河村勇輝の初得点　（秋の金沢にて）

秋の北陸で書いています。
犀川のほとりをすずろ歩きながら、いくらか気取って赴くままに筆をすべらせてみます。

秋の風が吹き始め、木々が色づく頃、金沢の街も衣替えの準備に忙しくなる。夏の名残を惜しむように、薄手の衣服がクローゼットの奥へとしまわれ、代わりに温かなセーターやコートが前面に出てくる。

泉鏡花の『高野聖』や『婦系図』に描かれるような、古き良き時代の風情を感じさせるこの季節の移ろいは、まるで自然が織りなす一篇の詩のようだ。鏡花の作品に登場する人物たちも、この季節の変わり目に心を動かされ、物語の中で新たな一歩を踏み出していくのだろう。

米国ではNBAシーズンが真っ盛りだ。
バスケットボールの試合は、まるで一瞬一瞬がドラマのように展開される。選手たちの華麗なプレーや、観客の熱狂的な応援は、まさに現代のスポーツの祭典と言えるだろう。特に今年のシーズンは、若手選手の台頭が目覚ましく、新たなスターが次々と誕生している。

八村塁はロサンゼルス・レイカーズ、河村勇輝はメンフィス・グリズリーズで活躍しており、彼らのプレーは、まるで詩人が言葉を紡ぐように、コート上で美しい物語を描き出す。
きょう、河村勇輝は、NBAでの初得点をあげた。その瞬間はまるで泉鏡花の幻想的な世界に一歩足を踏み入れたかのようだった。

衣替えの季節に思いを馳せながら、ふと詩人ジョン・キーツの言葉が頭をよぎる。「秋は、心の衣替えの季節でもある」と。NBAの熱狂と、金沢の静かな秋の風景が交錯する中で、私たちもまた、新たな季節に向けて心の準備を整えるのだろう。

泉鏡花の『歌行燈』に登場するような、静かで美しい秋の一日を思い浮かべながら、今日もまた新たな一歩を踏み出す。鏡花の作品に描かれるような、幻想的でありながらも現実の一部であるかのようなこの季節の移ろいは、私の心にも深い影響を与える。