阿佐ヶ谷というまち
阿佐ヶ谷散策
もうすぐ東京を離れるのだが、最後にどうしても行きたかった街、阿佐ヶ谷へ、先日出向いた。
「A子さんの恋人」という近藤聡乃さん作の漫画があって、私はそれを大学から付き合いのある友人に教えてもらったのだけど、とってもよかった。
何がいいのか、という感想は一度今日は置いておきたいのだが、とにかくその漫画は阿佐ヶ谷が舞台になっていて、登場人物の生活がそこにあって、だから漫画を教えてくれた友人と出かけてみることにした。
電車で1時間ほどかけて阿佐ヶ谷へ。
gionという喫茶店で待ち合わせ。
ひどく寒い日だったので、友人を待ちながら先に温かいコーヒーとモーニング(90円!)を注文。
友人が来て、ミルクティーとサンドイッチを注文し、でもバタートーストが来て、2人で今観ているドラマや聴いている音楽について話した。
ひとしきり話して、カイロを買い、A子さんの聖地巡りをしながら古書店に立ち寄ってはゆったりと立ち読みをして本を買い、パールセンターをだらだらと往復しては素敵な街だねと盛り上がった。
わたしと阿佐ヶ谷
わたしの東京での3年間は、自分自身と向き合い、自意識と闘う日々だった。東京で1人、部屋を借り、コロナ禍でも黙々と暮らしてきた。3年経ちようやく、自信がなくてどこにも行けず、常に自分ではない誰かに憧れて、ここではないどこかへ行きたいと悶々としていた自分から最近抜け出している。
でもその途中で何度も何度も進み方を見失い、孤独にも負けそうになり、その度にラジオやドラマ、音楽、漫画、エッセイなどのエンターテイメントに助けられてきた。
そしてなぜかわたしを救ってくれる人や作品がよく阿佐ヶ谷と繋がる。不思議な街なのだ。
4年前、猪八戒
東京に引っ越す前の年の春、精神的にかなり参っていた。
美味しいご飯を食べようと調べ、たまたま阿佐ヶ谷の猪八戒という餃子屋さんを知ったが、名店で、予約は月初めに全て埋まってしまうという。それでも開店前の店に行ってみると、店員さんがちょうど出てきたので今日はどうですか、と聞いてみた。開店時間に並べば入れると思いますと教えていただいたので、開店時間に並び、入店することができた。
1人だったので、2、3種類の餃子を頼んで平らげ、まだ外に並ぶ人たちに申し訳ない気持ちでそそくさと出てきてしまったのだが、店主の方も常連の方もとても優しくしてくれた思い出がある。もちろん餃子もとても美味しく、お皿も素敵で、店主は一人で来た田舎者のわたしに、親戚がわたしの地元にいることを教えてくれた。ほんの数時間、いや数十分のことなのだが、今もその時間が忘れられない。「もういっちゃうの?ここからが楽しいのに!」と話してくれた常連の方に、混ぜてもらえばよかったかな。
星野源さんとオードリー
星野源さんやオードリー・若林さんは、阿佐ヶ谷で下積み時代を過ごした。彼らにとって阿佐ヶ谷での思い出はかなり過酷なものだったと回顧されはことが多いけれど、やっぱりファンにとっては特別な場所になっている。
歩いているだけで、あ、ここで源さんが自転車で走ってた。あ、ここでオードリーがここで練習をしてた。ここで過ごした彼らが数年後生み出した多くの作品や生き方、仕事に対する姿勢に支えられて、今日のわたしがいる。
帰ってきたい街
少し歩いているだけで、近くに住んでいると思われる人が多くいる。商店街ににぎわいがある。そこで感じたのは、すれ違う一人一人の生活。スーパーの前に所狭しと並べられた野菜や果物が安い。チェーンのコーヒーショップもあれば小洒落た喫茶店もあり、スターロードに行けば居酒屋にスナック、蕎麦屋、ラーメン屋。昔の映画が観られる「ラピュタ」。A子さんたちも阿佐ヶ谷で暮らし、悩み、笑い、飲み、食べ、歩き、生きていた。
最後に出したA子さんの答えと、迷いのない顔!A子さんたちに自分を重ねながら阿佐ヶ谷を歩き、わたしも東京に来て自分と向き合ってきてよかったと思えた。
またすぐにgionのモーニングを食べて、古本屋でじっくり立ち読みをして、シンチェリータのジェラート(メルノワは絶対に!)を食べて、熱いコーヒーを飲み、ラピュタで古い映画を観て、商店街でお買い物をして、最後には駅前のスタバに行きたい。