する署名に協力いただいた方々、意見をいただいた方々、請願に賛同し尽力いただいた市議の方々に申し訳ない」と思いを述べた。
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