夫をボコボコに殴ってしまった夜と、再生の話
わたしは、夫のまさしをボコボコに殴ってしまったことがあります。全力だったので、ボコボコと言っていますが、パーだったし、ベチベチくらいの力だったかもしれません。
この話、するとウケるので何度かしてきました。ウケるので単純にうれしいのですが、もやもやもありました。罪悪感というか、かっこ悪さというか、仕方なかったと言い訳したい気分、なんだったんだろうあれは?という感情。
殴った流れを説明するには、私たちが2つ目のシェアハウスを作ろうとセルフリノベーションしていいた物件の一部がシロアリに喰べられていてボロボロになっていたことから話す必要があります。<詳しくは前の記事を>
先輩大工さんたちから対応についてアドバイスを受けますが、なんせ私たちはD I Y初心者です。自分たちではできないな、と。信頼している大工さんは忙しくて数ヶ月待たなければ対応できない。
シロアリ被害を発見してから対応できるまでの約5ヶ月、ずっと大きな敵から逃げているような気分だったまさし。夫婦一緒にリノベーションしていましたが、メインは夫のまさし。家を購入して、一応銀行からも借入をして、半年くらい毎日作業をしてきたこの物件。そこまで、お金も時間も投下してきたのに、先が見えない。もしかしたら対応に数百万円かかるかもしれない。
今回は、そんな暗〜いまさしと過ごすのが辛くなり、殴ってしまったことを振り返ってみたいと思います。ぜんぜんリノベの話ではないけれど、でも先が見えないストレスと向き合うっていうのも含めて、リノベなんじゃないかな、ということで。
『暮らす実験室 SIKA はじまりの物語』
私たちは、大分県竹田市という小さな都市の城下町で2つのシェアハウスを運営しています。<暮らし方の実験を>をテーマにしていて、その名も「暮らす実験室」。これは2022年11月にオープンしたばかりの2つ目のシェアハウス「暮らす実験室 SIKA」が、1年半のセルフリノベーションを経てできるまでのあれこれを物語として綴ったものです。<毎週金曜日更新>
ダークサイドに落ちかける人と一緒にいる憂鬱
当時のまさしの心情。
テンション落ちてた。憂鬱。まさしさんの様子は、ほんとにその通りでした。
話しかけても生返事。なんとなく暗い。いつも不機嫌。ダークサイドに落ちかけているアナキンスカイウォーカーみたいな感じです。アナキンはパドメには優しいので、アナキンの方がずっとまし。
わたしは、そんなまさしさんとと一緒にいるのが苦しくなってきてしまいました。
まさしの問題で、まさしが暗い。それなのに、不機嫌だという理由で、責められているような気になってしまっていました。
「わたしの好きなところ言って欲しい!」を受け入れられないからって暴力!
こっからは、エピソードを書くのも恥ずかしい。
ある夜。寝る前、家族で布団にゴロンとしたタイミング。
「まさしさん、わたしの好きなところを5個言って欲しい!」と、言ったんですね、わたしは。(みんなに話すときは、殴った話はしても、この会話は端折ることが多かった。恥ずかしすぎる)
すると、まさしは
「まゆげがあるとこ」
「鼻があるところ」
と言う。(まさしさんは、付き合い始めた頃からいつもこんな感じ)
「いや、ほんとに、ほんとに、ほんとに言って欲しいの!なんか疲れてしまって。お願いします!お願い!!ほんとに!!」
と両手をこすり合わせながら訴えかけたわたし。
それでもまさしさんは、いつもの冗談モードで
「目があるところ」
「歯が生えてるところ」
と言うので、なんだか涙がちょちょぎれてきて「ほんとに言って欲しいの!」ともう一度。でも言ってくれないまさし。
その瞬間わたしは「もぉおおおおおおおおおおおお〜〜!!!」と言いながら、まさしさんに殴りかかっていました。殴るといっても多分、パーだったと思う。わたしなりの全力でした。
まさしさんははじめ笑っていたけど、途中からまじで「やめろよ!」と言っていた
。
殴ったまでは覚えてるけど、どうやって収束したのか全く覚えてないな〜。娘たちが怯えていたのは覚えてるので、それでやめたのかもしれない。
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その次の日からも、さらに深いダースベーダーまさし期間が続きました。
少し経って「まさしさん、めっちゃ落ちてるよね」というと「それは、しほが殴ってきたことが大きい」と言われて、漠然と落ち込んだのを覚えています。
夫婦の空気が改善したのは、シロアリ対処が終わったタイミングだった気がする。多分、夜のボコボコ事件が起きてから2ヶ月くらいが経っていました。
なぜ殴ってしまったのか?DIYストレスとわたしの性格
この話が「笑い話」になり始めたのは、リノベーションの終わりが見え、暮らす実験室S I K Aにみんなで仮住まいした夏くらいだったと思います。それ以来、何度かこの話をしてきました。DIYストレスを象徴する出来事として。そして、わたしの性格を表すエピソードとして。
すぐに、自分の話にしてしまう。わたしの世界観
この時のまさしさんの状況と、わたしのとながりを→で結ぶと、こんな感じです。
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まさしに課題
→まさしが暗い
→まさしがそっけない
→まさしはしほのことをもう愛していないのではないか?
→しほがつらい
ーーー
最後から2行目で、唐突な飛躍があります。
その前までの流れはわたしも理解しているはずなのに、パートナーが自分に対して冷たいと、もう「わたしのことを愛してないの!?」とあわあわしてしまうのでございます。
人はあらゆることを自分好みのストーリーに読み替えてしまうものだと言うけれど、わたしには、すぐに誰かの何かに対する負の感情を、わたし自身に向けたものだと読み取ってしまう傾向があるのです。
負の感情に小動物のように怯え、サポートするより、ダメージを受けてしまう
もうちょっと深掘りすると。周囲の負の感情に、小動物のように反応し、思考停止してしまうわたし。
パートナーが不機嫌 →怖い・不安
不機嫌の原因を共に探って、サポートするよりも先に、怯えてしまう。
(この傾向に関しては、暮らす実験室ではじめたラジオでも話したなぁ。わたしの脳の共感度が負の感情にやたらと敏感で。その理由は生得的なものに加えて、幼少期の経験も相まっているんじゃないか?ただそれは、自己防衛の発揮の仕方の傾向とも言える?なんて話をラジオでしています。よければ聞いてみてくださいな〜)
わたしのこの傾向には、もちろんいい面として発揮されることもあれば、悪い面となることもあります。でも、どちらにせよ、なんか未熟だな〜と思うわけです。やっぱり、誰かの負の感情にやられず、受け止め、サポートできる人になりたい。
「しほさんも、つらかったんじゃないですか?」
でも、ね。そんな話を、つい先日住人にしたんです。
そしたら「殴ってよかったんじゃないですかね」と言われたんです。住人のはるくんに。
「しほさんは何度も、つらいのはまさしさんなのに、と言っていたけど、しほさんもつらかったんじゃないですか?」と。
思い出しても泣ける。確かに。理由が別のところにあったとしても、暗くそっけない人と一緒にいるのは、つらい。
わたしにシロアリの対応はできない。まさしさんは、問題解決への糸口を提示しなさそうな人(つまりわたし)に、グダグダ相談するタイプじゃない。わたしは、ただそんなまさしといるしかできない。
つらかったんだ!
飛躍があるロジックが、間違っているわけじゃない
「殴ってよかったんじゃないですか。怪我したわけじゃないし。それが2人のコミュニケーションだったのかも」と言われ
「えええええ〜〜〜!!!」と言いながら、す〜っと気持ちが浮かび上がるような感じがありました。
となりでまさしさんも「あ〜そうだったのかもね〜」とか言って笑ってて、それにも救われたなぁ〜。
ーーー
まさしに課題
→まさしが暗い
→まさしがそっけない
→まさしはしほのことをもう愛していないのではないか?
→しほがつらい
ーーー
確かに。この流れって、飛躍があるような気がしていたけれど、もしかしたらおかしくないのかもしれない。飛躍がある論理が、常にまちがっているわけじゃない。事実だったりもする。だって、にんげんだもの!
次回同じような状況に陥ったらマシな対応をしたいけど、あれはわたしのアラートだった
まさしさんにとっては、やるべきだと決めていること、お金と時間を大量に投下していることが行き詰まっていることがストレス。
わたしは?もちろん、それもストレスだけど、パートナーであるまさしさんが、不機嫌なことがストレス。
どっちが上でも下でもなかったのかもしれない。わたしは自分のストレスを「本当はまさしさんの方がつらいのに」と思い、認め慰めることができなかった。そのアラートが殴るとして出てしまったんだなぁ。
まぁ、次回同じような状況に陥ったら、もうちょっとマシな対応をしたい。
が、その対応方法はまだ、全くもって思いつきません(笑)
▼
結果的には、梁が喰われていたから、原因を取り除く必要にせまられて、床下換気の仕組みを作って、通気性の高いいい家になった。大工のぐーちゃんが、梁や柱を補強してくれて、強い家になった。
大変な時に殴っても、それを乗り越え、一緒にいる。さらに強い夫婦になった?
一件落着?ちゃんちゃん。
―――次回は、シェアハウスの個室が変化する様子をお届けします!
毎週金曜日に「暮らす実験室 SIKA はじまりの物語」を更新していきます。
何も考えず壁も屋根もぶっ壊してあたふたしたり。
シロアリ被害に泣いたり。
進まなすぎて行き詰まり?私がまさしをボコボコに殴ったり!
ほんとうにたくさんの人が助けに来てくれたり。
いろんな出来事を、書き残して行こうと思います。
ぜひ、フォローしてチェックしてみてくださいね。